生成AI組み込みアプリ開発をする上での知見と反省点
こんにちは。ディップ株式会社の『バイトル』に生成AIの組み込みなどを行っている田中と申します。
AI活用の波が弊社にも来ていて、精度高く成功させる方法を模索しています。「会社の予算で作ってワクワク!」というのは流石に問題あるかーということで、今回は個人的に生成AIを用いたアプリを制作しました。
はじめに
生成AIを使った開発が誰にでも可能になっています。しかし、AIが万能すぎて自社開発サービスとしての切り出し方が難しいですね。
本記事では、生成AIを活用した自作アプリ「ビジネス翻訳さん」の開発を通して得られた中身がAIのサービスを作る際の、知見や反省点を共有します。
今回作成したアプリについて
アプリの目的
ビジネスシーンでの適切な表現を生成AIを活用して提案するアプリ。
送る相手・文章のカジュアルさ・文章の使い所・伝えたいメッセージを入力すると、状況に合わせた表現を生成する。
ユーザーストーリー
新入社員の山田さんの場合
役割:新入社員として
目的:上司への報告メールを送る際に、「ビジネス翻訳さん」を使って適切な敬語表現を知りたい
価値:上司とのコミュニケーションがスムーズになり、仕事の効率が上がる
経験豊富な佐藤さんの場合
役割:経験豊富なビジネスパーソンとして
目的:新しい取引先とのメールで、「ビジネス翻訳さん」を使って適切なトーンを確認したい
価値:新しい取引先との良好な関係構築に役立つ
技術スタック
Google Apps Script (GAS)
サーバーレスかつ低コストで開発できました
Googleスプレッドシート
ログを残したりできますが活用してないです。
今回はプライバシー的に見ない方がいいかなと思い、利用回数だけ出力。
Gemini API
比較的高品質な生成AIレスポンスを無料で取得できます
Googleサイト
埋め込み先として活用。GASアプリとしてデプロイすると出てくる注意書きみたいなやつを消せる小技として使いました。
GASの実行者権限エラー時にはプライベートブラウザで開くよう誘導。
ユーザーインターフェースについて
シンプルで直感的なHTMLフォームを介してユーザー入力を受け付ける(を目指した)
「送る相手」「カジュアルさ」「テキストの雰囲気」を選択できるようにし、選択内容をプロンプトに変換することでユーザーの手間を抑えた
「伝えたいメッセージ」を入力するフィールドを作成し、短文や箇条書きでAIにアウトプットの要求を伝えられるようにした。
ボタンカラーが目立つよう配色し、「このボタンを押したい」と思ってもらえるよう意識した。
ボタンクリック後は、AIが動いていることを意識してもらえるような待機モーションを用意した。
生成されたAIレスポンスをフォーム上に表示し、そのまま使う場合にはクリップボードにコピーするのが楽になるよう意識した。
学びと反省点
生成AIをサービス化する際の根本的な課題
生成AIを使った開発が誰にでも可能になっている一方で、AIが万能すぎるがゆえに、自社開発サービスとしての切り出し方が難しくなっていると感じます。
生成AIはなんでもできるので、ただ単に活用したサービスは何かに特化して1つのことしか出来なくなっており、チャットタイプの生成AIの劣化版になりがちです。
チャットタイプのAIが最も広く普及しているため、常に競合となります。プロンプトでユーザーが自分でAIを使うよりも便利でなければ意味がないんですね…。
ユーザーの手間を減らすことが重要
生成AIを活用したサービスにおいて、ユーザーがチャットに繰り返しプロンプトを入力する手間を減らすことが非常に重要だと感じました。
今回のアプリでは、「送る相手」「カジュアルさ」「テキストの雰囲気」といった情報を選択式で入力できるようにすることで、ユーザーの手間を抑えることができました。
チャットで毎度「こういうテイストの回答が欲しいんだよね」という調整をテキスト入力して行うのはとっても面倒なので、ここをUIで改善できるようにしたところ、一気に「面白いもの作ったじゃん」と評価してもらえるレベルに近づいたと感じます。
プロンプト(アウトプットの材料)を十分に検証しておこう
生成AIに必要な情報やプロンプトを適切に準備することが、サービスの強みになります。
今回のアプリでは、ユーザーの入力内容を予めアウトプットの検証をしておいたプロンプトに変換することで、状況に合わせた表現を生成することができました。
もう一歩踏み込んだ価値提供を行うなら、アウトプットの材料として事前に大きなデータセットを用意しておき、適切なタイミングでプロンプトに組み込むシステム(いわゆるRAG)を検討してみると良さそうです。
やりたかったけど、GAS環境でベクトル検索の実装はちょっと厳しそうだった…😢
生成AIを使ったサービスは、最適なユースケースの発見から生まれる
「とりあえず何かAIを使ったサービスを作ろう」と思い立ってサービス内容を検討したとき、複雑なアウトプットに対応しているほど手間を減らせるが、複雑だと最適化が効いている分、マーケットが小さいことが多いというジレンマを抱えました。
提供価値を時間で測ると価値がわかりやすいので、このような書き方をしてみましょう。
「通常のチャットAIを使った場合にかかる時間 × 必要としている人数」
を計算したとき、価値が大きいと思われるユースケースを発見することが、生成AIサービスの肝になる。
薄利多売か厚利少売か、ビジネスモデルは一旦置いておいて、その結果どれだけの価値を提供できるかは上記で計算できます。
今回は、価値提供が薄くてもいいから多くの人に見てもらえる方が目的にそぐうと考え、薄利多売的なアイデアを形にしてみました。
まとめ
本業に活かしやすい知見がたくさん手に入り、個人的にアプリを作ってみた甲斐があったと思います。
これまでの20年間くらい実社会の行動をインターネットでできるようにする流れがありました。これからの何年間は、個々のタスクをAIで処理できるようにするという流れが続くはずです。
AI活用は1つのプロダクト開発ジャンルとして定着してくると思って、引き続き色々なサービスをリリースしていきたいです🫡
目指せ100億円規模のサービス。
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