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なぜUbieはSlack Enterprise Grid移行を高速で進めたのか

こんにちは、Ubieコーポレートエンジニアのtamosanです。
UbieではコラボレーションハブとしてSlackを利用しているのですが、今回はそのEnterprise Grid移行を進めることになった背景と、どうやって高速で進めたかを以下キーワード踏まえてご紹介します。

  • 入社2ヶ月目メンバーがEnterprise Gridプランへアップグレード

  • 稟議開始から移行決定まで2時間20分

  • 移行準備から実行まで2週間

Ubieの事業と文化について

「冒頭から関係ない話するじゃない?」と思われるかもしれませんが、社内ITの整備に対する原動力と実行力に密接に絡むため、少しだけお付き合いください。

Ubieは「人々を適切な医療に案内する」がミッションの地域の医療と人をつなげる医療AIスタートアップ企業です。そのモチベーションは、創業者である阿部が研修医時代に痛感した病院の内側と外側の課題に対してソリューションを提供したい、と痛感したところから始まり、Ubie全員がそのミッションを「最速」で「全世界」に広めるべく、事業を推進しています。(阿部のインタビューはこちらをご覧ください)

Ubieは事業戦略や人材特性に合わせて組織を分けており、私はそのうち0 -> 10 のサービス価値検証を担う Ubie Discoveryという組織に所属しています。Ubie Discoveryでは、大胆かつ高速な検証が重要とされており、そのValueの1つに100の失敗よりも1の実行を大事にするLaunch&Launchという考え方があります。

各組織の特性(会社紹介資料 より抜粋)

なぜSlack Enterprise Grid?

「最速で」「全世界の人々に」適切な医療へ案内するため、その事業推進を支える社内IT環境の整備も急ピッチで進める必要があります。その要件として、当時社内を調べたところ以下があることがわかりました。

・各組織毎での情報「透明性」が、高速に意思決定できるUbieらしさを体現
・医療系スタートアップであり、「セキュア」に情報を取り扱うことが重要
・Slackヘビーユーザー、各SaaS連携も活発であり「生産性向上」に必須

入社後の自分調べ

透明性

Ubieにおける「情報の透明性が高い状態」とは、情報が然るべき方法で「公開・整理・配信」されている状態をさしており、公開だけでは不十分です。

それを徹底している理由は、1. 業務効率を上げる2. 意思決定の精度を高める3. 政治を排除するといった要素があります。(弊社における情報透明性の考え方については 社内向け「透明ガイド」を公開します を参照)

私が入社した時点で、既に業務はパブリックチャンネルで話す文化であり、プライベートは採用系など秘匿情報のみとなるよう徹底されていました。その結果、パブリック投稿割合(※)は約8割と高水準でした。さらにチャンネル命名規則によりその情報分類が整理されています。
(※) https://[ワークスペース名].slack.com/stats でご自身のワークスペースのパブリック・プライベートの利用率を確認できます

ただしUbieはその状態では満足せず、カルチャーの異なる組織毎に社員限定の場を設けて、よりパブリックチャンネルを増やして情報透明性を高めたいニーズがありました。

パブリック投稿割合は約8割!

セキュア

UbieではSlackでは事業の方針決定、推進をする上で重要な会話が記録されており、それらが安全に取り扱える必要があります。また当然ながらSlack上で個人情報を含む機密情報は扱わない前提なのですが、リスク管理の観点から、以下のような要件を満たす必要がありました。

・アカウント管理により適切なメンバーのみ利用できている状態を担保
・監査ログや会話ログを取得できるようにし、有事の際の出口対策を整備
・iOS、AndroidのMDM(デバイス管理)をして、情報漏洩事故を未然防止
・ワークスペースの整理やマルチワークスペースチャンネルの利用により、チャンネルの公開範囲の制御と可視化

社内のDocBaseより

生産性向上

社員が自ら生産性を向上させるべく、SaaS連携や便利Botが多く存在しています。

例えば所定の質問に回答するBot「tellme」(専門用語を教えてくれるSlack Botを作った を参照)や、Form回答内容から種別毎にチャンネル通知を振り分けるツール、その他Slackでの各SaaS操作を可能にするアプリ導入や開発が活発に行われています。

登録された内容に従って回答を返してくれる

またSlackにより、活発なコミュニケーション環境が整備されています。
社員の平均月間投稿数は897件、直近30日以内に投稿のあったチャンネル数は748と、そのコミュニケーション数はかなりのボリュームであることが伺えます。(2021年12月実績)

Slackの利用プラン検討

上述の背景を踏まえると、当時利用していたProプランでは整備に限界があることがわかりました。そこで以下の機能を備えるEnterprise Gridへ移行する方針を固めたのです。

情報の透明化
・ワークスペース分離が可能、正社員内での情報パブリック化が促進

セキュリティ
・e-Discovery に対応。会話の完全ログと監査ログが取得できる
・MDM ( Mobile Device Management ) 対応
・リモートセッション切断が可能

生産性向上
・Enterprise Grid特有のAPIが存在し、有効利用できる可能性あり

どうやって移行した?

