ドイツ悲劇の根源(上)/ヴァルター・ベンヤミン
平時においては理想を追求するものも、非常事には現実的な利を追求するほうに傾く。
人間の本性があらわになるのが非常時だと見る見方もあるが、むしろ、理想を追求するのも実利に傾くのもいずれも人間であり、本性なるものなどないと考えるほうが理にかなっているように思う。
どちらが正しい姿勢だなんてこともない。
「近代悲劇は、悲しくさせる劇ではなく、悲しみが満足を見出すための劇、すなわち悲しんでいる人々の前で演じられる劇」とこの本でベンヤミンは書いている。
悲しみのなかにいないひとにとっ