見出し画像

「映画かよ。」の解説かよ。 Ep45 バタフライエフェクト|何かあった未来もの

2023.6.4 update
(写真は全て駒谷揚さんから提供)

 3シーズン目に入っている、駒谷揚制作・監督によるYouTube短編映画シリーズ、「映画かよ。」。Ep45「バタフライエフェクト」が配信されている。

Ep45 バタフライエフェクト

 タイムトラベルもの映画の権威で、自身もタイムトラベルができるようになった樽井(青木伸輔)は、過去に戻った際、映画オタク仲間のミノル(伊藤武雄)にまだ作られていない映画の話をするというミスを犯した。そのささいなミスの影響で、現代の同じ日に必ずミノルが死ぬ未来が訪れることになってしまうため、樽井は未来、現在、過去を行き来して歴史の修正を試みる。現在に戻るたびに、ミノルは元の世界では友人の妻だった京子(中村早希)と結婚していたり、あるときは同じく映画オタク仲間のアミ(森衣里)共々、ドラッグにおぼれていたりと姿が違うが、いずれも目の前で交通事故に遭ったり、銃で撃ち殺されたりと、どうしてもミノルが死ぬ運命は変えられない。樽井は思い立ってミノルと自分が出会わないように画策するが…。

 クールなたたずまいながら心の奥では熱い友情をたぎらせるタイムトラベラー、樽井を演じた青木伸輔の熱演、「何があった!」と全力で突っ込みたくなる現代のミノルとアミを演じた伊藤武雄と森衣里の演技にも注目。

何かあった未来もの 【ここからネタバレ】

 漫画「One Piece」のお便りコーナーではおなじみの、「何かあった未来」シリーズ。登場するキャラクターの40歳、60歳の姿が、物語の延長として予想されるものと一緒に、「何かあった未来」のおちぶれた両極端の姿が描かれる。

 タイムトラベルもの映画の中でも、「バタフライエフェクト」はじめ、「バック・トゥー・ザ・フューチャー」、さらに「オール・ユー・ニード・イズ・キル」「ルーパー」(そういえば「ラン・ローラ・ラン」も?)といった、リフレイン・プレイヤーが不都合な未来を修正するために何度も過去と現在、未来を行き来し、いろいろな世界線を生み出して、混乱を極めるジャンルは結構好きだ。何かありすぎて、全然違う未来になっているギャップがたまらないのが、このジャンルの魅力。勝手に、「何かあった未来もの」と呼ぶことにしよう。

アミとミノル…ほんとに何があった!

 今回のエピソードは、これまで「映画かよ。」を全く観ていなくても「何かあった未来もの」として話が分かりやすい。一方で、ファンとしては、過去に登場したなじみのある、樽井をはじめ、京子、セツコ(菅川裕子)、駒谷揚監督(しんご)といった面々が出てきて、ミノルとアミと同様に、「何かあった未来」を作り出しているのが楽しい。なかでも、周りに流されやすそうなミノルの変ぼうぶりはともかく、生真面目なアミまでやさぐれていて爆笑してしまった。セツコに関しては、「映画かよ。」マルチユニバースの一部である「1分動画」ともリンクしている? ところが細かい!

未来、現在、過去を行き来して運命を変えようとする樽井

 今回、ポイントといっていいのは、樽井が「映画好きをやめずにタイムトラベラーにもならない未来」を選択することだろう。影響を受けた映画との出会いを妨げるのではなく、出会いの時間軸をずらすというやり方が映画オタクの心をくすぐる。

 以前、ある日本映画の監督にインタビューした際、その監督の作品をアメリカで配給する会社が、作品の公開する順番に非常にこだわっているという話を教えてくれた。その配給会社は、アメリカでまだ知られていない同監督の作品を受け入れさせるための公開順を考えに考えて決めていたそうだ。自身がその監督のファンだったので、「代表作のこれじゃなくて、なぜこれを先に?」と疑わしく思っていたから聞いた質問だったのだが、その配給会社の意図を聞いて妙に納得したのを思い出す。

 今の自分はどの映画といつ出会ったがゆえに、こんなにも映画オタクになってしまったのか、と誰しもが考えるだろう。以前、駒谷監督がニューヨークに来た際に、そんな話をした。それぞれ違う作品を挙げたが、インパクトを受けた映画の、さらにその後に観る作品の順番で影響の受け方は変わってくる。それぞれ挙げた映画が、それぞれの人生とキャラを代弁しているように感じた。もしあの時、違う映画を違う映画館で観ていたら、レンタルビデオ屋で隣に置いてあった作品を選んでいたら…、あのときたまたま放送されていた日曜洋画劇場であの作品を観ていなかったから…、などと挙げていけばきりがない。もちろん、映画に夢中にならない世界線だってあっただろう。

 ここでやはりポイントとなるのは、「映画好きをやめずに」過去を変えるという解決法だ。どんな映画を観てきたとしても、違う世界線ができたとしても、結局は映画オタクたちにとっての幸せな結末はある、と語りかけてくるエンディグが非常に駒谷監督らしい。

映画オタクにとっての幸せな結末とは


「映画かよ。」のリファレンス

【「映画かよ。」公式YouTubeサイト

「映画かよ。」ウィキペディア

駒谷監督はこんな人↓

駒谷揚監督インタビュー(Danro)

「映画かよ。」に関するレビュー↓

トリッチさんによる
カナリアクロニクル」でのレビュー

Hasecchoさんによる
「映画かよ。批評家Hasecchoが斬る。」
YouTube「映画かよ。」のコミュニティーページで展開

おりょうSNKさんによる
ポッドキャスト「旦那さんとお前さん」

よろしければ、サポートをお願いいたします。こちらは活動費に当てさせていただきます。