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改悪にみえる神改善

ピルズベリーの話って、聞いたことありますか?

ピルズベリーっていうアメリカのメーカーが、インスタントのケーキミックスを販売したんですが、全く売れなかったんですね。売れる商品の原則は『課題が解決できるもの、または目標が達成できるもの』です。インスタントのケーキミックスは、粉を水やミルクに溶かすだけでケーキ生地が完成するんで、ピルズベリーは「絶対に売れる!」と確信してたそうなんですね。

でも、結果は惨敗。

せっかく手間のかからない商品を作ったというのに、アメリカの主婦さんたちは全く買おうとしなかったんです。しかも時代は1940年代です。なので、ケーキを作る文化というのは、今よりも色濃く残っている時代でもあります。

納得のいかないピルズベリーは、リサーチを重ねて「なんで買わないのか?」の原因を探ることにしました。すると、ある1つの主婦たちの気持ちを知ることになったんです。

その気持ちというのは、愛情表現です。

当時のアメリカの主婦さんたちにとって、ケーキ作りというのはただただ面倒な骨折り作業ではありませんでした。1手間1手間に愛情を込めて、「喜んでくれるかな〜」「笑ってくれるかな〜」と想いを込めながら作っていたんですね。なので、インスタントにさくっと作れるケーキミックスは、簡単に美味しいのが作れるメリットがある反面で、愛情を込めることができないという欠点があったんです。

いや、最大の売りだった簡単さが、主婦たちには欠点に映ってしまったんですね。

まあ、この話はさっきも言った通り1940年代の話なんで、今もこの文化が残っているかどうかはわかりません。ですが、昔から『人は魔法の薬を求めている』という言葉があるくらいです。簡単に痩せたい、簡単にお金が欲しい、簡単に頭が良くなりたいといった人間の欲望は、はるか大昔から続いているものなんです。

だから、簡単に作れるケーキミックスはセオリーでは売れるものだったんです。他に売ってるメーカーもなかったし。

この例から見えてくることはたくさんあると思うんですが、ぼくが1番大事だなと思ったことは「人は、簡単に結果を手に入れたい一方で、そのプロセスにも信念を持っている。」というものです。

例えば、さっきのケーキミックスの場合だと、とうぜん簡単に作れる方が主婦たちにとっては大助かりです。ですが、『ケーキ作りはあえて苦労して愛情を込めるもの』という信念、そして仲間やご近所さんとの価値観の共有などがあったから、手にすることはありませんでした。その証拠にってつもりじゃないんですが、その全く売れなかったケーキミックスも『卵を加えるひと手間』が必要なケーキミックスに改悪したところ、売り上げが跳ね上がる結果となったんですね。

一般的には改悪に見えるものでも、主婦さんにとっては心の救いどころを作ってくれた神改善だったってわけなんです。

あえて面倒くさくすることで喜んでくれる客層ってないだろうか?そのように考えると、また面白い商品やサービスを作ることができるかもしれませんね!

田辺輝恭

ReveDunJourプロジェクトは"夢”に特化し、子どもたち若者たちへ夢の持ち方・叶え方を発信しています。世界で夢を叶えてきた達成者たちが在籍。彼らから知恵と考え方を絞り取ることを是非としています。大和の心で我が儘に。