人を動かすには?
第三章Q&A「人を動かすには、どうしたらいいんですか?」
をブログ向けに編集しようと文字数をカウントしたら、6,000文字(原稿用紙15枚!!)もあったタメ、二回に分けてお届けします。
(転載ここから)------------------------------------------------------
人を動かすには、どうしたらいいのでしょう?
長くなりますが、4つのイシューを特定してみましょう。
・先天的な才能で人を動かす
・後天的な能力で人を動かす
・お金と権力で人を動かす
・恐怖と期待で人を動かす
まず、人を動かす天賦の才能がある人は、幕末の坂本龍馬のように、勝海舟や松平春獄らの年配からは可愛がられ、仏頂面していても年下からは兄貴分として敬われ、黙っていても人が集まり、発した言葉が無目的であっても、人を動かします。
勝海舟の回想によると、
「坂本龍馬か。なかなかの人物さ。落ち着いていて、何となく冒しがたい威厳があって、良い男だったよ」
だそうで、こうした人物の才能は分析不可能。ただただ「魅力」の二文字あるのみ。
普通に暮らす普通の人には、真似しようにも真似できません。敬愛の対象であっても、参考の対象外です。
次に、龍馬のような天賦の才があるかどうか別にして、どこへいっても児童会長や生徒会長に推挙される人物がいます。
「竜は一寸にして昇天の気あり」なのかどうか分りませんが、有権者を動かすことだけは確か。
おそらく、ソフトスキルの才能豊かに生まれついたか、生活環境の中で自然と体得したか、意識して周囲から学び取ったのでしょう。
こうした人物には協調性があり、ストレス耐性が強く、積極的で、指導力や解決力が高く、プレゼンテーションやファシリテーションに優れ、駆け引きが上手です。
このタイプの「人を動かす」人になるのであれば、後天的でも大丈夫です、コミュニケーションやリーダーシップ等のソフトスキルを会得すると良いでしょう。
同様に、後天的な努力か後光効果か分りませんが、人を動かす力がある人は、その場の流れに合わせて言動し、動かしたい方向へ話を持っていきます。
その話術たるや当意即妙にして軽妙洒脱。その心中たるや誠心誠意にして虎視眈々。一言でいえば、上手です。
彼らには「このように動かそう」という目的意識があり、その目的を予め準備することなく、その場の流れの中で見つけ、臨機応変に対応します。
トップセールスマンが、そうですね。
同行してみると分りますが、がまの油売りのように立て板に水で話す人ばかりではありませんし、落語家よろしく面白おかしく話すわけでも、演説家のように魅了してやまないわけでもありません。
それどころか、話さない人もいます。
問題点にしろ、事実にしろ、糸口だけ切り出したら、あとは黙ってお客さんの意見に耳を傾け、時おり相槌を打ったり、
「ははあ」
「なるほど」
「そうですね」
「おっしゃる通り」
「勉強になります」
「おもしろい」
「あはははははは」
「いいですね」
「うんうん」
「わかります」
と、合いの手を入れるだけ。
決して反論せず、聞き役に徹します。聞く営業です。
お客さんは、だんだん、自分で言った自分の言葉に酔い、酩酊状態に陥り、ついにはハンコを押す仕組み。
彼らは、黙って聞く労力が、お金に変わることを知っています。
これなら口下手でも営業できますし、もし寡黙なお客さんに当たったとしても、名刺だけ置いてサッサと帰ります。
長居して悪い印象を残すくらいなら、無色透明なまま引き上げるほうが、後々いくらでも良い印象を与えることができるからです。
ただし「売る」という目的意識だけはブレません。
たとえ初会で売れないと分っていても、次の段階のために、今の機会を活かそうとします。最終目的が「売上金を頂く」に絞られているからです。
いろいろなタイプのトップセールスマンとお会いしてきましたが、どちらかというと深慮遠謀そうに見える人よりも、軽佻浮薄に見える人のほうが多いような気がします。
良くいえば、おっちょこちょいで、悪くいえば幇間のように、いつもニコニコ笑っています。腰の軽いほうが、警戒されにくいからです。
とはいえ、芯から軽々しいのではなく、「売る」という目的に一点集中、狙いすまし、そっと引き金をひく狙撃手であることだけは確か。
他人に「お金を払わせる」のですから、人を動かす技術としての難易度はウルトラCといっていいでしょう。
営業マンは、人を動かすプロなのです。