輪郭がボヤッとした怖い話 : 「友達が彼氏と恐山に行った時の話なんだけどさ」ほか
髙橋多聞です。
突然ですが怖い話をします。
昔、誰かから聞いたり自分が体験したりした話です。
すべて実話なのですが、如何せん昔の話なので輪郭がボヤッとしてます。
そのボヤッと具合をお楽しみ頂ければ幸いです。
・友達が彼氏と恐山に行った時の話なんだけどさ
今から20年ほど前、母親と母親の職場の同僚と僕とで旅行に行ったんですが、その道中に車内で聞いた話です。
たしか、母親の同僚が「友達が彼氏と恐山に行った時の話なんだけどさ」と話し始めたように記憶しています。
以下、その何となく残っている記憶を雰囲気で再現します。
「友達が彼氏と恐山に行った時の話なんだけどさ、いや、元々は青森に旅行に行ったらしいのね?
レンタカー借りて県内回ってたらしいんだけど、彼氏が
「恐山行こうよ」
って言い出したらしいの。
もう暗くなり始めてたし、友達は嫌がったらしいんだけど、彼氏がどうしてもって言って聞かなかったんだって。
でも運転してたのは彼氏だったし、仕方ないから「勝手にしろ」って感じで助手席でふてくされてたんだって。
そしたらわりとすぐ恐山に着いちゃって、「もうちょっと行ってみようぜ」ってそのまま山道を登っていったらしいの。
友達は機嫌も悪かったから何も言わずにずっと外の景色見てたらしいんだけど、「何かおかしいな」って思ったんだって。
その道に沿う感じで、ずーっとガードレールが立ってたらしいんだけど、ガードレールに違和感があったらしいの。
「何だろう」って思ってしばらく見てたんだけど、違和感の正体に気づいてゾッとしたんだって……。
それ、ガードレールじゃなくて、
道路沿いにズラッと並んだ、死装束を着た人の後ろ姿だったんだって……」
・じゃあ、あれは誰なんだ?
これも20年程前の話です。
僕が小学4年生?くらいの頃、町内会で「肝試し大会」がありました。
夜間、近所の大きな公園に集まり、肝試しをするというシンプルなイベントです。
その公園は妙な作りをしていて、「高校に隣接していてテニスコートなどの運動スペースのある北側」と、「遊具や小山があり小学生の遊び場になっている南側」とに分かれていました。
そしてその北側と南側のエリアの間には何故か幅50メートル程の鬱蒼とした森がありました。
森の中には木製の遊歩道があり、秋には某「食べると身体の大きくなるキノコ」にそっくりなキノコが生えていたりするくらいのガチの森でした。
しかも毎年春には学校で「不審者のお知らせ」のプリントが配られ、「みんなもあの公園で遊ぶときは気を付けてね」と担任の先生に注意換気されるくらいのガチの森でした。
「肝試し大会」は南側からスタートして、その森を抜けて北側に行く、と言う内容でした。
これが町内会主宰だったのだから、めちゃくちゃ自由な時代でしたね。
その年は僕も「肝試し大会」に参加したのですが、一人で参加させるのは不安だったようで、祖父が付いてきました。
ゴリゴリの九州男児だった祖父は、普段はそういった浮わついたイベントにはまず参加しないのですが、その日は何故か祖父が付いてきました。
公園につくと、すでにクラスメイトが数人到着していました。
キャッキャと騒ぐ者や、花火をする者、中には家からゴツいアサルトライフルのガスガンを持ってきて「これで幽霊を撃ち殺してやるぜ!」と言う裕福な子供がいたり、「公式に夜遊びをする」という背徳感にみな少なからず興奮している様子でした。
他にも主催者チックな「みまつやのおやじ」風のおじさんや、噂話に花を咲かせる二人組の女子中学生など、様々な参加者がおり、さながらパニック系ホラー映画の冒頭の様相を呈していました。
どうしてそうなったかは覚えていないのですが、僕は怖がらせる側に回り、「遊歩道沿いの茂みに隠れながら歩いてくる人に火の着いた煙玉を投げる」という今自分がそこにいたら確実にひっぱたいてやめさせるような役を担当していました。
ちなみに祖父も最初のうちは「俺はそんなこと、やらん!」と言っていたのですが、肝試しが始まるとすぐに茂みに入っていって怖がらせる役をノリノリで担当していました。
肝試し自体は一時間程で、特に事件も盛り上がりもなくサラッと終わりました。
僕を含めた参加者は北側のエリアに集まり、「みまつやのおやじ」風のおじさんの締めの挨拶を聞いていました。
しかし、どこを見ても祖父の姿が見当たらないのです。
実は祖父はゴリゴリの九州男児であると同時に、少しおバカなじいさんでもありました。
「もしかしてまだ隠れているんじゃ……?」
嫌な予感が脳裏を過りました。
直後、女子中学生が「えっ?あそこに誰かいない?」と森の中を指差しました。
「え?マジ?ウソ!」と言いながらもう一人の女子中学生が手に持った懐中時計で茂みを照らします。
嫌な予感は的中しました。
20メートルほど離れた茂みの中から、頭髪の薄いじいさんが頭を出してこちらの方を見ているのです。
懐中電灯に照らされたじいさんはキョトンとした顔でこちらを見ていました。
キャーキャー言う女子中学生を横目で見ながら、僕はめちゃくちゃ恥ずかしくて、頭を抱えていました。
「頼むからもうちょっとそのままで居てくれ……こっちに来ないでくれ……頼む……」
心の中でそう念じていると、背後から「いや~スッキリした!!!!!」と言う声が聞こえてきました。
振り替えると、そこにはトイレからいかにもスッキリした顔をした祖父が清々しく出てきました。
「すまんすまん!ずっ~~と我慢してたんだ!!!!」
祖父はそう言いながら僕の方に向かって歩いてきました。
……じゃあ、あれは誰なんだ?
