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「剣道の道場の特殊な先輩後輩関係」

私が小学生~中学生の時に通っていた剣道の道場はちょっと特殊で
相撲と同じで「スポーツではない感」が強かった

どちらが正しいという訳ではなく、同じ剣道でもスポーツ的に教えるところから「道」に重きを置くところまでさまざまで、ウチの場合は勝敗に拘ったり記録を追うようなスポーツ的な発想は全く無く、考え方というか「心」や精神をどのように置くかに重きがあった、なぜなら剣道は護身術でもなく競技でもなくシンプルに殺人術で非常に危険だからw(13歳で初段を取った少年の一太刀の殺傷能力は弾丸一発に匹敵すると言われる、なのに他に使い道がないので乱用しない為にも)

まぁそんなこんなで、いわゆる「昭和の先輩後輩」の考え方が当時の世間様と逆で

一般的には球拾いとかボール磨きは1年生とか新人がしますが

うちの道場では逆で、掃除は先生か先輩からやります。

初心者は自分の用意もおぼつかない、道場の使い勝手も良く分かっていない
掃除をする暇が合ったら練習時間を長くしてあげた方がいい
何より初心者より長く道場という「場」にお世話になってるのは先生や先輩なのだから、そういった意味でも合点がいきます。

我々後輩が稽古終わりでヘトヘトで手が遅い、逆に素早く片付けられる先輩は
先にモップ掛けを始める、その真摯なモップ掛けをする姿は輝いて見えた

そして我々後輩たちはこう思う「ああいう先輩になりたいな~」と。

これが「綺麗にしないと気が済まない」とか「人が嫌がる掃除を率先してやってる俺、カッケーだろ?」とかあるとダメなんですよね、好きでも嫌でもなんでもなく「使ったんだから掃除するのは普通じゃね?」と素で普通と思っていなければならないのですけどね。

で、これにはもう一つ面白い効果があって

先生とか先輩に気に入られようと「掃除しときました~」とあざとく媚びるヤツが居なくなる

だって普通だから(掃除してるヤツが偉いとか無いから)

そらそうです、だって掃除はお世話になった道場という「場」に対して感謝の意を込めてするもので、先生とか先輩に気に入られようとか、褒められようとか、よく評価されたいとか「自分の利」の為に行うのは悪用でしかない。それにも気が付いていない、つまりカッコ悪い、もはや論外。

更にオマケで「あいつは先生とか先輩に気に入られようと良いカッコして掃除してるだけっすよ~」と入れ知恵で足を引っ張るヤカラも居なくなる。(いわゆる自分がズルイのでそれが故に逆に他人もズルをしているんじゃないかと疑いの念を強く持つタイプ)

という考えが普通だったのですが、それはウチの道場の中だけの話・・・

中学に上がって道場ではなく学校の部活の剣道の部に方へはいると

「掃除は下っ端がやるもんだ、俺らがやることじゃない」
と先輩方が踏ん反り返っていた

まぁしょうがないので入部初日から2年生3年生を相手に大激突w

結果、昭和の先輩後輩の悪しき習わしは全面廃止

なんか生意気で先輩方には申し訳ないとは思うのですが
なんせウチの道場の教えは「どんなに強い相手でも一歩も引くな」なもんで、テヘ(やるなら、の話)

どんな話をしたか柔らかくいうと「普通の体育会系の様に「掃除は下っ端がやるもんだ、俺らがやることじゃない」などなどの昔ながらの先輩後輩論をいうのであれば、一応「はいはい」と言う事は聞きますが、内心では「学校の剣道部の先輩はクソだな」「スポーツと剣の道の違いが分からないヤツだ」と思い続けます。

しかし、一緒に剣道をしようという者同士で「持ちつ持たれつで、真摯に剣道と向き合える場にしていこう」という風に導いて「剣道部らしい先輩後輩関係」を作って行こうというのであれば(上下なくなぁなぁにしましょうという意味ではなく)我々後輩は「ウチの先輩は他の部と違って良い先輩だ~」と思うようになります」

どっちがいいっすか?
(というような事を柔らか~く優し~く言った気がする)

どっちが正しいか?とか間違いを正すとかではなく
どっちがいいですか?とあくまでも優しく提案

要は「先輩のいう事は「オッス」で従うのが当たり前!普通!」であるなら
普通の事を普通の人と同じように言う先輩を尊敬なんかしない、だって普通だから。

別に上の人に偉そうに言われるのが嫌とかじゃないんです、それはそういうもんだから気にならないのですが「上の人にはヘコヘコして、下の人には偉そうにして生きていく人の道」それカッコいいですか?っていう話。

別に同じ扱いにしろという事ではなく、どちらにも気を遣えという訳でもなく、上の人にも下の人にも分け隔てなく敬意と親しみを持てるのであれば「俺は凄いんだぞー」とマウントを取らなくても後輩は勝手に先輩扱いしてくれる、という理屈。

結果的には年功序列の上や実力の弱肉強食の上が偉そうにするという概念を緩和する事で、強い弱いに固執せず弱くても弱さを隠さず真摯に全体の事を考えられる先輩が尊敬されるようになった

オマケで「後輩には偉そうなのに試合では弱い」というカッコ悪い思いをしなくて良くなった。

逆にあんまり練習に来ない私のようなオサボリ先輩は後輩に好かれないんですけどねw

それはそれでいいんです、その判断が適正だと思う、私の立場を有利にする為に言った訳でもなければ後輩に尊敬されたいとも思っていなく、ただ普通に「道」を示しただけだから。

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