配色の理論から実践でぶつかる壁
配色の理論から実践には、壁が存在する。例えば、色相について本で読み、目立たせるために反対色を選ぶものの、いまいち決まらない。理論通りにデザインしているのに、どうしてうまくいかないのか。結論から言えば、本で解説される配色パターンが、実際にデザインする時の条件と異なっているからだ。具体的には、面積・レイアウト・素材の影響を加味しなければならない。
まず、面積について。入門書で解説される配色の調和法は、複数かつ同じ面積の色面がぴったり接していることが多い。そして、レイアウト。配色する色面が、綺麗に直線上に並ぶことはない。本の中のカラースキームは、直線上に美しく並べられている。実際にWebサイトやポスターをデザインする時、状況はもっと複雑である。最後に、質感について。同じ色を使ったとしても、金属なのか、木材なのか、レンガなのか。テクスチャの違いによっては、理論通りにはいかない。テクスチャの違いを活かして、本来ならば調和しない色を組み合わせて、絶妙な色使いを実現している作品すら存在する。
こうした理論と実践の壁について、どうすればスキルを磨けるのか。構成学の専門家の三井秀樹先生が、著書でそのヒントを示している。
明度差
面積比
アクセント
この3つを意識してトライアンドエラーを重ねることで、先の問題への対応力が強化される。特に明度差や面積比は、配色のディティールであり、品質を決める重要事項である。テクスチャの例で挙げたように、明度差や面積比、アクセントカラーの使い方をうまく応用できれば、通常ならば調和しない配色でも美しく昇華させることもできる。
これだけコンピュータが発達しても、まだまだ数学の解法のように、完全にデジタル化して正解を導き出せない。しかし理論と実践をバランスよく訓練すれば、必ず配色のスキルは向上する。
最近は、インターネット上で便利な配色ツールも多く出てきている。しかし、配色ツールで導き出したパターンは、目安にはなるが、その通りにすれば良い配色にはなるとは限らない。配色は、白・黒などの無彩色のバランスや明度差、色が用いられている面積、素材(テクスチャ)などによっても印象が変わる。反対に、理論的には適切に見えても、無彩色とのバランスや明度差なども考慮せず、何となく配色した結果、ダサい作品になることも多い。
人が「美しい」「綺麗だ」と感じる配色には、原理があるし、そのスキームも調べれば簡単に知れるだろう。配色ツールには、そうしたスキームが落とし込まれている点で有効だ。とはいえ、配色ツールは、あくまでコンパスくらいに思っておく方が良いだろう。
あとがき(2022年5月13日)
配色って難しいですよね。この記事を書いたのは7年前くらいのようですが、今でも余裕で難しいです。どちらかというと、こういう事を意識しないといけない、と自分に言い聞かせるために書いていたかもしれません。では、自分で実践できているかと問われれば、まだまだでしょう。
近年は業務システムのグロースに携わることが多く、最初から配色を作ることは無くなりましたが、デザインシステムを持つ現場も増えてきており、それらを最初から作っているデザイナーの方々には尊敬に堪えません。
あなたの幸運を全力で祈ります!