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米澤穂信「満願」

読んでみました。

本の表紙には「満願」と大きく描かれているので、とても存在感があります。そして、「満願」というお話しかと思いきや、短編作品が6作品も入った短編集でした。

そのタイトルは「夜警」「死人宿」「柘榴」「万灯」「関守」そして最後に「満願」です。もちろん全てのお話を読みました。この本自体は330ページあるので、1作品50−60ページ程度でとても読みやすかったです。

どの作品も面白いというか、色々考えながら読むのが面白かったです。「夜警」は新米警察官の葬式から始まるという衝撃的な始まり方。なぜ死んだのか?なぜこうなってしまったのかがポイントになる作品でした。なんとなく警察はこんなことを感じながら仕事をしているのかな?と想像力を掻き立てられ、面白かったです。

「死人宿」はタイトルからしてインパクトがあります。内容は主人公の彼女が、人間関係を断ち切り、その主人公が彼女を探しに行った先が、その「死人宿」でした。そこで誰かが落とした「遺書」を見つけ、その「遺書」が誰のものなのか?推理する物語であり、2人の関係を修復するための物語です。これがまた奥が深くて面白かったです。細かい描写に、そういった意味があったのかと最後は驚きました。

「満願」というタイトルにもあるように、もちろん「満願」も面白かったのですが、ぼくが一番心に残ったというか、心が「ゾクゾク」した物語が、「関守」でした。

「関守」は週刊誌に記事を書くライターが主人公です。主人公は記事を書くときに、特定のテーマがある場合はそつなく書けるタイプ。しかし、自由におまかせの記事を依頼されると、何を書けば良いかわからず、ライターの先輩に相談します。

すると、その先輩が毎年のように、不可思議な事故が起きる峠の話をします。先輩はそのネタを1年以上放置して、まだ原稿にしていないというのです。主人公はそのネタを先輩からもらい、記事にすることを決意します。

この4年間で5人死んでいる峠。共通点もなく、どうやって記事にするか考えながら、事故現場近くのドライブインへ入ります。そこで出会ったお婆さんに取材をして、様々なことが繋がっていく展開が、衝撃的で面白い。本当に進むにつれて、「ゾクゾク」するのが自分でもわかりました。

「満願」は6作品もあるので、人によって好みが分かれるかもしれません。それもこの本の面白さではないかと思います。1冊で6種類の味。とてもお得な小説だと思います。殺人事件やミステリーが好きな人におすすめの本です。

今日も読んでくれて、ありがとう。





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