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成果を求めて後戻りできない選択をしてしまう人へ

「成果を得たいなら自分を追い込むべき」というのは、昔からそこかしこでよく聞く言葉だ。
確かに人間は意志が弱いものだし、この考え方そのものは意志をコントロールするため理にかなっていると思う。

実際に勉強や作業をするとき、スマホなど余計なものを手元から排除してそれ以外のことができない空間に身を置く方が効率が上がったりするのは、この一例だろう。(僕が実践しているとは言っていない)

しかしながらこの言葉が使われるとき「後戻りできない場所まで自分を追い込め」という意味合いで誇張されることが多いように感じられる。

田舎住まいだとよくあるのが、新卒で就職した子に高い新車を買わせてローンの支払いのために仕事を辞められなくするというものだ。
都市圏の文化ではあまり考えられないかもしれないが、こんな考えが正義だと信じて車を買ってしまう若者が実は一定数いる。僕は車のいらないところで就職していたので実体験ではないが、マジで先輩や親族から薦められたという人を何人も見てきた。田舎ヤバい。

昨年就職した隣家の子もよく遊びに来る車好きジジイの口車(うまい)にのせられてピカピカのハリアーを買わされたらしい。値段を訊いてみたら280万だそうだ。グェー。

自分を追い込む若者の例

自分を追い込んでしまった若者として、昨年話題になったキンコン西野氏のオンラインサロンメンバーが好例なので紹介したい。

先にリスクを背負ったさいとうしほさん

当時は賛否両論ありましたね。

とはいえ彼女は親のお金があって学費もしっかり払えているのであろうから、これはまだ「後戻りできる」範囲なのだと思う。こんなに金をかける必要はまったくないと思うが、いろんな人と一緒に活動して得た経験や人脈は彼女の糧になっていることだろう。数年後の彼女がこのときの選択を笑い話にできていることを祈りたい。

問題は次。

仕事辞めた上に失業保険使って24万でチケット買った本岡宏一くん

ちなみに彼、この記事の少し前の時点で特に後ろ盾もなく仕事を辞めている。
彼について間違いなく言えるのは「後戻りできない」ということだ。

仕事はあまり上手くいっていなかったのだとしても、それなりの会社でそれなりの給料をもらっていた環境を捨て、少額とはいえ借金まで背負ってしまった。離職期間に勉強して新しい就職先を探すはずが、結局日銭に困って土方をやっているらしい。
考えうる限りの「後戻りできない」を詰め込んだような状況である。

では彼は今後、目標としている成果を達成できるのかというと、その可能性は限りなく低い。

その理由を説明する前に、「マズローの欲求階層」という概念を初めて知ったのでよくわかる記事を紹介しておく。

実は今回note記事を書くに至ったのもこれを読んだことがきっかけだ。マズローの欲求階層に当てはめた簡潔な自己分析がされており、自分が置かれている状況を見直したい人は是非読んでみてほしい。

マズローの欲求階層

マズローの欲求5段階説とは、人間の欲求を5段階の階層で理論化したもので、自己実現理論とも呼ばれます。
アメリカの心理学者である アブラハム・マズローが提唱した理論です。マズローは、「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生きものである。」という仮定の下、「人間の欲求は、5段階のピラミッドのように構成されており、低い階層の欲求が満たされると、より高い階層の欲求を欲するようになる。」と説明しました。

引用元:
https://www.kaizen-base.com/contents/mgal-42356/

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図解が実に分かりやすい。人間の欲求は下位のものを満たすほどに上位のものを求めるという段階性を示した概念だ。
さて、マズローの欲求階層に当てはめると前述の二人はどの階層になるだろうか。

しほちゃん(なれなれしい)の場合

親に養われる大学生として「安全」が確保されていて、西野氏のオンラインサロン内でも一緒に活動する仲間がいるため「所属」も満たしている。

その上でサロンの仲間に認められたい「承認」あるいはその先の「自己実現」を満たそうとしているのがこの時点のしほちゃんの状況で、下位の欲求を満たしたうえで上位の欲求を求めているため、適正な段階を踏んでいることがわかる。

本岡くんの場合

「承認」と「自己実現」のために退職したはずの本岡くん。現状はというと。

◆「承認」を得たいがためサロンで24万円分のチケットを購入したものの
◆サロン内でも活動の中核を担うことはできず「所属」が満たされているかも定かではない
◆日銭に困って生活も余裕がなく「安全」すら脅かされている

欲求階層に則り下位の欲求を満たしていることが上位を求める条件なのだとすれば、「安全」すら危ういのに「承認」や「自己実現」を求めようとしている実にちぐはぐな状態である。

この状態の一番の問題点は、目的の焦点を定められなくなるということだ。

欲求が定まらない人の行動パターン

例えば最初はスキルを身に付けるため勉強を始めたりする。ところが勉強を始めたからすぐに資格を取れるわけでもないし、仮に勉強を続けても未経験で好条件の業種に就ける可能性は限りなく低い。

次に手っ取り早く他者との繋がりを求めてSNSや各種媒体での発信を試みる。しかしそれだってすぐに人が見染めてくれるわけではなく、どれだけ頑張っても一握りの選ばれし者以外はお金を生み出せないことに気が付く。

当然手元にお金が入ってくるかどうかは活動の実感として重要だ。そうなると今度はアフィリエイトやせどりなんかを始めちゃったりする。いわゆる銭ゲバ活動というやつ。

ところでここまで挙げたどんな活動も、多くの人が一つに絞ったとしても形になるまで大変な労力と時間がかかるものだ。

しかし彼のような人はおそらくすべてに手を出して、すべて中途半端のまま挫折するだろう。なぜなら「満たしたい欲求」の階層に矛盾が生じているために、常に目移りしてしまうからだ。

こういった目的が定まらず中途半端を続けてしまう状態を経験している人は多いと思うが、欲求が定まらないという原因が根底にあると考えれば腑に落ちるのではないだろうか。

もちろんマズローの欲求階層を踏まえないとしても、何かやりたいことを探したり始めるために仕事をやめるというのはあまりにも非合理的だ。

仕事をしていてもよほどのブラック企業でなければ毎晩2、3時間は何らかの活動に充てることができるのだから、その時間で活動を続けて軌道に乗ってから仕事を辞めても遅くはない。

何より仕事を続けながらでは活動できないような人間が、仕事を辞めて自由になったからといってそれに打ち込めるとは到底言い難い。それならば自分はそういう人間だと割り切って会社人として生きるのも一つの尊重すべき選択だ。

自分を追い込もうとしている人へ

確かに僕たちは、追い込まれることでそれまでなかった力を発揮できることがある。それは人間の一つの可能性だ。

しかしこれから何かを成すために自分を追い込もうとしている人は、そこが「後戻りできる」場所なのか、仮に「後戻りできない」場所ですべてを失っても後悔せずにいられるのかを考えてみてほしい。その自己実現は安全を脅かされてまで目指したいものなのか。

願わくば賢明な選択をしてもらえたらと思う。



せめて余計な借金だけはしないでくれよな、マジで。

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