【『トムとジェリー』全話解説】#3『The Night Before Christmas』は『トムとジェリー』という作品の原点だった。
こんにちは。
髙橋多聞です。
シリーズ、「『トムとジェリー』全話解説を試みる。」
今回は1941年12月6日公開の作品、
『The Night Before Christmas』です。
(邦題:メリー・クリスマス)
前回の『The Midnight Snack』から5ヵ月後の作品で、クリスマスシーズンに合わせて制作されたようです。
監督はおなじみハンナ=バーベラコンビ、製作はフレッド・クインビーです。
しかしなぜかクレジットにはハンナ=バーベラの名前しかありません。
まだこの辺はフワフワしてる感じですかね。
原題は1823年にアメリカの新聞で発表された詩『A Visit from St. Nicholas』の別名、『The Night Before Christmas』から取られているものと思われます。
この詩は、現在のクリスマスとサンタクロースのイメージに大きな影響を与えた詩として知られており、アメリカでは200年たって今でもクリスマスの定番作品として愛されています。
ちなみにSt. Nicholas、すなわち聖二コラオスには「貧しさのあまり身売りしなければならなくなった三人の娘の家に窓から金貨を投げ入れ、その金貨が靴下にイン。三人の娘は身売りをせずに済んだ」という伝承があり、それがクリスマスにプレゼントを配る優しいサンタのおじさんというキャラクター像の元となったそうです。なんか、意外と生々しい話ですね。
ちなみに別説では「子供を誘拐&殺害し、その肉を売っていた鬼畜肉屋に赴き、7年間塩漬けにされていた7人の子供を復活させ助けた」という「フリッツ・ハールマン事件」か『八仙飯店之人肉饅頭』みたいな話が由来しているという説もあるそうです。エグい。
ちなみに日本でも根強い人気のあるアニメ、『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』のタイトルもこの詩のパロディになっています。
日本では元ネタよりもこっちの方が有名かも。
本作が製作された1941年は和暦だと昭和16年。
まだまだ世界は第二次世界大戦の真っただ中。
そして前回との間に日米関係は決定的に悪化し、この作品が公開された2日後の12月8日、日本軍による真珠湾攻撃が行われ太平洋戦争が勃発します。クリスマスシーズンの大事件。当時のアメリカはどんなムードだったんでしょうかね。
さて、いつも前置きが長すぎる傾向にあるので、このあたりで本題へと行きましょう。
いきなりクリスマスムード全開の赤&緑です。
初代ポケモンの話じゃないですよ。
3話目にしてとうとう「TOM and JERRY」のタイトルが入りました。
ここから「シリーズもの」という意識で制作されていたようですね。地味にジェリーの名前はこれが初登場かも。
バックには『ひいらぎかざろう』の歌唱が入っています。
この個人的にはこの曲を聴くと『Batman:The Animated Series』の第2話、『Christmas with the Joker』を思い出すんですが、このエピソード、クリスマスの定番作品として本当に素晴らしいので観たことのない人は観てほしい。たぶんTSUTAYAにあります。
ちなみにこのエピソードの冒頭でジョーカーが歌う『ジングルベル』の替え歌、
“Jingle bells, Batman smells…”ってやつは『The Simpsons』でバート・シンプソンズが同じ歌詞を歌っているので、アメリカでは割とポピュラーな話なのかも。
いかんいかん。いきなり脱線がひどい。
戻ります。
タイトルから本編へ。
よく見ると降っている雪が実写?の合成です。
After Effectsとか、そういうものが無い時代の工夫は今見ると逆に新鮮で面白いです。
さて、今回の舞台のこの家……
たぶん今までの家と違うよね?
形は似ている気はするものの、どうなんでしょう。
この話はパラレルワールドの話なのか???
やっぱり内装も違うや。この5ヵ月間でリフォームでもしたんでしょうか。
個人的には暖炉の前の靴下が気になって仕方がありません。火事になるよ?
靴下が3本という中途半端な数なのは、聖二コラオスの伝承に由来するのかなあ。
ジェリー登場。目が死んでいる。
ここまでの3話、すべてジェリーの登場から始まるという共通点がありますね。
いつも思うんですがこの穴はジェリーが自分で開けているんですかね?
前歯で削ったような跡があるので多分そうなんでしょうね。すげー大変そう。
そういえばジェリーってネズミのキャラクターのくせに、前歯が特徴的じゃないですよね。
あ……あの人もそうだった……。
ジェリーはネズミ捕りの仕組みを瞬時に理解しています。ところで、この趣味の悪いネズミ捕りは誰が用意したんだろうか。
ネズミ捕りには引っ掛かりませんが、オーナメントに映る自分の顔にはビビってます。
いや、顔どうなってんの。
キャンディーの赤い部分だけをなめとるジェリー。
ネズミが舐めたものだけは絶対に口にしたくありません。
人形が倒れてくる。
「ママ!」と「パパ!」の中間の言葉を発しながら倒れる人形。
子供のころ怖かったな~。
次はぬいぐるみのライオンが登場。
ジェリー、テンションがおかしくなってライオンの口に自分の頭を入れてます。
一昔前のバカッターみたいなノリですね。
ライオンの腹でポインポインしていると、その勢いで見慣れた背中へ。
ずっとクリスマスカラーばかり見ていたので、このくすんだ色になんだか安心感を覚えます。
トムの背中でひとしきり跳ねた後、大爆笑。
なんかクスリでもやってます?
ここの笑い声も一話と同様、何かの楽器です。しかも和音になっています。ベース音のチェロの音色から予想するに、おそらくバイオリンでしょう。
トムがブチ切れ、追いかけっこスタートです。そりゃそうだ。
ジェリーが逃げ込んだ先には……
あれ?
