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アプリマーケティングにMolocoのDSPを加えた理由

こんにちは、田中奏真です。Moloco が開催したイベント「アプリプロモーション最前線」に登壇して、エン・ジャパンの事例を話しました。Moloco Cloud DSPを利用したらアプリマーケティングが進化したので、導入の背景や何をやったのかを記録しておきます。

ビッグテックでアプリ広告を開始

エン・ジャパンが「エン転職」のアプリをリリースしたのは、2015年。それから2017年まではアプリ広告の出稿額は小規模でした。転職活動はアプリよりモバイルWebを利用する人が多く、アプリだけで転職する人は少なかった。アプリ広告を出稿しなくても、モバイルWebのユーザーにアプリの利用を促進する「Web to App」を実行すればアプリ利用者は増える。広告費や人的リソースを用意してアプリ広告をやる必要性がなかったのです。

2018年になりアプリで求人に応募するユーザーが毎月増加していたので、アプリを利用するユーザーにインタビュー調査を実施。複数のユーザーが言っていたのは、「学生時代の就活はアプリを使っていたから転職もアプリを利用した」。就活生のアプリ利用者が増加していて、2~3年後に転職活動をする際にモバイルWebよりアプリを選択していたのです。

当時のエン転職は、アプリよりモバイルWebの利用ユーザーが多かったのですが、アプリユーザーはエンゲージメントが高くて一人当たりの求人応募数が多かった。私は「アプリ広告を強化したほうが事業を成長させられるかもしれない」と思い、定量調査後、ユーザーの行動変化に適応するためにインハウスでアプリ広告を試すことにしました。

アプリ広告の出稿先はビッグテック企業の広告プラットフォームを選びました。ビッグテック以外への広告配信も検討しましたが、複数の媒体と直接取引するのは手間がかかりますし、DSPはアドフラウドの発生確率が高いと聞いていたので、ビッグテックだけにしました。

アプリ広告の領域がレッドオーシャン化

2019年からインハウスでアプリマーケティングを推進したところ、冬に転職アプリの中でエン転職が月間ダウンロード数で 1位になりました。アプリの起動率や求人応募の転換率も高く、来期の成果を底上げできると喜んでいたところ、翌月のCPIが 3倍に高騰。

理由を調べてみると、別の企業が運営する転職アプリが広告費を大幅に増加したことがわかりました。その企業はアプリ広告や販促資料で「月間アプリダウンロード数 No.1」を訴求していたため、前月に失った 1位の座を取り戻しにきたのです。

価格競争では負けるので工夫で乗り切ることに。しかし、モバイルWebのランディングページ改善のような工夫がアプリストアでは難しい。アプリストアのコンテンツを変更したくても、アプリストア側の審査でリアルタイムでは変更できない。このまま続けてもリターンが小さいと考えてアプリ広告への投資は縮小しました。

ブルーオーシャンを探してMolocoと出会う

2020年から2022年8月までの2年半は、アプリ広告は小規模で続けつつ、新規事業の「エンゲージ」や「AMBI」のアプリ開発を優先。新規アプリのリリース目安日が決まったので、アプリマーケティング戦略を見直すことにしました。

2022年9月にマーケット調査をすると、ビッグテックの広告枠は他社の転職アプリが出稿を強化しており、価格競争は激しいままでした。ビッグテック以外に配信できる DSP の利用も考えましたが、DSP はアドフラウドの発生確率が高いと聞いていた。アプリ広告の再挑戦は先送ろうかなと思っていたところ、チームメンバーから「MolocoのDSPをやりたいです」と話がありました。

Molocoの名前は聞いたことがありました。私がソーシャル広告運用ツールの Smartly を活用していたときに、現在Molocoの日本チームを率いる坂本達夫さんに担当いただいたことがあり面識があったのです。

Molocoについて調べてみると、生活者の可処分時間の60%以上を占める「ビッグテック以外のアプリへの配信面」に広告を配信できることを知りました。ビッグテックへの広告配信はレッドオーシャンなので、Molocoを利用するとブルーオーシャンに行けそう。アドフラウド対策も強化している。早速、坂本さんにメッセンジャーで連絡してミーティングを設定。マーケティングチームで話を伺い、ミーティング当日にMolocoの導入を決めました。

Molocoでアプリマーケティングが進化した

2022年10月11日にMoloco とキックオフを実施。与信確認と契約書締結後、アプリ計測SDKを連携。新規の媒体に広告制作のリソースをかける余裕はなかったので、他媒体で使用している既存のクリエイティブを入稿しました。全ての準備が整って、12月5日に広告配信をスタート。

MolocoのDSPには週予算モードと固定日予算モード(指定した1日の予算を消化する)があるのですが、機械学習の効果が高そうな週予算を選びました。

配信初日は機械学習が始まったばかりなので、コンバージョンは 0件を想定していましたが、実績は 2件。翌日からMoloco専用の静止画と動画を制作して入稿。配信を開始して10日後にはCPIが低下。機械学習により広告配信量も増加。当初想定していた機械学習待ちの期間は4週間でしたが、2週間で学習が効いてよかったです。

配信を開始してから2週間が経過し、効果が想定より良かったので、転職顕在層が増える 1月よりも前に機械学習のデータを増やしたくなり、12月の予算を2倍に増額。その後のパフォーマンスも高く、初月から期待を超える成果を出せました。

12月末にデータを振り返って驚いたのは、Moloco経由でエン転職のアプリをダウンロードしたユーザーは、求人応募への転換率が高かったこと。LTVが高いユーザーに広告配信ができていた。しかも、アドフラウド対策ツールの Spider AF で Moloco を確認すると不正検知率が低かった。

翌月の予算は初月の10倍で設定。新規クリエイティブの制作数を増加。CPA最適化キャンペーンの機能も活用。コツコツPDCAをまわすだけで成果は右肩上がりに。2月と3月も増額し、3月の出稿額は初月の77倍になりました。ビッグテックとビッグテック以外の配信面で広告出稿ができる状態になり、選択肢が増えました。生物が海から陸上に出て進化を続けたように、アプリマーケティングの進化につなげられそうです。

次にチームで挑戦したのは、2023年4月に入社した新入社員にMolocoの運用を任せること。5月に運用をスタートして、新人マーケターがインハウスで広告運用とクリエイティブ制作を進めています。Moloco 日本チームのサポートが手厚く助かっています。

ちょうど先日、日本初の Moloco 公認代理店に認定されたサイバーエージェントさんの活用事例がMarkezineに公開されました。Moloco に興味がある方は参考になると思います。


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