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岩手蕎麦紀行 〜そば処 久保田〜

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 今回、蕎麦を嗜みに訪れたお店は蕎麦激戦区雫石町の『そば処 久保田』。
 岩手山麓にポツンと佇む人気店。当日は快晴で、岩手山が厳然とその姿を現し、まさに神々しいという言葉がぴたりと当てはまるほどに神秘的かつ圧倒的であった。そう。写真を撮るのを忘れるほどに。我、糞垂れなり。何をやっているのだ。写真を撮れ。岩手山を背景にお店の写真を撮れ。何ぼーっとしているのだ。この、糞垂れ。
 写真に収めることは忘れてしまったのだが、この蕎麦激戦区雫石町の大きな魅力はこの岩手山の絶景が特大ホームラン級の薬味として効いているところである。まさにプライスレス。唯一無二の薬味である。
 店内に入ると、店主と思しき職人然とした頑固面の男性が見えた。その時点で勝ちが確定したと言って良いだろう。十分である。十分であるにも関わらずさらに畳み掛けてくる。薪ストーブに薄く流れるジャズ、大きな窓から岩手山がドーン。完璧である。もはや、何を食っても美味いに決まっている。店主の夢がそのまま具現化したのだろう。小細工なし。「俺は、こう!」という声が聞こえてくるようだ。昔、長州力は若手レスラーに「客に見てもらうんじゃない。見せつけるんだ」と指導していたそうだ。まさか長州イズムの継承をここで見られるとは。

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 注文したのはもり蕎麦とミニ天丼のセット。

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 まずはひと啜り。グッッグッッグッッ!なんたる強きコシ。まさに「これでも喰らえ!」と言わんばかりのリキラリアット的なコシ!そして、哀愁の漂いのように蕎麦の香りが後追いして来る。無骨でありながら一本筋の通った強力なメッセージ。店主の人となり、つまりは人生、生き様を物語る蕎麦である。

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 そして、天丼。ここでも「天ぷらは、こう!」という店主の思いが具現化したような逸品である。おそらく店主は元々熱狂的な蕎麦ファンであったに違いない。ファンであったからこそ、ファンの求めているものを知っている。「こうじゃなきゃだめだろ」という店主の声が聞こえてきそうだ。ミニとは言え、どんぶりからはみ出すほどの大きな海老天。海老の甘味とプリっと感を最大限に引き出す熱々の薄い衣。無骨でありながらも繊細。お見事である。

 今回は、まさに一人の男の生き様を食らわせて頂きました。ご馳走様でした。

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