活動記録009『神』
久々の更新である。更新していなかったのには大きな理由がある。それは、面倒臭くなってしまったからである。兆候もなく突然に。しかも猛烈に。ゲリラ豪雨のごとく。もしくはゲリのごとく。いつか来るだろうと思ってはいたが、案外早かった。また来る日まで、再スタートである。
今回は、以前ここにも記した『いわて花巻ー神戸便PR隊』に関する活動である。昨年3月に就航したいわて花巻ー神戸便。今年の3月に1周年記念イベントの一環でPR隊のクルーに任命していただいた。キャプテンは天津木村さんである。そして今回、『神戸空港開港16周年記念イベント』のステージイベントで神戸市民の皆様に岩手をPRするというお仕事を頂戴したのである。
フジドリームエアラインズ(FDA)で1時間半。大袈裟ではなく、あっという間に神戸空港に到着してしまった。今回はお仕事ということで航空券も手配していただいたものを使わせてもらったのだが、早く予約したり、時期によっては1万円を切る価格で神戸までの航空券を購入できるそうだ。
FDAの機体カラーは1機ごとに異なる。今回搭乗したのは9号機のゴールド。2016年に岩手県がネーミングライツ契約を締結し、『黄金の國、いわて。』号と命名された。
僕にとっては久々の神戸である。小学生の頃、父親と山形から夜行列車で甲子園を見に行った時以来である。PR隊に任命していただいたにも関わらず、恥ずかしながら初の神戸空港なのだ。
着陸直前左側の窓から神戸の街並みが見えたわけだが、この時点でハイカラさがビンビンに伝わってくる。「俺たちにだってコメリがあるし!」と心の中で争ってみたものの、残念ながら悔しいくらいに心が躍ってしまう。
そして、神戸空港から神戸市内の繁華街までポートライナーでこれまたすぐなのである。到着口からポートライナーの駅に向かう道中、神戸一発目の飲食店が目の前に飛び込んできた。
『たもん庵』。驚愕である。しかも今年改名したばかりのひらがな表記の『たもん』である。こんなもん、心を鷲掴みにされるに決まっているではないか。そういえば、缶コーヒーのUCCの裏に記載されている販売元の住所に「神戸市中央区多聞通…」と書かれていたのを思い出した。四半世紀ぶりに訪れた場所にも関わらず一気にシンパシーを感じてしまったのである。
とりあえず、初日は移動のみというスケジュールだったので、早速ホテルにチェックインを済ませ、キャプテンと繁華街へ食事に向かった。
颯爽と三宮駅構内を進むキャプテン。さすが地元の人間である。昨年、岩手への移住とほぼ同じタイミングで就航した神戸便。兵庫県姫路市出身であるキャプテンのために就航したのではないかと思えるほどの出来すぎたタイミングである。
僕は頼りになるキャプテンに神戸のことをあれこれ尋ねてみた。
「いつもこんなに混んでるんですか?」
「わからへん」
「ここからポートタワーって近いんですか?」
「わからへん」
「ここどこですか?」
「わからへん」
明らかに様子がおかしい。そして、キャプテンはおもむろに口を開いた。
「俺、神戸のこと全然知らんねん」
聞くところによると、キャプテンの出身地である姫路市は神戸市と同じ兵庫県でも全くもって格が違うのだそうだ。姫路から神戸に訪れるときは、前日に散髪屋で身だしなみを整え、一張羅を身にまとい、親族一同の激励を受け、「俺たちには姫路城があるんだ」を合言葉に、ガクガクと膝を震えさせながら向かうのだと言う。故に、神戸のことは全く知らないのだそうだ。いつか、そんな姫路にも訪れてみたいものだ。
夜は関西らしく粉もんを頂いた。このマヨネーズたっぷりの粉もんを出汁につけて食すのだ。しかもお好みでソースを足してくださいとのこと。東北では考えられない食し方だが、これが絶品だったのだ。やはり、まだ見ぬ美味いものはあるものである。また絶対に食べたい逸品だった。
翌朝、散歩に出た。僕は泊まりのお仕事が入ると、大抵散歩に出る。この日は5時過ぎに出た。おじいさん並に早起きなのである。軽く30分ほどのつもりで出たのだが、どうにも散歩が止まらない。
念願の『多聞通』。そしてそんな多聞通にあった『ヘアーサロン タモン』。地元に愛された散髪屋であって欲しい。さらに、多聞通にある『湊川神社』。楠木正成公を祀っている神社である。改めて楠木正成公を調べてみると、幼名が「多聞丸」であった。おそらくそこから多聞通となったのではないかと勝手に推測する。朝6時に開門ということで周辺をプラついて時間を潰してから参拝させていただいた。綺麗に管理された素晴らしい神社であり、開門と同時に参拝客がパラパラと訪れている辺りに地元で愛された神社であることがわかった。
そして、神戸といえばコレでしょ!ポートタワー!港町神戸のシンボルであるこの白い筒状のタワー!
…まさかの工事中だった。また来いよってことなのだろう。
とにかく素敵な街であり、散歩が止まらなかった。2時間弱も歩いてしまった。イニエスタがいたとしても気づかなかったであろうほどに、日本離れした港町である。まさにハイカラ。珍しく自撮りしてみたのだが、どことなくハイカラな顔になってしまった。
初日は神戸空港開港16周年イベントで、翌日はラジオ関西『笑福亭鉄瓶のまんてんラジオ』、神戸新聞、デイリースポーツで、岩手県、いわて花巻ー神戸便をPRさせていただいた。PRしようと思うと、改めて岩手県の魅力を自分で再確認できることに気付いた。そして神戸に間違いなく勝っているものは何か。圧倒的に自然の豊さである。
普段、他県への移動となると新幹線を利用することがほとんどであった。僕の場合、新幹線の発着は盛岡駅である。東京にしろ仙台にしろ、盛岡駅周辺であれば、そこまでのギャップはなかった。東京から盛岡に着いても夏と秋くらいの差でしかなかった。
しかし、空港となると話は違う。神戸空港周りの景色といわて花巻空港周りの景色とのギャップはまさに夏と冬。タンクトップとダウンコートなのだ。だが、そこが良いと僕は思う。
違うから魅力を感じるのだ。だから散歩が止まらなかったのだ。そう考えれば、おそらく神戸の人が岩手に来ればおそらく散歩が止まらなくなるはずである。「えっ、ちょっと待って!ちょっと待って!めっちゃ緑やん!」とか言いながら。
正直、旅行先の選択肢として神戸は上位には考えていなかった。だが、移動時間、価格、街の魅力を考慮すれば、間違いなくおすすめしたい旅行先だと思う。そして、神戸の方々にもぜひ岩手を旅行先の選択肢の一つに入れていただきたい。岩手県と兵庫県は共通点が意外と多い。ラグビーV7(新日鉄釜石と神戸製鋼)、日本三大杜氏(南部杜氏と丹波杜氏)、そして被災経験などなど。
岩手の人にも、兵庫の人にも、是非いわて花巻ー神戸便を使って素敵な思い出を作っていただきたいものである。
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