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【読書ノート】ポケット版「のび太」という生きかた

アスコムの売り出し文句に - のび太を徹底分析した本書は「のび太の見方が変わる!」- とあり、俄然興味が湧いてつい買ってしまったこの一冊。と言うのも、実は私ものび太には一目置いていたから。

今回読んだ書籍は、アスコム社の読書の秋2021課題図書である横山 泰行著「ポケット版「のび太」という生きかた」です。

私がのび太にもともと一目置いていた理由はたったひとつ。それは、、、最後の最後にしずかちゃんとちゃっかり結婚してるから!出木杉くんはどうしたの?!っつー話ですよ。終わりよければすべてよし、とは必ずしも思わないけど、どんなにカッコつけて日々暮らしていても、最後に幸せになったもん勝ちっしょー、とちょっとしたのび太ファンだったわけです。そんな私がこの本を通して再確認させてもらった、のび太のよさを語ります。

頑張り屋

のび太というと、まず最初に浮かぶのがこの言葉ではないでしょうか?

金持ち坊ちゃんスネ夫は、数々の骨董品をのび太に見せびらかし、「高級な趣味」を自慢しているのを見てうらやましくなったのび太。ドラえもんに頼んで、古物商の珍品堂を紹介してもらい、自宅にあるいろいろなものを骨董品と交換してもらいます。まぁ、でもいつものごとくそれはうまくいかず、洗濯機がタライになってしまったり、逆に21世紀の未来的マシーンになったりと、お父さんとお母さんは大混乱。計画は(いつも通り)失敗に終わります。

でもここでのポイントは失敗を繰り返しても、夢を実現するために貪欲に前に突き進むのび太の姿。大人になると忘れてしまう粘り強さを思い出させてくれます。成功するまで反省と挑戦を繰り返すのび太の姿には心を打たれます。

著者の横山さんは面白いことを言っています。

のび太は最終的には、次々と起こるトラブルにひとつひとつ対応し、乗り越えます。 諦めずに目の前の問題を解決しようと行動を起こす、のび太の原動力は何でしょうか?私は、のび太に成功体験が多いからだと考えています。のび太はひみつ道具の助けによって苦手な課題を克服した経験がたくさんあり、そのときどきで 爽快 感 や達成感を体験している のです。

確かにね〜。子供の頃の成功体験の大切さって、育児を経て改めて気づきます。子供って成功体験を通して疑うことなく自信をつけて、それがきっかけで驚くほどさらに伸びて、それが様々な分野にまで広がるんですよ。私は日本にいる頃、どっかしらのドラマで聞いたフレーズ「ドジでノロマなカメ」的なことを言われて育ったせいもあってか、大人になった今でもひねくれた「どうせ私なんて」根性にやる気の芽を摘まれてばかり。でもアメリカで大げさなほど褒められて伸びる子供たちを見ていると、将来甘やかされた勘違いヤローになるか、私みたいにひねくれた根性なしになるかは結局運次第なんだから、だったら希望を持って成長させてあげたいなと思っています。のび太は褒める文化が乏しかった日本の昭和の時代を生き抜いたのに、ドラえもんによってその成功体験があったわけですね。

疑わない心

自然破壊で絶滅した動物たちを救うために、動物たちが安心して暮らせる無人島、絶滅した動物たちの楽園、を作り、そこへ動物たちを移動させます。そこには多くのすったもんだがあるのですが、動物を救うという夢を持ったのび太は諦めません。そのミッションしか頭の中には存在しないのです。

こののび太のように、絶対自分で叶えるんだと、夢の実現に乗り出すこと。夢を思い続けるために、諦めない意志を強力に持ち続けること。この2点がなければ、夢は叶いません。

本当そう。がむしゃらに頑張る人をカッコ悪がる私たちが、言い訳ばかりでいちばんカッコ悪いですね。

優しさ

結局これに尽きると思います。のび太と結婚するしずかちゃんにお父さんが言った感動的な言葉があります。

しずちゃんのパパはドラえもんマンガ史上最も心に響く次のようなアドバイスをします。 「のび太くんを選んだきみの判断は正しかったと思うよ。あの青年は人の幸せを願い、人の不幸を悲しむことのできる人だ。それがいちばん人間にとってだいじなことなんだからね」。この話を聞きながら、しずちゃんはのび太との幸せな結婚生活を確信し、結婚式に臨んだのでした。

ドラえもんから風邪を移す機械を出してもらって、苦しむお父さんの風邪を引き受けようとするのび太。その辛い風邪を、普段意地悪ばかりしてくるスネ夫やジャイアンに移してやる!と意気込んだにも関わらず、彼らやその周りの人たちのふとした優しさを目にし、結局一人苦しむ道を選ぶのです。のび太はそういう子です。

「のび太の優しさは生まれ持っての才能ともいえるほど優れたもので、どんな相手に対しても心底から憎んだり、存在そのものを全否定するような言動は取りません。」と横山さんは言います。だからこそ学校中のマドンナしずかちゃんのハートを射止めることができたのでしょう。

目標に向かって突き進む強さ。夢を諦めない心。人の幸せを願う気持ち。こんな当たり前のことを、いとも簡単にも忘れてしまう大人の私たちが、ふと立ち止まって自分自身を顧みるきっかけになる本でした。


#読書の秋2021   #のび太という生きかた

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