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高麗川のほとりにある古民家

埼玉県日高市栗坪46 高麗川にかかる清流橋のたもとにカフェ・コワーキングスペースCAWAZ baseがある。420坪の川に面した敷地、雑草にまれ朽ち果てそうな古民家が、カフェ・コワーキング・ワーケションスペースとして生まれ変わるまで。

古民家は集まる場所

2020年の春、高麗川のほとりの古民家にCAWAZの創設メンバー3人が集まった。中心になるのは地元出身で海外経験が長いUターンの池ちゃん。この古民家を再生して”集まる場所”を作るという。バックパッカーで南米にコネクションがある彼と彼の弟との出会いが、この物語の始まりでもある。家屋自体は古くいかにも安普請であったが、広い森の中の一軒家は不思議な魅力にあふれていた。実は彼らに出会う前、まだ二拠点居住を始める前にこの家の存在を知っていた。自転車で高麗地区を徘徊していた時に、広い敷地を持つ森の中の一軒家の前に迷い込んだ。トトロの家のようなおとぎ話に出てくるようなその佇まいに惹かれるものがあった。池ちゃん兄弟、この家とも運命的な出会いかもしれない。そして、そのころそこに住んでいた玄くん(川越で人力車マンをやっている)と池ちゃん兄弟がCAWAZというNPOとして活動していたのだった。

 それらの話は別に記すこととして、もう私と一緒にCAWAZにジョインしたの一人のメンバーである建築士のタナカさんが中心になってこの建物をリノベーションすると言う。タナカさんは、日高出身で東京に建築事務所をもっている。東京でコワーキングスペースを経営しているほか、川越の古民家を再生したコワーキングスペースや宿泊所を経営し、ファシリティのノウハウに加え、街づくり活動の実績がある。その街の歴史や人々の記憶を残したリノベーションが得意で、古い焦点の看板を残したり古材を使ったカフェやゲストハウスを作って経営している。田中さん的には川越という古い町に続き農村部の古民家という新たな題材としてこの古民家が写っていただろう。

 私はというと、長らくICTの世界に身を置いていたが、次第に地域のICT利活用というテーマに取り組むことになった、福岡、青森、南島原、伊那ほかの地域でミートアップやアイデアソン、廃校活用や移住促進などの取り組みを見てきた。私の役割は東京のIT企業と地域の橋渡しをすることで、いくつか地域課題解決の事例づくりができた。この経験から、次は地域側の視点で取り組んでみたいと考えるようになった。二拠点居住をはじめた理由も、日本の地域課題に首を突っ込んで見てきたうえでの田舎暮らしである。単純に都会脱出や自然回帰、環境コンシャスな動機だけではない問題意識が根底にあった。これに加え、地域との交流の中で人的つながりもでき、その地の文化や風物を楽しんできた。この数年間の仕事は、出張や仕事を超えた楽しみであり、移動空間の快適性や二重生活がもたらすことへの興味につながった。これが二拠点居住やワーケーションに至る契機になったことは明らかだ。こういう話をしながら高麗で田舎暮らしを楽しんでいる私を見て、池ちゃんは「中島さんはここのペルソナですよ」と言った。この言葉に私がCAWAZに参加するすべてが示されていると思う。

さて、なんのペルソナか?とりあえずこの古民家はカフェとコワーキングスペースにするという。まずは集まる場所だ!ということは以前から共有でいた。もう何年も人が住んでなく、ホコリとカビだらけ、雨漏りはなさそうだけど、蛇のぬけがらがお出迎えに。タナカさんは、まずは剝がせると剥がしてみて。。。と、専門家らしく落ち着いて語っていた。古民家の再生の話はよく聞く。話題の谷根千に住んでいる人間としては身近なものであったが、はてさて、どうなるのだろう。まずは、現地の二人に任せることにした。

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廃屋の前で、春の陽光を浴びながらくつろいで読書を楽しむ娘と大量になった梅を拾う義母。今思うとこの廃屋のポテンシャルを示した写真かもしれない。

文京区と日高市に2拠点居住中。