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相続の話

こんにちは、屋台みたいな弱小会社を経営しているたなか不動産です。今日は相続に関する話を書かせて頂きたいと思います。

世間でよく聞く、相続後のもめごと。不動産業界にいると、頻繁に遭遇します。特に独立組のメイン顧客層は高齢者なので、その為ですね。相続した不動産を売りたいが、兄弟姉妹間で話がまとまらずに売れない。駅前の大手不動産屋に相談するも、無理ですと断られました…というようなご相談。

不動産は、相続人全員の意思を統一して初めて売り物に出来ます。ご相談案件は相続の登記がいつ終わるかわからない状態。今月発生した案件を、遅くとも来月の数字にしていくような戦いをしている、大手の営業マンはハナから相手にしないでしょうね。

たなか不動産は、物件のこと、相続人のことをとりあえず聞きます。ある程度、全体像が理解できた段階で、もめ方を聞きます。多くの場合、相続人全員が三国志や戦国時代のようにもめているのではなく、兄弟みんなはまとまっているのに、残りの一人がへそを曲げているという状態がほとんどです。

この前取引した物件もこのパターンでした。窓口の相続人の方と一緒に話をしに行っても、全然ダメです。不動産のことで…と下手に出ても、「勝手にしたらええがな!!」と終始、怒鳴り声での対応。話にならないとは正にこのこと。帰り道で「本当にごめんなさい…」と謝られました。

送り道を運転しながら、あのお兄さんは長くないな…と感じていました。玄関先でしたが、家の中はゴミ屋敷のような状態になっているのは分かります。お兄さんはご兄弟だけでなく、子供にも、ご近所にも、あの対応をしてる可能性が高く、めんどくさい人として、社会から孤立している感じでした。

もともと強気な人が高齢になって弱気になることはあっても、偏屈な性格の人が、素直になることはほとんどなく、それどころかパワーアップするケースがほとんどです。若い頃から頑固だった人が、超頑固なおじいちゃんになるパターンですね。

20代で孤立するのと、70代以上で孤立するのは意味合いが全く違います。家の中でひとり、スーパーで買ってきた賞味期限がとっくに切れたお惣菜を、冷蔵庫から出し入れして食べているかも知れないし、どす黒い顔色になっても、だれも病院に行けとは言ってくれません。

ゴミ屋敷に住んでいるのも特徴です。使うものと使わないものを分けて、使わないものは捨て、残ったものをかたずける。このシンプルな作業も人が関わっていないと出来ません。不衛生な環境で音量を大きくしたテレビだけがお兄さんの相手です。

その環境で生きられる期間は限られています。死後何か月も経過して、特殊清掃がいる程の孤独死現場は、ほどんどがこのパターンです。

高齢者になれば施設に入る。これも人が関わっていなければ出来ない行為です。阪神間で良くある、その時期が来たら、施設を子供達と吟味し、入居を済ませたら半年から1年後に住んでいた家を売る。これってめちゃくちゃ恵まれた環境の人しか出来ない流れです。

実際、その数か月後に連絡がありました。お兄さんの訃報です。司法書士の先生とお伺いし、親御さんとお兄さんの相続手続きを済ませたのち、無事に売却と相成りました。初回のご相談から起算して、実に1年近くかかっての仕事です。月末との勝負がない中小不動産の強みはコレですね。

歳がいってからのもめ事は本当に気を病みます。兄弟げんかを止めてくれる親はすでにいません。私たちは、物件が売れない状態でも、話を聞くくらいは出来ます。めちゃくちゃ早口で3分の1は何言ってるかわからないけど、腕のいい弁護士先生をご紹介することもできます。

たなか不動産の近所にマンダイというスーパーがあるのですが、夕方になると110円のおにぎりを50円~60円くらいで投げ売りします。先日、そのおにぎりを20個くらい買っているおばあちゃんがいました。亡くなったお兄さんとその姿が被って胸が詰まり、こんな話を書きました。

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