インサイトを見つける方法《非言語編》

覚醒 awake/アウェイク

インサイトを見つける方法《ランゲージ編》では、言語によるインサイトの見つけ方を3つ述べた。

続く今回は、非言語によるインサイトの見つけ方を3つ披瀝しよう。これで合計6つ。

人は「ああっ!それだっ!」と目覚めたときに動く。覚醒[awake/アウェイク]である。

よくよく考えてみて頂きたい。どんなにニーズ(必要性)があっても、ウォンツ要求性)があっても、自覚しなければ、必要も要求も無きに等しい。

自覚して、はじめて、ニーズになり得るし、ウォンツになり得る。購入動機が顕在化する。


たとえば、お腹が空いたとする。しかし、空腹を覚えなければ食事を欲しないし、欲しないどころか満腹ならば、たとえ満漢全席であっても食指は動かないのが平均体重の人であろう。

このように、生存欲求に関わる商品や、用途が常識化している商品は、ニーズかウォンツを自覚すれば購入へ至る。

しかし、生存に関わらない商品や、用途が知られていない商品は、自覚しても購入しない。必要に迫られなければ買わないし、商品がもたらす便益が分からなければ買いようがない。

となると、「ほら、これが必要でしょう?」「これが欲しいと思いませんか?」と自覚するように仕向けなければならない。

そこで人は「ああっ!それだっ!」と目覚める。目覚めたときに動く。それが覚醒[awake/アウェイク]である。

むろん、「ああっ!それだっ!」と目覚めさせる程でなければインサイトとはいえない。どこかで見聞きしたような使い古しでは覚醒しない。新しさが要る。インサイトとアウェイクは一心同体といっていい。

余談

余談だが、日本マクドナルドの創業者である故・藤田田さんは「商売するなら口と女を狙え」と公言していた通り、彼は宝石商を営んでいたし、日本マクドナルドを立ち上げた。その成功はご存知の通り。

藤田さんの主張はシンプルで「人は食わねば生きられない。飲食商売は絶対になくならない」というものであった。

確かに、70年代の成長期では、その通りであったろう。しかし、成熟しきった今の時代に即しているかどうか疑念が残る。

というのも、生存欲求に関わる商品であれば安泰というわけではない。食事が典型的な例である。

ひとくちに食事といっても、いろいろなシーンがある。必要性といっていい。

その昔「焼肉店へ行く男女は恋人同士ではない」と言われたように、初めてのデートで立ちそば店を予約する酔狂人は皆無であろう、食事には、食事に適したシーンがある。


成熟時代における食事というウォンツは、食事シーンというニーズと表裏一体。

仮に、一人で自宅で食事するとき「何でもいい」となるのも、マキシムである必要はないという消去法の必要性ともいえよう。

続・余談

たとえば「食事の時間が無い」となると、待ち時間の少ないカウンター形式の牛丼、立ちそば、カレーに集中する。昼どきの東京となれば、その混雑たるやすさまじい。

しかも、概して安い。時間の制限に伴うニーズおよび財布の傷まないウォンツによるもので、「是が非でも今日は立ちそば」というフリークは少ない。

少ない、と断言できる。なぜなら、700万円かけた調査報告書を見せてもらったことがあるからだ。むろん「どこの会社の何という商品」とは明かせないが、そのようにデータは物語っていた。

例外は、ある。コンマ数%だが、毎日のようにそれを食べるフリークもいた。信じがたいが、一ヶ月 30日間 毎日 食べる。

「それ」が好きで食べるフリークもいたし、「その会社のそれ」だけを食べる大ファンもいた。


これは、食べながら移動できるハンバーガーも、座ってスグに食べられる回転寿司も同じことである。

例外を除き、スタンド式の牛丼は牛丼を売っているのではなく、時間と、一人で食べられる空間を売っていることになる。時空的付加価値である。これに、安いという経済的付加価値が加わっている。どれ一つ欠けても成り立たない。

逆説するなら、スタンド店で食事する人は、早く提供され、かつ、早く食べられて、そこそこの値段の食事ならば、何でも構わないということになる。

つまり、繰り返しになるが、成熟社会の飲食店は食事を売っているのではないことがわかる。
それを履き違えると、一千万円を投資して開店したラーメン店が三ヶ月で倒産することになる(実話)

「商売するなら口を狙え」という考えは、成熟社会においては、少々シンプル過ぎるといえよう。
誰が、どんな時に、どんな目的で食べるのか、5W1Hに至るまで突き詰めてから開業する必要がある。それにはインサイトが必須。

コラージュ・リサーチ/Collage

話をテーマに戻そう。

コラージュはもともと、絵画を切り貼りして、一枚の絵画を作り出す絵画技法で、ピカソが作り出したといわれているが、意外性の妙を生み出す組み合わせ法としては、マックス・エルンストが創案した。それはどうでもいい。

リサーチにおけるコラージュは、ある一つのテーマのもとに、雑誌から写真を切り抜いてもらい、それを一枚のボードに貼り付け、何を物語っているか探る方法である。

たとえば、ステップワゴンなどのファミリーカーを売るとしよう。商品を売る考え方でプロモーションするとすれば、ファミリーカーの写真をドーンと載せ、スライドドアなどの特徴をドーンと載せ、価格をドーンと載せる。前号で指摘した「ドーン!ドーン!ドーン!」である(笑)

こうなると、スペックとスタイルと価格の勝負になる。買う側にすれば、どこのメーカーのファミリーカーだろうと、ハイスペックで価格が安ければ一向に構わない。

そこで、調査対象者に複数の雑誌を与え、家族をテーマした時イメージが湧くありとあらゆる写真やイラストを切り抜いてもらう。

ある人は家族旅行を切り抜くかもしれない。ある人はポートレートを切り抜くかもしれない。ある人はディズニーリゾートを切り抜くかもしれない。


それらのビジュアルによって家族の象徴を探ると、

「家族と出かけた楽しい思い出が、いつか、宝物になる」

「今のうちに子供達と思い出を作っておきたい」

「宝物を見つけに家族で出かけよう」

「ファミリーカーで」

と思い出をファミリーカーの価値として付加すると「家族の思い出=モノより思い出」となる。

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