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デザインの単純化

2020年9月頃に執筆した記事に、加筆・修正を加えたものです。

デザインは、どうやって勉強すればいいのか。まずやるべきなのは、言葉の解像度を高めることだ。デザインという言葉は、抽象度が高くあらゆる分野で使われるため、そのままでは扱えない。

理解するには、まず分類することが重要だ。そこで、美の構成学という本が参考になる。タイトル通り「美しさを構成するものは何か」を要素分解し、体系的に示すことを試みた一冊である。

初心者がやりがちなのは、デザインを単純化して扱い、結果として「自分にはセンスが無いから無理だ」と諦めてしまうパターンだ。

配色の例が分かりやすい。配色の勉強をしたばかりの人が、カラースキームの基礎を使って「目立たせたい時は、反対色を使えば良い」と思って、色を選んだとする。あるいは、ネット上の記事でよく見る「センスがなくても、これを使えばデザインできる」という配色ツールを使ったとする。

しかし、格好良くならない。配色を単純化しすぎているからだ。先の例では、配色を純粋に「色と色の組み合わせ」という2つの変数でしか考慮していない。実際には、色そのものは無論だが、面積や質感、その他の要素との関係性など、沢山の変数の掛け算によって結果は決まる。さらに難しいことに、この掛け算には社会的な慣習まで含まれるので、なかなか大変である。

色そのものや、面積、質感などは、目や脳がどう感じるかという、いわば人間というハードウェアの性質の問題である。しかし、社会的な慣習、例えば国によってその色の持つ意味合いが変わる、といった外部要因も大きな影響を及ぼす。

このように、実際には多くの要素から成り立つものであっても、初心者向けの本では単純化して解説されるため壁が生まれてしまうのだ。では、初めから全ての要素を学べば良いのかというと、それは難しい。あまりにも要素が多すぎるからだ。結局のところ、学校の勉強のように教科書でひととおり公式を覚えて、それを当てはめて問題を解くという方法では無理がある。

だからこそ、実践が重要になる。初めは言語化などできなくても良いので、とにかく経験を積むことで、後から帰納法的に「こういうことだったのか?」と導き出すのが手っ取り早いだろう。もちろん、だからといって教科書や理論に意味はない、ということではない。教科書や理論はとても大事だ。先人の知恵を活かそう。

例えば、配色理論などまさにそうだろう。ただ闇雲に実践して、「この色の組み合わせは、とても相性が良いな」と何年もかけて気付いたとして、それは最初から体系的に学んでおけば良かったことではないか、という場合もある。

今回はデザインの、とりわけ配色を例にしたが、この話はおそらく他の全ての物事にあてはまる。物事を正しく習得するには、それを分解して、構成要素を正しく理解することが重要だ。最初から体系的に学べる場合もあれば、実践を重ねて帰納的に導き出すことで学べる場合もある。

初めから、複雑に捉える必要はない。しかし、もしその分野において専門性を持ちたいのであれば、徐々に深めていく必要があるし、深みが存在するのだと想像しなければならない。

あなたの幸運を全力で祈ります!