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読んだ本について紹介。紹介するのは、他の人があまり読んでいない本ばかりかと。
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2020年5月の記事一覧

ドイツ悲劇の根源(下)/ヴァルター・ベンヤミン

システム化された象徴はあっても、無定形で断片化しがちなアレゴリーはない。 それが現代の特徴ではあるのだが、そのことが随分と人類のバイタリティを弱めているのではないだろうか?と感じている。 上巻を紹介してから少し間が空いたが、ヴァルター・ベンヤミンの『ドイツ悲劇の根源』の下巻はそんなアレゴリーがテーマだ。 下巻は「アレゴリーとバロック悲劇」と題された第2部にあたる。 第1部の「バロック悲劇とギリシア悲劇」とはずいぶんと内容が異なっている印象を受けた。 古典古代の象徴、バロッ

ドイツ悲劇の根源(上)/ヴァルター・ベンヤミン

平時においては理想を追求するものも、非常事には現実的な利を追求するほうに傾く。 人間の本性があらわになるのが非常時だと見る見方もあるが、むしろ、理想を追求するのも実利に傾くのもいずれも人間であり、本性なるものなどないと考えるほうが理にかなっているように思う。 どちらが正しい姿勢だなんてこともない。 「近代悲劇は、悲しくさせる劇ではなく、悲しみが満足を見出すための劇、すなわち悲しんでいる人々の前で演じられる劇」とこの本でベンヤミンは書いている。 悲しみのなかにいないひとにとっ

民主主義の非西洋起源について/デヴィッド・グレーバー

民主主義ってなんだろう? そう思わずにはいられない状況ではないだろうか。 このコロナ禍にどう対処していくかを一向に示すことができない政府に、それに対して文句や諦めの言葉を口にしつつもそうした政治を変える力も気持ちもない人びと。誰もがこの状況にまともな政治を求めているのに、その政治を担う役割を誰もつかもうとしていないかのように見える。もちろん、他人事だけでなく、他ならぬ自分自身も含めて。 批判する側/される側、どっちもどっちで、主権とはなんだろうな?と考えてるのがここ最近。