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必死こいて頑張ってたアイツを笑っているうちに2Fアリーナまで移された話

父の日プレゼント(一部)が届き

珍しく父から電話があった。


生まれてこの方無趣味で

人とワイワイ話すこと以外

楽しみが全くない父が

定年直後に始めた俳句や短歌

かれこれ10年くらい経つのかあと思い

芸人さんが俳句について語った本を

コーヒーセットと一緒に送ってみた。


開口一番、

「又吉はね、俳句も中々よ。
 大したもんよ。」


と、九州のド田舎のド素人俳人が

芥川賞作家の寸評を初めだした。

偉そうに講釈垂れたけど、

「まあ、勉強させてもらいますわ」

と妙にテンション高く電話を切られた。

シャレのつもりで送った本、

机に座って早速ノートに書き込みながら

読みこなそうとしてる模様。




何もないのだ。

ジジイ然としたプライドが。

曲がりなりにも10年俳句やってきたのだ。

シャレで渡した本に

「ワシ初心者ちゃうわ!」

と、ツッコミが入るかと思いきや

素直に受け入れて、黙々と読み出した。



売れてない中年芸人に
若手芸人がふざけてダメ出しをして
それを中年芸人が有り難がるような

煮えきれない心境になった笑



父がこういう[硬さ]で俳句やってて

句会のメンバーの方々は大丈夫なのか笑

俳句の世界はきっと優しいに違いない。


何かのコンクールで一度だけ

父は佳作を取った。

何度も親戚中に報告してまわった。

あれ以来、表彰されたニュースはない。

とは言え飽きもせず毎日歌を詠んでる。

暇つぶし程度じゃない、毎日ガッツリ。

気が遠くなるほど歌を詠んで

たった一度の佳作しか取れていない。

それで10年経った今でも

若手芸人のようにギラついている。

普通は、

試しに詠んでみたら佳作取りました!

と、プライドが邪魔をし

そんな頑張ってない感!を出す。

父には、それがない。

世の中はまだワシに気づいてないが

そのうちブイブイ言わすぜ!的な

年齢不相応な

才能不相応な

変にギラギラしたものを感じるから

僕は父とあまり会話をしたくない

なんか嫌な暑苦しさなのだ笑



ただ一方、

自分が今から

新しい世界に飛び込めるのか?

そんなことを自省した。



仮に始めても

会社員のわりには頑張ってるかな~

あくまで趣味程度ですから~

と、流される。



才能に恵まれない人間が

必死こいて頑張ってるのが

ダサいという風潮に

僕も流されてる気がするのだ。



楽器のセンスがなく、

リコーダーさえ音を外す子を

笑っただろう

勉強のセンスがなく、

教科書の内容ノートに書き写す子を

笑っただろう



いつの間にか

僕らは

笑う側に座っていないか?

いつから観客席に座っていた?

いつから2Fアリーナに移った?

誰も知らない、知ることのない

小さな舞台に上がるのは恥ずかしいか?

そんなことを、父を見て我思う。



僕ら凡人には

昔凄かったそこそこ才能あった奴の

自己憐憫に満ちた物語なんか必要ない。

佳作ひとつで狂喜乱舞できる程

今だに何故かギラギラしてる

なかなか報われない凡人の物語が必要だ。

僕が書きたいものは

そういうことだったり、する。

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