木枠のショーケース
対面販売スタイルで97年
創業当時(大正11年)からずっと対面販売を続けている天狗堂海野製パン所。
パンを買う時は、「これとこれをください」とお店の人に伝えると、パンをトングでとってくれるスタイルだ。そう伝えることによって会話が生まれるのがこのスタイルの良さである。
ただパンを買って帰るだけでなく、ちょっとしたパンについての質問を投げかけたり、おすすめを訊いたりするきっかけになる。
会話が生まれると、ここのパン屋さんではこういう人が働いていて、奥の方でこういう職人さんがつくっているのかという安心感も得られる。
何気ないことだけど、お店側からしてみても商売をするにあたって大切なことだ。もちろんパンの味の良し悪しもあるけれど、誰がつくっているのか、働いているのかって味の前のベースになるところだと思う。
(写真:天狗堂海野製パン所のショーケース)
ガラスケースに守られて
対面販売で、お客さんとお店の方の間にあるのがガラスケース。パンがその中に入っているので、セルフ方式よりもパンが乾きにくいという利点がある。
焼きたてのパンは水分を含んでいるので、すぐに袋に入れて封をすると、水滴がついてベチョっとなる。それはパンから水分が出て行っているということ。焼いて時間が経ったパンも同じで、そのままにしておくとどんどん乾燥してくる。
ガラスケースはそんな乾燥からパンたちを守ってくれる心強い味方だ。そのような目線で写真を見ていると、パンがガラスケースに守られている感が伝わってくるだろう(私だけでないことを祈りたい)
昔は2段だった
「このショーケースは何回も改良されて今の形になったの。今はこうして3段でパンを並べているけど、昔は2段だったのよ」と3代目夫人の海野謹子さんは言う。
前回の投稿でも述べたが、昔はパンの種類が少なかったので、同じパンをたくさんつくっていたという。段が1段増えたのは、時代が進むにつれて、パンをつくる材料も豊かになり、パンの種類が多くなったことが関係している。
そう、時代の変化とともに木枠のショーケースも変化を遂げてきたのだ。
■天狗堂海野製パン所
住所:京都府京都市中京区壬生中川町9
電話:075-841-9883
定休日:日、祝