【読書ノート】敗者のゲーム
ママ友が去年から株取引を始め、家族の貯金を株に注ぎ込んで今年はよい儲けが出たそうで、集まるたびに投資の話が出るようになった。「コロナ禍で家にこもってるからディズニーかネットフリックスの株がいいよ!」「基本的にGAFAMさえ抑えておいたら暴落はありえないから!」「旦那の同僚、テスラ株で大儲けしたよ!」と嬉々として話しているのをみて、複雑な気持ちになった私。私自身も素人だが、少なくとも素人が個別株で大儲けできるほど投資は甘くないことを理解している。そこで私がやったことは・・・。
チャールズ・エリス著作「敗者のゲーム」を読み直してみた!同系統には、有名なバートン・マルキール著の「ウォール街のランダム・ウォーカー」がある。私の働く機関にはエコノミストが多くいて、おすすめ本を聞くたびにこのランダムウォーカーが出てくるので、過去に日本語でも英語でも読んだ。投資において一番大切なことが書かれているこれらの本は、運用投資を始める前に読んでおくことを心からお勧めする。前述のママ友ちゃんにも軽くお勧めするつもりで、読み返してみた次第だ。
ここからはそのママ友ちゃん目線で話を進める。私がこの本から、彼女に大切だと気づいてほしいことは3つ。
著者が、アクティブファンドに消極的な理由をいくつか挙げられているが、ボトムラインはインデックスファンドには敵わないから、だと理解している。たとえ数字的によく見えても、成績不良のファンドを意図的に統計から抜いたり、手数料が高かったりと、実際にマーケット連動型のインデックスファンドを上回るアクティブファンドはとても少ない。そしてそんなファンドを見極めるのはとても難しい。
自分の資産運用方針を堅持することが難しい実情を、「ミスターマーケット」と「ミスターバリュー」という登場人物を出して著者は説明する。
決めたことを一貫して忍耐強く実行する。資産配分方針をきちんと立て、方針どおりに行動する大切さを著者は繰り返す。投資で成功するうえでの最大の課題は、頭を使うことではなく、感情をコントロールすることなのだ。
株式市場は奥が深く、なかなか概要を掴めないものだ。だからと言って、よく知る企業の個別株を買おうとバランスシートなんかを眺めても、うまくいってそうなのに株価が下がったり、逆にまったく予想もしなかった会社がいきなり出てきたりと、こちらもますます分からない。学者たちが個人投資家の売買行動を、「ノイズ(雑音)」と呼んでいるのは、悔しいけれど納得がいく。私たち素人は投資よりも節約と貯蓄が最初、と著者は念を押し、これまた悔しいけれど逆らえない。
まとめ的に個人投資家のための十戒が挙げられているので、ご紹介しておく。
意外なのは4の自分の住宅を投資資産と考えてはいけない、という部分かもしれない。家の維持や固定資産税などはお金と手間がかかるし、日本のように住宅の価格が上がらない場合はなおさら投資ではないことを理解してマイホームを購入する必要がある。
8も考えさせられる。リタイア後でも、10 年以上運用する資産はすべて株式に投資、そして2、3年以内の運用資産は「現金」ないしマネーマーケット資産に投資するようにとのアドバイス。定年が近づくにつれ、価格変動が少ない債券の割合を増やすもんだと頑なに信じていたが、子孫に遺産を残すことを考えればほとんどを株式に投資し続けることがお勧めされていた。この辺に関してはもっと関連本で勉強する必要があるな。
本書にももちろん書かれていることだが、個人的にEmergency Fund(緊急資金)で不意の支出を賄えるようにしておくことは何よりも大切だと信じている。ご主人の収入だけに頼っているママ友ちゃんが、家庭の資金を株に費やすのをみるとヒヤヒヤする。3ヶ月から6ヶ月の生活費を現金で持っているようにとの指標が一般的だが、学齢期の子供がいて、収入源が一つとなると、1年分くらいの生活費はあった方がいいのでは?と老婆心ながら思ってしまう。
最後の方に401K(確定拠出型年金)、そして遺産贈与に関するアドバイスが載っていて、これは特に在米の私たちには大変役立つので、ハイライトを入れて保存している。特に遺産贈与は未知の世界で、ゆくゆくは実際的なアドバイスとなるはずだ。子供たちは私のちっぽけな遺産などをあてにせずに自立するよう育児に励むつもりだが、こっそりと少しだけお金を残せたらと期待している。
ママ友ちゃんへのアドバイスはどうするって?毎月決まった額をインデックスファンドへ。緊急資金は死守。インデックスファンドへ一度入れたら出さない。以上!インデックスファンドに入れたお金は無くなったものとしてほっとくと、気づくと桁が変わるほど貯まっていること間違いなし。刺激が少なくつまらないこの投資方法をママ友ちゃんが賛同してくれるかどうかは乞うご期待だ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?