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福助② 〜出逢いました〜

アトリエ、と言っても元々は大学の学生寮だった建物で、トランクルームとして使いませんか?隠れ家オフィスとして使いませんか?と言う物件だった。
学生寮の構造だから長い廊下があり、大きい玄関、下駄箱がある。
玄関を出て裏に回る。裏は雑草と粗大ゴミに覆われ夜はちょっと足元が危険。奥の方から「ミア、ミア」と聞こえる。
鳴き声が止んだ。きっとこの付近にいる。スマホのライトを照らす。色んなガラクタが足元にある。隠れる場所はいっぱいある。
「ミア」後ろから聞こえた。振り返ると鳴き止む。
どうしようかなぁ。見つかるかなぁ。
ゴミを片付けながら居そうなところを覗く。スマホのバッテリーの少なくなってきた。夜中だし泥棒と間違えられそう。
こちらが動くと鳴き止んで方向を見失う。鳴きやんだらまた鳴くまで待った。それを繰り返したどり着いたのが1番奥にあったカラーボックスだった。
このカラーボックスにいるはずなんだけど、、、居ない。
色んなゴミが突っ込まれていたので慎重に1つずつ取り出す。チリトリ、空き缶、雑誌、、、居ない。ゴミを元の場所に戻す。
「もう諦めようか」とつい口にした時、「ミア」と鳴いた。
確かにカラーボックスから鳴き声が聞こえた。でもどこにいるんだ。もう一度ゴミを確認しよう。どこだ?
「まさかなぁ」
チリトリだけが残った。このチリトリは蓋付きだ。チリトリを持ち上げる。
ガサ…
中から何か音がした。
ガサガサ…
「まさかねー」としばらくチリトリを持ち上げたままにしていたら
「ミア」
「この中にいる」もう確定。チリトリごとアトリエまで持ち帰った。

アトリエの戻り、問題のチリトリを椅子の上においた。
蓋を開けたが真っ黒で奥まで見えない。ガサガサと音がする。手を突っ込んでみようかなぁ。
「フガー、ガサガサ」
突っ込んだ僕の手から逃げようと必死だ。僕も文字通り手探りだ。お、このむにゅとした感じ。捕まえた。どんな顔だ?

やっと逢えた。
この時、4年後(2020年)の今も僕の傍にいることを想像できただろうか。

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