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福助。①

4年前ー
陶芸活動の拠点(拠点と言うほど活動していないけど)アトリエにて、「ミア、ミア」と可愛い鳴き声がした。アトリエ周辺は野良猫、地域猫が多く生息している。この近所の住人は猫がいることに抵抗がなくむしろ受け入れている。でも決して餌を与えるようなことはせず、猫は猫、人間は人間とけじめをつけているようで、猫も人間とは一定の距離をとっており(かなり離れた距離)、ここで生まれた子猫もよちよち歩きの頃から人間に出会うと側溝に素早く隠れる。
以前隣の部屋で行商をしている若者が餌をあげてたらしいけど、ここの猫、餌だけ食って懐かないと嘆いていた。いやいや野良ってそんなものよって言うと、最初は1匹だったのに今じゃ10匹くらいどこからともなく現れて、もう収集がつかない。餌をくれる人ってロックオンされたみたいで…。
アトリエ周辺の猫たちはハングリーだ。毎年子猫を見かけ、いつの間にかいなくなる。近所の住人が餌をあげるところを見たことないから多分自力で生きているんだろう。そこへ配給。しかも美味い飯ならもう、、修羅場だろう。
ここの猫たちは全く近寄ってこないので気楽だった。生き死にも猫社会の掟の中にあり、弱いものは可哀想だけど淘汰される。ここはそう言うところだと割り切っていた。同情で餌を与えようなんて、猫社会に失礼だと思うくらいはっきりした境界線があった。
アトリエを構えて10年。その間、個体は移り変わっている。でも、しっかり血統は受け継がれており、「お前のひいばあちゃん、知ってるよ」って言いたくなるような既視感の猫ばかり。【さよなら銀河鉄道999】でキャプテンハーロックの言った言葉を思い出す。「親から子へ、そして孫へ受け継がれる命。それが永遠の命だと俺は信じる」3年前によく見かけた黒猫はいない。でも目の前に黒猫がいる。子猫だ。孫にあたるのか?それとも甥っ子?遠くに母親らしき黒猫がいて、お前は娘にあたるのか?と勝手に呟く。
作陶中、深夜だったと思う。相変わらず「ミア、ミア」と鳴いてる。夕方も鳴いていた。普通なら母猫が来てすぐ鳴き止むんだけど今回は止まない。最初は可愛いなって聞いていたけど、さすがにここまで泣き続けると悲壮感に変わった。「ママどこ?」って繰り返している。母猫が戻ってこないのか?
ヤバイ大丈夫か?どうする?探す?
回してた轆轤を止めて外へ。まだ鳴いている。
もし見つけてもどうすりゃいい?
続く。

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