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時間の輪郭がぼやけるとき、さっきまでのあれは本当にあったのだろうかと確信が持てなくなる。

夜明け前の散歩ジョギングから帰ってきて、部屋でストレッチをしリラックスしているとき、ふと、さっきまで走っていた現実が幻想のように思えた。

昼間の暑さに慣れてきた体は、逆に朝の冷え込みに対応できなくなっている。数週間前は朝の冷んやりとした空気が心地よかったのに、ここ数日は寒いと感じ体を早く温めようと走るスピードを上げる。

スピードを上げると多少きついが、体力がついてきたのか数分間はそのスピードをキープし、そしてスローペースへと戻す。
寒さとキツさのストレスを味わいながら、いつものコースをいつものように走る。

部屋に戻りストレッチをする。ストレッチをしながらさっきジョギング中に見た風景を思い出していた。薄暗い空にはまだいくつもの星が瞬き、朝の澄んだ空気のせいか山の稜線はくっきりとしていて、空とのコントラストがしっかりとしていた。

確かにさっきオレは寒さを感じながら外を走り、美しい風景を見ていたし、それを思い出すこともできる。しかし、それはもう過ぎ去り記憶の中にしかない。現実味のない、つかみどころのない幻想のように感じる。
この文章を書いているいまは、ストレッチをしながら感じたその幻想のような感覚を、幻想のように思い出しながら言葉にしている。

過ぎ去った時間はどこにいったのだろうか。確かにそこにあったはずのあの体験は記憶の中に消え、この瞬間にあるのはこの瞬間だけ。この瞬間も一瞬で過去になり、手の届かない世界の中に折り畳まれていく。

オレはいま、確かに存在しているけど、ほんの一瞬前のオレが存在していたかは定かではない。この文章も果たしてオレが書いたといっていいのだろうか。

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