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いま、小児の言語聴覚士が足りない

現状を把握しよう

いきなりですが、言語聴覚士(ST)っていま日本に何人くらいいると思いますか?

約3万人

約10万人

約13万人

正解は…

 

 

 

   

約3万人です。

正確には3.8万人とのことですが、実際に働いている人数は更に少なくなります。

年間1500~2000人程度が国家試験に合格して年々増加傾向にはありますが
少子化が叫ばれる昨今、なり手の若者自体の人数が減っているわけですから
今後も同じように人数が増えていくとは考えにくいです。

日本言語聴覚士協会 会員動向(令和4年3月現在)

なお、日本の総人口当たりの言語聴覚士の人数は約3500人に1人という計算になります。
滅多に出会えないレアキャラのよう…。
そりゃあ見たことも聞いたこともないという人が多いのも納得です。

ちなみに、弁護士は約4万人とのことで大体同じくらい。

リハビリテーション関連職種の作業療法士(OT)は約10万人、理学療法士(PT)は約13万人とのことです。
圧倒的に人数に差がありますよね。

人数差の理由の一つに、国家資格化された年の違いがあります。
理学療法士・作業療法士は1966年、言語聴覚士は1997年に国家資格化されました。
この30年の開きによって、資格取得者の人数に大きな差が生まれたといえます。

とはいえ、1958年には国家資格ではないものの言語聴覚士としての活動はすでに始まっていました。
つまり、しばらく民間資格としてリハビリテーションを行っていたことになります。

なぜ1966年に言語聴覚士は仲間外れに?

そう考えると、1966年に言語聴覚士も一緒に国家資格化されても良かったのでは?と思いますよね。
わたしもそう思いました。

しかし、当時言語聴覚障害の分野における指導は「大学院修士課程修了でなければ取得できない」
というのがアメリカ言語聴覚協会(ASHA:「アシャ」と読みます)の考え方であり
その意見を尊重したことで他職種との折り合いがつかないまま月日が流れたとのこと。

時間をかけて専門的な技能を養成課程で習得すべき、という考え方自体は専門職の在り方としてはマッチしていますし
言語聴覚士による障害へのアプローチは一人ひとりオーダーメイドなので少し勉強したくらいでは一人前になれない、という考え方も理解できます。

一方で、言語聴覚士に比べると人的リソースの豊富な理学療法士・作業療法士を見ていると
組織の規模が大きいとマンパワーがあると感じる場面は多々あるので
専門性の高さが必要とはいえ、もっと人数は必要ではないかと思います。

いま、というか前から足りない

なぜなら、需要と供給のバランスが崩れていて、供給が追い付いていないのが現実だから。

30年間に渡って、国家資格化に向けて沢山の専門家や先輩方のご尽力があっていまがあります。
だからこそ、もっとたくさんの方に言語聴覚士という職業を知ってもらいたい。

しかし、いかんせん人数が足りない。
しかも、小児領域で働く言語聴覚士なんてほとんどいない。
どこにいるんだ、小児の言語聴覚士は。

そんな気持ちをわたし自身が抱いている何倍も、発達のモヤモヤを抱えた親御さんは感じているはずです。

いま足りない、のではなく実際は前からずっと足りない、が正しいのですが
近年特に小児領域では発達障害の認知度向上に伴って、需要が増加傾向にあるため
小児の言語聴覚士はいま深刻な供給不足に陥っていると言えます。

小児の言語聴覚士はどこにいるのか問題へのアンサー

ちなみに、小児領域で働く言語聴覚士は4000人程度と言われています。
そうなると約3万人の言語聴覚士の1割程度しか小児領域にはおらず、
残りの9割は成人領域の病院・介護福祉施設などで勤務していることになります。

なお、4000人の中には成人領域と兼務する形で小児も担当している場合が含まれています。
実際に私の同級生も、総合病院に成人担当として勤務していましたが
小児の来院者が増えたためリハビリテーションの範囲を拡大することとなり、小児も担当することになりました。

そうなると、特に需要と供給のアンバランスが起こっているのが小児領域だと言えますよね。

約4000人のうち小児領域のみを扱う言語聴覚士はさらに少なくなりますから、
もはや出会えたらラッキーというレベルになっています。

どこで出会えるのかというと、

病院などの医療機関

子ども家庭支援センター

地域の児童発達支援センター

児童発達支援事業所(児童デイサービス・放課後等デイサービス含む)

民間企業

個人経営の教室

のいずれかに所属していることが多いので、これらを調べていくのが早道です。
医療・福祉・教育分野に幅広く在籍はしているものの、
地域差が大きく都市部に集中しているためお住まいの地域によっては
そもそも言語聴覚士がいない、という状況も耳にしています。

会員のみの情報ですので全ての言語聴覚士を網羅しているわけではないですが、
下記のリンクで言語聴覚士のいる病院・施設を検索することもできます。

日本言語聴覚士協会 病院・施設検索

「対象領域を探す」の「言語・発達障害」を選んで検索してみてください。
あとGoogleマップも作りました。小児ST全国マップ


相談先に困ったら


そうはいっても、まず身近なところでどこに相談していいのかわからない、とお思いですよね。

ファーストステップとしては、

かかりつけの小児科・児童精神科

保健所/保健センターでの1歳半・3歳児健診

保健師相談

地域の児童館での巡回相談

家庭児童相談室での家庭児童相談

言語聴覚士による個別相談

これらが窓口になるかと思います。
近頃は「病院に受診するのはハードルが高いのでまずメールで相談したい」とおっしゃる親御さんが
わたしのメール相談室からお申込みされるケースも増えています。※お休み中

支援を受けたいと思っている親御さんはたくさんいます。
でも、どうやって支援の手と繋がればいいのかわからない方もたくさんいます。

そもそも人数が少ないのであれば、言語聴覚士は施設内にこもっているだけでなく
支援を必要としている親御さんの元にもっと出向いていかなければならないと感じています。
しかし、勤務している施設の規則で外に出向くことが認められていない場合もあり、
もどかしい思いをしている支援者も多いのではないでしょうか?(実際わたしも病院勤務時は規則でNGでした)
必要な支援が必要な方に届くように、今後も微力ながら活動していきたいと思います。

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