アンパンマンじゃん!!???!!!
アンパンマンはクルクル回るだけで何もしません。
どうやら他人のそら似の様です。
でた大砲。
さりげなく戦争ムードを放り込んできます。
そしてジェリーが逃げた先では……
あれ?
ピカチュウじゃん!!???!!!
トムに10まんボルトを食らわせてます。いや、ピカチュウじゃん。
このシーン、画面が激しく点滅するので部屋を明るくして離れてみましょう。
やっぱりピカチュウじゃん。
そして爆発から自然にシーンチェンジ。
巧い!!全く違和感なく次のカットにつなげています。
あとこのシーンの遠近感が絶妙です。静止画じゃ伝わらないけど。
ずらーッと並んだイギリス近衛兵風の人形。
これを戦争に結びつけて語るといよいよ陰謀論者みたいになるのでやめます。
悠然として近衛兵の前を歩くトム。首なげー。
見つかりました。クラスに一人はこういう顔の女子いませんでした?
逃げた先にはなんと線路が。
プラレールで遊んでいた幼少期を思い出します。めっちゃ住みたいわこの家。
トムとジェリーで全話共通して言えることなんですが、この家って間取りどうなってるんでしょうね?誰か分析して描いてくれねえかな。
ジェリーはおもちゃの機関車に乗って逃げていきます。
煽り顔半端ないスね。
お次はグローブですよ。プレゼントの幅が広すぎます。この家の子供、何なの!?
グローブのドルゲ魔人と化したジェリーはトムを打ちのめします。
トムも負けじとグローブを装着して追いかけますが、結局負けちまいます。
なんやかんやあってとうとう追い詰められたジェリー。突然花を持って歩み寄ろうとします。
しばしトムの顔芸と、うつろう男心をお楽しみください。
ねじれてるよ。
ケツを蹴られました。
ここ2年間、ケツをいたぶられ続けています。トムのケツはもうボロボロです。
この後、ジェリーが逃げた先はなんと屋外。あまりに無謀。
トムはジェリーを締め出してしまいます。
ようやく落ち着いて寝られるトム。
そういえば寝起きだったもんね。ちょっとかわいそうです。
しかしここまで3話見て思いましたが、トムとジェリー、この時点ではわりとマジで仲悪そうです。
ちょっと「仲良くケンカしな」というレベルではないですね。
寝ようとするトムですがジェリーのことが気になって仕方ありません。
仲が悪いとはいえ、やっぱり死なせてしまうのは後味が悪いんでしょうね。
外ではジェリーがモゾモゾと動き回っています。
それ、どこがどうなってんの!?
自責の念に耐え切れず、バリケードを撤去するトム。
やめておけ!!あとで後悔するぞ!!!
しかしなかなか入ってこないジェリー。
トムは外の様子を見て仰天します。
なんと、ジェリーがガリガリ君になっていました。
雪を払うと完全に凍り付いたジェリーが。こりゃ駄目だ。死んでるわ。
ガリガリ君の姉妹品のシャリシャリ君の容器、こんな感じでしたよね。
シャリシャリ君を暖炉であぶるトム。
ジェリーの持ち方にトムの思いやりのなさがにじみ出ています。
無事解凍。
これはいわゆる小動物の疑似冬眠状態ってやつですね。
昔、うちのハムスターが疑似冬眠しかけてめちゃくちゃビビったのを思い出します。
(死んだかと思った)
よっぽどほっとしたのか、トムはジェリーにキャンディーを渡します。
さっきまで死にかけていたネズミに砂糖の固まりを渡すとは。
やっていることは烈海王と全く一緒です。
安心しきったトムはジャンキーのような顔でミルクを飲もうとします。
お前、それで許されたと思うなよな。
それを止めるジェリー。
なんとミルクの中にはネズミ捕りが。
いつ仕込んだんでしょう???
あっっっ
この時か?
なるほど。時間軸的に連続したシーンと思わせといておいて、実はこの間にネズミ捕りをミルクの中に仕込んでおいたんですね。
いわゆる叙述トリックですね。一本取られた。
しかしその直後、あっさり冒頭のネズミ捕りが再登場。
普通に違った。
マジでただの考えすぎでした。
考察厨あるあるをブチかましてしましました。恥ずかしい。
まあ、どこかでジェリーが仕込んだんでしょうね。だとしなければ、所構わずネズミ捕りを設置する狂人がこの家に住んでいることになります。
そんなネズミ捕りをジェリーはキャンディーを使って攻略しようとします。
フックになった部分で、チーズをさっとかすめ取るジェリー。しかし、仕掛けは発動せず、『ジングルベル』のメロディとともに、金具がゆっくり降りていきます。
何とこのネズミ捕り、ネズミ捕りの形をしたオルゴールだったのです。
ということはこのチーズもただのプレゼントということになります。趣味悪~~~!!!
満面の笑みのジェリーでThe End。はじめてトムとジェリーが仲良く終わりました。まさにクリスマスの奇跡です。
トムとジェリーの奇妙な共犯関係はここから始まったんですね。
ストーリーは以上です。いかがでしたでしょうか。
クリスマスという舞台設定の為か、心温まる系のストーリーでしたね。
前回とは打って変わって、戦時中という時代背景をほとんど感じさせない内容でした。
トムがジェリーを助けたり、助けられたりという展開もあり、いよいよ『トムとジェリー』というシリーズの幕開けという感じがします。
次回も楽しみです。
ということで、
【『トムとジェリー』全話解説】#3『The Night Before Christmas』は『トムとジェリー』という作品の原点だった。
でした。
次回もお楽しみに!!
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