メーカーの常識を打ち破れ
BtoBとBtoC
BtoBやBtoCの取引形態は、ご存知でしょう。
BtoB(Business to Business)は、企業間取引のこと。
BtoC(Business to Consumer/Customer)は、企業対個人取引のこと。
両者の違いは大きく5つ。
1)決済
BtoBは、ツケ
BtoCは、ニコニコ現金取引
2)決定権者
BtoBは、組織(担当者から経営者まで複数人)
BtoCは、個人(最大で家族)
3)取引額
BtoBのほうが、大きい(万単位~億単位)
BtoCのほうが、小さい(十円単位~数千万単位)
4)リピート率
BtoBのほうが、高い(原材料等のニーズ商品だから)
BtoCのほうが、低い(衣服や腕時計等のウォンツ商品だから)
5)顧客母数
BtoBのほうが、少ない(国内3,850,000社※)
BtoCのほうが、多い(国内100,000,000人)
※385万社は中小企業庁の発表。統計局の発表は151万社。帝国データバンクの会社年鑑には14万社が掲載。
わかりやすくいえば、不特定多数向けで日銭が入ってくる現金商売したければBtoCが向いていますよ~、そうでなければBtoBが向いていますよ~ということです。
BtoBtoC
BtoCといっても、純然たるBtoCは、個人事業の小規模に限られます。
日本には、昔から卸や問屋がありますから、ほとんどのBtoCは、BtoBtoBtoC※といっていいでしょう。
※ [B1]加工メーカー →to→ [B2]問屋 →to→ [B3]小売 →to→ [C]個人客
製販在 [B1~B3]が一体化している生産形態ならば、BtoCのように思われがちですが、
街角の豆腐屋さんや、和菓子屋さんにしても、原材料の大豆や、砂糖の仕入れは不可避ですから、Bto【B】toC。
パソコンをBTO※でエンドユーザーへ直販しているDELLも、世界各国から部品を調達していますから、厳密には、Bto【B】toC。
このように、toCよりも、toBのほうが多く、当然、市場規模も大きいわけです。
BTO ※ Build to Order(ビルド トゥ オーダー)
在庫のリスクを減らすために、製品を組み立てず、部品のまま保管しておいて、注文に応じて組み立て、直販する生産形態。
BTOを身近な例に置き換えると…
喫茶店がアイスコーヒーを作り置きしておけば、次から次へと売れる時間帯や、団体客からの注文に便利。
そのために冷蔵庫を増やすとしましょう。1台20万円も出せば、1,000杯くらいストックしておけます=@100だと約10万円の新しい売上になります。
しかーし!
売れなければ、風味が飛んで、アイスコーヒーは劣化するし、冷蔵庫にもムダな電気代や、場所代がかかります。
そこで、注文が入ってからコーヒー豆を挽き、アイスコーヒーを作ります。
このように、BTOといっても何も難しくありません、喫茶店がアイスコーヒーを売っているのと同じこと。
昨年、コンビニ・コーヒーが大ヒットしたのは、この(注文を受けてから豆を挽いてコーヒーを作る)方式が受け入れられたからでしょう。
自社の読みで作るか?請われてから作るか?
25年前のコンビニでも、サーバーに作り置きして、暖めておくコーヒーを販売していました。セルフ式のベンディングマシンもありました。
しかし、大して売れなかったようで、すっかり見かけなくなりました。ホント、マズかったし。
ところが、アフターオーダー方式で、おいしいコーヒーを淹れるベンディングマシンの導入と共に売れ始めたのは、ご存知の通り。早い!旨い!安い!です。
アフターオーダー方式といえば、モ○バーガー。注文を受けてから作る方式で、一度は召し上がったことがあるでしょう。
注文を受けてから作る方式を、メーカーでは昔から受注生産と呼んでいました。
生産には、大きく分けて、受注生産と、見込み生産の二つがあり、
肉屋のコロッケから、ト○タの自動車に至るまで、見込み生産で作られています。
本も、缶詰も、家電も、服も、靴も、菓子も、飲料も、時計も、おむつも、酒も
売れる見込みに基づいて作らなければ、過剰在庫になってしまいます(倉庫代がかかります)し、
経年劣化や消費期限によって品質が低下しますから、売れると見込んだぶんだけ作るのが見込み生産(MTS/Make to Stock)で、MTSは、作る側の常識です。
その反対が受注生産で、注文を受けてから作る生産方式(MTO/Make to Order)
メーカーによっては、別注品や特注品や別製品と呼びます。
メーカーが、別注品を作るのは、生産ロットが多い場合や、高額、大型の場合に限られます。
要するに、儲からない少量生産を引き受けないのがメーカーの常識(←ココ重要)
さらに、受注生産の中でも、個別の注文に応じるのが、個別受注。
何も珍しいことではありません、牛丼店で煮汁を多めにかける「つゆだく」やたまねぎを抜く「ねぎ抜き」等の個別の注文のこと。
並盛つゆだくネギ抜きのような個別注文にメーカーは応じません(←ココ重要)
メーカーの常識を打ち破れ
さて、ここまで、喫茶店のアイスコーヒー、モ○バーガーのアフターオーダー、牛丼店の並盛つゆだくネギ抜き等「注文を受けてから作る」例が出てきました。
これらの例を参考に、DELLがBTOを考えたとは思えませんが※
※DELLのBTOは、デル・モデルであって、厳密には、受注構成(CTO/Configureto Order)
「メーカーたるもの、小ロットの個別受注には応じられない」
というメーカーの常識を、DELLが打ち破ったことだけは確か。
メーカーでありながら、つゆだくOK、ねぎ抜きOKの直販体制を構築しました。
喫茶店やハンバーガー店や牛丼店では当たり前だった、
「一個でも、注文を受けてから作る」
という常識が、ほとんどのメーカー※にとっては非常識でした。
※造船や戸建て住宅メーカーでは、一個でも、注文を受けてから作る受注設計(ETO/Engineer to Order)が常識。
しかし、その非常識が、顧客にとっての常識だったようで、またたくまにDELLがPC市場を席巻したのは、ご存知の通り。
DELLの大成功を見て、各社あわてて直販体制を整えましたが、時すでに遅し。
日本を代表する超有名メーカーさえ、次々と、PC事業から撤退せざるを得なくなりました。
異業種(喫茶店)、異業界(ハンバーガー)、異業態(牛丼)では当たり前な常識が、自らの業種、業界、業態では非常識だったわけです。
しかし、そこに成功のヒントが隠されていますから、
「我々は、顧客から見ると、非常識かも」
と自己懐疑できる企業のみ、そのヒントを見つけることができます。
人は「自分が常に正しい」と思い込みがちですからね、それを一旦は否定する苦行に立ち向かえるかどうか?
たとえば、DELLのように、注文を受けてから作る(売る)形態にヒントがあるとしたら、
そのヒントを見つけた企業は勝ち残り、負ければ撤退せざるを得ない、勝敗を決する戦略になること間違いありません。
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