ストレンクス

強みはありません

驚く。
「当社に強みはありません」と平然と答える社長さんには驚いた。

社外パートナーに応募してくれたデザイン会社であった。

「それじゃ、新規を開拓するのに苦労するでしょう?」
と問うたところ、

「だから営業しているんです」
とのこと。

一理あるようで、論理は見事に破綻している。セールスポイントが無いと公言して憚らないということは、もはや開き直りに近い。

批判しているのではない、驚いている。


企業間取引の場合は、初回さえ繋がれば、長期の受注を期待できる。売り切りのBtoC商品とは異なる。

それだけに、満を持し、狙いすまして営業すべきだと思うのだが、そうは思わないらしい。

あなたなら「当社に強みはありません」と言い切る会社へ依頼するだろうか?

強みがないということは、競合他社と何ら変わらないということであり、選ぶ基準がない。選べないのである。とうぜん、選ばれない。依頼は、来ない。

どこへ発注しても同じということならば、相見積もりを取って、いちばん安いところへ依頼することになる。


このような営業スタイルがデザイン会社や印刷会社に多いのは、不思議としかいいようがない。

もしかして、あなたの会社の社員さん達も、明に暗に「強みはありません」と言っていまいか?

strength

ストレンクスとは、強みのこと。SWOTアナリシスのS=Strengthである。

※Wは弱み(weaknesses)、Oは機会(opportunities)、Tは脅威(threats)

強みを見つける方法についてはマーケティング・コンサルタントに聞いて頂くとして(笑)、ここでは、筆者なりの強みの見つけ方を披瀝しよう。

弱みを見つけるのである。

人は、批判や悪口といった「弱み」を見つけるのが、うまい。その理由は心理学を紐解いてもらえば分るが、カンタンにいえば、攻撃の糸口を見つけるのがうまい。人類が頭の良い動物である証拠であろう。


その逆に、強みを見つけるのが苦手。なぜなら、獲物(食料)を取ろうとして、はたまた獲物を奪い合うとき、敵の強みを見つけるより、弱みを見つけるほうが攻撃しやすいからである。

これは、人間のサガといっていい。知識や経験や能力の有無は関係しない。

ならば、ムリに強みを見つけるよりも、弱みを見つけることだ。これならば、誰でも出来る。

その、弱みと強みは表裏一体。見つけた弱みを、強みに変えるだけで済む。

たとえば、価格が高いとしよう。高いと売れにくい。高いよりも、安いほうが売れやすいのは自明の理。

ならば、すべての戦略を高級路線にすることだ。

むろん、高級であるだけの製品でなければならないし、高級品が売れる販路を確保しなければならない。ネーミングも必要だし、たたずまいも要る。


それらの戦略を整えた上でプロモーションに及ぶ。

「安物買いのゼニ失いと申しますように、長期的に考えれば、高くても高級品が得です」

「例えば10年間、安物を所持して、10年後に捨てますか?それとも、10年間、高級なものを所持して、さらに10年、それを所持し続けられるとしたら、さあどちらが得でしょう?」

弱みを捨てよ

上は例を価格に求めたが、デザイン会社(企業間取引)であっても、弱みを強みに変えられる。例示しよう。

今まで手がけた仕事(WBCのBeen)が、仮に「女性向けの商品」に関するデザインが多かったとしたら「女性向けのデザインに強い」といえばよい。

デザイン賞などを受賞した経歴がなくても、経験があるし、実績もある。それが強みになる。

デザイン会社のクライアントは広告代理店やSP会社が多く、クライアントによっては、顧客の傾向があるため、同じ傾向のデザインを何度も手がけてきているはず。
(たとえば、化粧品メーカーを顧客にもつ広告代理店からデザインを請け負っていると、化粧品に強くなる)

「それじゃあ、男性向けの商品に関する仕事が入ってこなくなる」という懸念もあろう。

しかし、強みを持つということは、弱みを捨てるということである。

だいたいにして、電博じゃあるまいし、弱みのないオールマイティな中小零細デザイン会社がドコにあろう


弱みを捨てずに抱え込んでいると、強みは見つからない。弱みは捨てることだ。強みさえあれば、それでいい。

切り口は男女別のみならず、エコロジーに強い、緑系の色使いに強い、高齢者向けのデザインに強い、食べ物の見せ方に強い、スピード感あふれるデザインに強い……等々いくらでもある。

人は動物・企業は人

強みというと、製品とプロモーションのみ注視されがちであるが、立地の強みもある。「御社に近い」ということである。

これは筆者が創業の地を富士見に選んだとき使った。近いということは、往来の時間を短縮できるため、機動力が高まる。仕事の件数に影響することは想像に難くなかろう。

強みは、広報にも応用可能。

たとえば、社員数が少ないとしよう。営業に人員を割けない。いきおい、営業力が弱くなる。

ならば、「しつこく売り込みません」と宣言すればよい。人員が少ない弱みを、ポリシーに転化するのだ。


以上のように、弱みは強みになる。強みがないなど有り得ない。もしも本当に「強みがない」としたら「ポリシーさえない植物ですか?」と問いたい

人間は動物である。人間が集まる企業も動物である。

強みは必ずある。

それを見つけるかどうか、その意識があるかどうかに因る。

強さは意識から発する。

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