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講演会じゃなくて、対話がしたかった2016年

前回のつづきです。

18歳選挙権が導入された2016年。

もっと若い世代に政治を身近に感じてもらえたらと思い、とりあえず学生有志で政治のトークイベントを開催しました。

当時、若者の投票啓発の旗振り役として活躍していたNPO法人YouthCreateの原田謙介氏、国会から自民党の小林史明議員と民進党(当時)の津村啓介議員(当時)、そして若者が30名ほど集まり、ざっくばらんに政治について語り合いました。

このイベントで意識したのが「講演会ではなく対話」という点でした。参加する人たちも自由に話してもらうカジュアルさが欲しかったのです。

あと政治的な立場を超えて話したいという点も意識しました。与党と野党の両方から来てもらうことで、色んな視点からテーマを考察できることを狙いました。

実は与党と野党はケンカばっかりしているわけではなく、日ごろからしっかりと話し合い、賛成するところは賛成し、反対は反対と、是々非々です。

おもしろかったのが、政府が進めようとしている法案に与党の中でも「これはおかしい」と賛成できない人がいる場合もあり、そういう時は野党の議員に頼んで代わりに質問してもらうこともあるそうです。政治的な立場はちがっても「日本を良くしたい」という思いはみんな一緒なのです。

こうした裏話を参加してくれた人たちも興味深く聞いていました。来てくれたのは政治にすごく詳しい学生ばかりではなく、かつての私のように漠然と政治に興味がある人たちでした。

本当に興味がある「ガチ勢」はそういうサークルに入ります。弁論部とか政治サークルとか。そうじゃないけど「なんとなく」くらいの興味がある人たちが対象でいいかなと思っていたのです。

このイベントは大盛況に終わり、しかもTBSの「報道特集」でも取り上げていただき、手ごたえを感じました。

ところで、このイベントを開催した2016年は、政治が大きく動いた一年で、いくつかの大きな政治的なイベントがありました。

一つは18歳選挙権の導入です。

この夏の参議院議員議員選挙から選挙権年齢が18歳になり、「若者と政治」を取り巻く動きが活発になりました。投票啓発を行うNPO団体や有志の運動もより注目されていたと思います。

二つめは東京都知事選挙です。

それまで自民党の国会議員だった小池百合子氏が立候補し、緑色のカラーで「小池旋風」を巻き起こしました。小池氏は初めての女性都知事になりました。

そして三つめはアメリカ大統領選挙です。

それまで泡沫候補とされていたドナルド・トランプ氏が共和党の大統領候補になり、民主党のヒラリー・クリントン氏を破りました。アメリカが抱える深刻な経済格差と移民問題などをめぐって国民の対立が露わになり「分断」という言葉が広まります。

これら三つが、2016年に起こった政治的に大きな出来事でした。

そして、今年の7月には東京都知事選挙、11月にはアメリカ大統領選挙がまたしても行われます。もしかしたら衆議院選挙もあるかもしれません。

こういう年だからこそ、もっとざっくばらんに政治のことを話せる場があってもいいのではないかと思います。日本はせっかく自由にものを言えて、選挙で好き勝手に投票できる国なんですから。

日本では「政治と宗教の話はNG」とされていますが、それは本当はみんな話したいのだけど、話したら煙たがられたり、意見の対立から人格の否定になってしまうからなのではないかと思います。

「こんなこと言うと間違っているんじゃないか」
「こんなこと言うと笑われるんじゃないか」
「こんなこと言うと誰かを傷つけるんじゃないか、傷つけられるんじゃないか」

そんな相手を気遣う気持ちは、湿度のある人間関係には必要かもしれませんが、結果として政治への無関心(アパシー)を高めるだけではないでしょうか。

丸山眞男はアパシーを促進する条件として

①現代政治に内在する要因(現代の政治機構の複雑化とその規模の国際的拡大)
②諸々の非人格的(impersonal)な機構の発達(組織の多様化と分業による人間の「部分人」化)
③マスコミュニケーション(大衆の受動化)

を挙げて「民衆の日常生活のなかで、政治的社会的な問題が討議されるような場が与えられねば」と述べています。(丸山眞男『政治の世界 他十篇』岩波文庫)

丸山眞男が言う「討議」ほど格調高いものは私には出来ませんが、もっと気軽に話せる「トーク」の場を作っていきたいです。

まだまだ思い描いている理想からは遠いですが、8年前の原点を忘れずに、やれることをやっていきたいと思います。




田原総一朗さんと開いているトークイベント「田原カフェ」のお知らせです。

次回の田原カフェは6月10日に開催します。

ゲストは認定NPO法人D×P代表の今井紀明さんです。

かつてイラク人質事件で拘束され、帰国後「自己責任」バッシングで引きこもりに。そこから自身の体験をもとに孤立する10代の支援を始めました。

社会に「頼れる居場所」をどうやってつくるか。今井さんにお話をうかがいます。

▽参加お申込みはこちら

お待ちしております!



















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