テストマーケティングで売れる手応えを掴め

フィージビリティスタディの次は試作品

前回は、フィージビリティスタディの進め方について述べました。

フィージビリティスタディの結果、商品化(事業化)が決まったら、試作品を開発します。

試作品の作り方については、各業界、各社なりに、作り方があるでしょうから、割愛して、余談へ入りますが、

特に、金型職人や、砂型職人といった職人さんとの折衝には苦労します(今はどうか知りませんが)

鋳型職人のみならず、工場長や、製造部長(の一部に)は、良くも悪くも職人気質が多く、

「それは、こういうものなんだ」

「それは、できない」

「それは、シロウト考えだ」

「何にも、わかっちゃいねえ」

と、何度か怒鳴られました(苦笑)


なぜ、怒鳴られる役回りになるか?というと、弊社のクライアントの社員さんが動けば、

「業界大手のX社が、○○○の試作に、動いている」

と、競合に気づかれる可能性がありますので、X社を代理して、X社の名前を出さずに、動くためです。

傍目からすると「何も、そこまで神経質にならなくてもいいのに」と思われるかも知れませんが、

企業の機密保持といったら、滑稽なほど厳しく、社内にも伏せて進めることがよくありました。

商品がデビューするまでは、身内さえ、完全に信用しないということでしょう。


ある自動車メーカーのプロモーションの一員に加わった時など「知り得た全ての一切を口外しない」という旨の念書を書かされましたし、

自動車メーカーといえば、A社の自動車工場へ、B社C社の車では入れませんし、

もし、どうしても入らなければならない時は、B社C社のエンブレムや社名をガムテープで覆わなければならないことをご存知の方々は多いでしょう。

そんな滑稽なルール(というよりも、バイアス)だらけです。

いずれにせよ、とんとん拍子に話が進んで、いい結果に終わると、嬉しいものですが、悔しい思いも、結構しました。

まさに、エージェンシー(代行業)ならではの悲喜こもごも。

どんな仕事も、そうですが、マーケティングも決してカッコいいモンじゃないってコトですね。ご興味がありましたら、こちらも参考に。

テストマーケティングで売れる確証を掴む

一般的なマーケティングの進め方は、試作品の次に、テスト・マーケティングへ進みます。

テスト・マーケティングというと、

・コピーテスト
・試用テスト
・ネーミングテスト
・パッケージテスト

等のモニタリング・テストやサンプリング・テストを指すこともあるようですが、

通常、テストマーケティングの段階では、ネーミングもパッケージも決まっていますので(製品が完成していますので)、

テストマーケティングの目的は、ただ一点。売れるかどうか、本番さながらに売ってみることです。


よく、新商品につき「お試し価格」なんて見かけたことはありませんか?

それ、テストマーケティングの可能性が大です。

消費財の場合、テスト期間中、売上が右肩上がりに増えていけば、トライアルとリピートが同時に起きていますから、テストマーケティングは成功。

その逆に、売上が減っていけば、リピートが起きていない証拠ですから、商品は撤退。

市場導入しても、売れ続ける可能性は著しく低いため、ふりだしへ戻る。どこが間違っていたか再検証し、再構築することになります。

こうして、テスト・マーケティングで、

「これは売れる」

という確証を掴んだら、市場導入の準備に入ります。


テスト・マーケティングせずに市場導入する場合もあります。

アサヒビールのスーパードライや、山崎製パンのダブルソフト、敷島製パンの超熟のように、市場地図を塗り替える商品を開発するのは、至難の業ですから、

飲料や菓子等、画期的な新商品が生まれにくく、関与度が低い商品は、テストマーケティングに費用をかけず、新商品を市場導入する場合があります。

そりゃそうですよね。小売店に置かれる飲食料品で、定番になるのは1%未満ですから、いちいちテストしていては、新商品を出せなくなります。

なので時折、自暴自棄になったか?と思えるほど笑わせてくれる商品が並んでいたりするわけです。

アイス「ガリガリ君」のナポリタン味は、まったく売れず、最終的に320万本以上が売れ残り、3億円の赤字になったそうです。

テイスティングで(漫画家の蛭子さんから)定性調査は行ったそうですが、

「100人に聞きました」のような定量調査は、やったんでしょうか?

本番さながらに売ってみた(テストマーケティングした)んでしょうか?


筆者のクライアントでもない赤城乳業さんからしてみれば「大~きなお世話」でしょうから(笑)、これ以上は追及しないにしても、

3億円の赤字 vs 3千万円(※仮)のテストマーケティング代

が示す通り、3億円の損失を回避するために、3千万円でテストマーケティングしたほうが、安全ですよね。

売れたら売れたで、数千万円のテストマーケティング費用は無駄になりません(回収できます)ので。

※誰でも社名を知っている化粧品の上場メーカーは、テストマーケティングに、数千万円かけています。

経費を確保してからマーケティングを始めよう

テストマーケティングの予算がないとしたら、

A)最初からテストマーケティングするつもりがなかった

B)フィージビリティスタディしなかった(事業計画にテストマーケティング
の経費を計上していなかった)

からでしょう。


故意のAなら、ともかく、Bだとしたら、

・実現の可能性を調べもせず

・市場調査(定性調査や定量調査)せず

・テストマーケティングせず

作りたいものを作って、売り出すわけですから、売れれば良し。売れなければ在庫の山が残ります。賭けですね。

賭けの危険を減らすために、マーケティングがあるわけですが、もしも、失敗した時、マーケター個人の責任に負うことなく、

・フィージビリティスタディしたよね~(社長も云と言ったよね~)

・テストマーケティングしたよね~(みんな、売れると思って協力したよね~)

と、(外注先を含めた)組織の責任へと薄めるためのテストでもあります。

マーケティングを、市場調査のことだと理解している人は少なくないようですが、

マーケティングは、市場調査のことではなく、市場調査やテストなくして先へ進めないといったほうが正鵠を射ています。


なので、市場調査の予算を取ってから、マーケティングしましょうね~ということです。

どうしても、調査の予算が下りなかったら?

ご自分で調べる他ありますまい。

どうやって?

筆者に訊いて下さい(笑)

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