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デザインレビューを学ぶ

2018年4月頃に執筆した記事に、加筆・修正を加えたものです。

デザイナーは、批評にさらされることが多い職業である。アウトプットが視覚的で、かつ正解が文脈によって変化するからだ。悪意を持った言い方をすれば、誰にでも批判できてしまう。

クライアントや上司の、個人的な好みで否定される。話題が発散し、いつまで経っても意思決定できない。デザインの背景が理解されず、ただ「こうしろ」と指示を受ける。これらは、デザイナーであれば誰しもが経験することだろう。非常に挫折感が強く、時には打ちひしがれる。

先日「みんなで始めるデザイン批評」という本を読んだ。意思決定やファシリテーションに関する本は既に存在するが、デザインレビューに特化した本は珍しい。そして、上述したような状況を打破するヒントが書かれている。

デザインレビューの目的

改善につなげるべく、意思決定を行うため。突き詰めれば、顧客により良いサービスを提供するためである。

サービスは、生き物のようなものだ。取り巻く状況は目まぐるしく変化するため、デザイナーを含めて、開発者はその動きを観察しながら、素早くサービスを改善しなければらなない。

そのため、デザイナーはまず自身のアウトプットに対し、ターゲットにとって効果的かの批評をステークホルダーに求める。

フィードバックの3つの種類

しかし、デザインレビューの参加者が、必ずしも上記の観点でフィードバックを行うとは限らない。ここに、レビュワーとレビュイーのギャップが存在する。本の中では、デザインに対するフィードバックには、3つの種類があると述べられている。

反応型

その名の通り、批評ではなく「反応」している状態である。このフィードバックには、多くの場合「ターゲットにとって効果的かどうか」という観点は含まない。

その代わり「(ユーザーではなく)自分がどう思ったか」に焦点が当てられる。例えば、「自分はこういう色のほうが好きだな」といったフィードバックは反応型に当たる。

指示型

指示型のフィードバックは、デザインの背景に関係なく、指示を行うことで改善しようとする。

指示型のフィードバックの後に残るのは、ほとんどの場合、修正すべき項目のチェックリストになる。しかし、必ずしもデザインの背景まで理解して発言していないため、デザインがより良いものになるとは限らない。

批評型

批評型のフィードバックは、ターゲットを含めた背景を確認した上で、より効果的にするための提案を行う。

反応型や指示型のフィードバックとは異なり「ターゲットにとって効果的かどうか」を主眼に、デザインの意図を理解した上での発言となるため、デザインをブラッシュアップするの役立つ。

ファシリテーションを学ぶ

デザイナーに限らず、何かをアウトプットしてステークホルダーの合意を取り付けたことがある人なら、これまでに「反応型」「指示型」のフィードバックを受け取る機会はあっただろう。それらのフィードバックは、アウトプットを改善するために、あまり役に立つことはない。

そこで、「反応型」「指示型」のフィードバックを、積極的に「批評型」のフィードバックに変えていくためのファシリテーションを学ぶ必要がある。

デザイナーは「デザインの伝え方」に関しては、作り方と比較してそれほど多くを学んでない。確かに、プレゼンテーションの方法や、綺麗なスライド作りのスキルはあるだろう。しかし、前述のようなフィードバックへの対処方法を学ぶ機会は少ない。

本の中では、あらかじめ共通認識を作るための準備や、デザインレビューの進め方についても解説されており、参考にできた。

全体を通して、ファシリテーションなど、手法自体に新しいノウハウはない。しかし、デザイン批評という切り口で解説されている本書は、とても貴重な存在と言えそうだ。

あなたの幸運を全力で祈ります!