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夜桜のムコウ

早いもので社会人の22シーズン目がもうすぐ終わる。
今年の桜はいつもより早いね。

23年前に、僕が新卒で入社したのはゲーム制作会社。
代表作を挙げると誰でも知っているようなゲームを作っていた企業だったけど、いろいろあって翌年の春に会社は和議申請をした。

「和議」とはあまり聞き馴染みのない言葉だけど、会社の債務を整理していくもので、本来は少しづつでも債務を返済していくもの。ただ、返済しきらず破綻してしまう企業も少なくない。

実際にこの会社も数年後に無くなってしまった。

和議の直後、社内は大混乱。
まだ1年目のぺーぺーにとってはヤバい状況になったことはわかるものの、なにができるわけでもなく、ただ状況に流されるだけだった。

そんな時、所属していた部署で誰となく花見をしよう、という話になり、平日の業務後に会社の近所の河原に繰り出した。

このときチームの中でいちばんの若手だった僕にできることは、せいぜい花見の買い出しをするくらい。

たぶんこのメンバーで花見をするのはもう最後になるだろうなって、みんな口には出さないけどそう思ってた。
先の見えない不安でいっぱいで、でもみんな表向きは楽しんでて。
なんだか切ないような悲しいような。

自分はチームで一番のぺーぺーで。
自分に力があったらなぁ。何もできなくて悔しいなぁ。なんて考えながら飲んでた。今でも、夜桜を見ると昨日のように思い出す。

あの頃の自分に声をかけるとしたらなんて言うかな。
来週から、社会人23年目。

今日はここまで。
それでは、またあした。





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