・わたしはゴリラの霊を見た
この話も僕が小学生の時の話です。
さっきの話より前の話です。
僕の家系は霊感一族らしく、父は若い頃に高名な霊能力者の弟子をしていたこともあるそうです。
(ホントか?)
そんなわけなのか何なのか、僕も20代前半までは霊の存在を感じたり、時には見たりすることもごく稀にありました。
ただ、僕自信は自分の霊感を一切信じていないので、自分の体験した話はすべて「人を怖がらせるための面白エピソード」としか思っていません。それはそれで歪んでいますね。
僕がそんな風に考えるようになったきっかけの出来事をお話ししましょう。
1996年の話です。
前年に両親が離婚し、僕は母に付いて祖母の家の近くに引っ越しをしました。
そこは当時新築の、にもかかわらず、何となく気味の悪い雰囲気のあるアパートでした。
僕は一人部屋を与えられ、その年から自立のため、母とは別々に寝る事になりました。
当時めちゃくちゃ怖がりだった僕はいつも母に「扉閉めないでね」「僕が寝るまで居間でテレビ見ててね」とお願いしていました。うっとうしいな。
そんなある日の事です。
夜中に目が覚めてしまいました。
「最悪だ」と思いました。だって僕はめちゃくちゃ怖がりだから。
母親も寝てしまったようで部屋は静まり返っていました。
しかも下腹部には違和感が。めちゃくちゃオシッコがしたかったのです。
「完全に詰んだ」と思いました。
そしてすぐに、僕はさらなる違和感に気づいたのです。
目は閉じているはずなのに、めちゃくちゃ明るいぞ。
「もしかしたら意外ともう朝なのかもしれない」
僕は一縷の望みをかけて目を開けることにしました。
恐る恐る目を開けた僕は、我が目を疑いました。
僕の足元の方向から、ボヤッとしたオレンジ色の光が伸びていたのです。
「ついに心霊体験か!!!!ついに来てしまったか!!!!この日が!!!!」
僕は恐怖に震えました。
しかも身体はピクリとも動かない。
金縛りです。
人生初の「不思議体験コンビネーション」にすっかり動揺した僕は、見なきゃいいのに発光体の光源をちらりと見てしまったのです。
「うわ~~~!!!!怖いのになんで見るんだ~~~~~!!!!」と思いながら視線を向けたその先には……
ゴリラの生首が浮かんでいました。
ゴリラはオレンジ色のネオン光を発しながら僕の方をじっと見ていました。
「ゴリラっぽい人」とかではなく「マジのゴリラ」でした。黒くて、毛むくじゃらで、いかつい、皆さんが今想像している"それ"です。そう、それ。
それが僕の目の前でプカプカと浮遊しているのです。
絵文字で再現するとこんな感じです。
✨🦍✨
👣👦 < ゴリラじゃん
それを見た僕は、恐怖よりも遥かに勝る強い疑問を感じ、気づけばニヤニヤと笑っていました。
それ以来僕は自分の霊感を信じなくなりました。
…………
これは完全に後日談なのですが、ちょうど1996年に僕の住む札幌市にある円山動物園で、ローランドゴリラの『メリー』が亡くなっているそうです。
急に信憑性が出てきたなこの話。
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