移行しようと固めたら、早い早い。Ubie Discoveryらしさを体現するセキュリティエンジニアとSREメンバーらの支援&プレッシャーにより、各工程が劇的に短縮されました。前職経験から大体3、 4ヶ月くらいかかるかなと思っていたら、実質2週間で移行することに。

入社してから移行までのスケジュール実績

稟議承認

申請から承認まで2時間20分。代表の久保をはじめ、支援してくれるメンバー陣も社内IT環境の整備について重要性を理解していることから、短時間でありながら濃密に議論できました。特にいまUbieが求めている社内IT環境についてEnterprise Gridがどう寄与するか、ユーザビリティや安全性を底上げする機能の詳細まで深く突っ込みながらSlack上でスピーディに議論しています。

結論が出たら、ひたすら後押しする代表の久保

準備スタートから移行まで

正味2週間で実施。まさにLaunch&Launch。以下のように安全さや導線の確保など最低限の品質保証をしながらも、一部ユーザーに不便をかけることを過剰に恐れずにスピード最優先で実行しました。

・Google Workspaceを新たに契約してIdP連携周りとOrG設定を検証、プロビジョニングの課題を事前に検知し対応
・主な影響と事前依頼を最優先で説明(全体Mtg説明 × 2、Slack全体周知 × 2)、主な影響から派生しうる業務影響を社内ユーザーから事前に聞き予防
・Google chatに作業連絡とトラブル受付窓口を開設、困った時のトラブルシュート環境を整備
・導線を確保するため移行後のログイン、操作方法などを迷わず操作できるようガイド化

Ubie株式会社_登壇資料より
組織構造に応じたワークスペース設計(各組織の関係は 会社紹介資料 を参照)

移行

当日作業イベントが盛りだくさんであり、トラブルも多々ありましたが、有識者メンバーがヘルプしてくれたことでなんとか乗り切ることができました。

前日までの作業
・マルチワークスペース化対象のチャンネル洗い出し
・ワークスペース移動の対象ユーザー洗い出し
・IdP側のSAML設定
・ワークスペース移行のスケジュール調整

当日作業
・Pro -> Enterprise Grid移行(現Salesforce社と連携)
・チャンネルのマルチワークスペース化(約200件)
・パートナーのワークスペース移動(75ユーザー)

各種トラブル
・移行日時の認識相違があった -> 社内に再周知
・表示名が変えられない -> OrG設定を変更
・ゲストも想定外にSAML連携 -> OrG設定を変更
・ワークスペース移動したユーザが一部チャンネルからleave -> 考慮漏れあり、都度手動で対応
etc...

振り返ってみて

Ubieのカルチャー・組織だからこそ、このスピード感で移行できたのは間違いありません。迅速な整備 >>> 一時的な社内混乱リスク と判断できるカルチャーが醸成されており、Launch&Launchでやりきりました。

特に要素として大きかったのが、IT基盤整備の重要性を認識し、かつセキュリティや基盤の知見に明るいメンバーが勢揃いだったこと、また関係者全員が当事者意識を持って移行をサポートしてくれたことがあります。

結果、早期にEnterprise Gridへ移行するメリットを享受することができました。
チャンネルのマルチワークスペース化が可視化されたことで、心理的安全が向上したと社内から評価されています。また移行対象が増えて移行作業コストとリスクが上昇する前に実施できました。さらに副産物として、ユーザー種別を見直したことで移行に伴いゲスト管理の方法も整備できました。

このスピード感はUbieならでは!事業推進のサポートをこのスピード感でやれる楽しみを味わいたい方は、ぜひ一緒に働きましょう。カジュアル面談もぜひお待ちしています!

Special thanks

Slack Enterprise Gridへの移行は、以下の方々に多大な協力をいただきました。感謝!

@sakajunquality as SRE
@itkq as SRE
@cestquigucci as 情報セキュリティ
@mizutani as セキュリティエンジニア

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