「良いクレーム」と「悪いクレーム」はどこで分ける?
先日、何年か前に納品した着物日傘について、お客さまよりお問い合わせフォーム経由でご連絡を頂いた。
内容としては、
「使おうと思ったら、パーツの一部が外れてしまって使えない。どうしたらいいのかわからず困っている。できれば口頭で説明したい。」
というもの。
つまり、お客さまよりクレーム(改善要求)を頂いてしまった。
もちろん、お客さまからクレームが来ないことがベストではある。
けれど、私も不完全な人間。
そして、作っているのは形があるもの。
いつも、そして、いつまでも100%満足して頂けるとは限らない。
1:状況を確認し、心から詫びるべし
まずはお困りの状況をお聞かせ頂こうと、すぐにご自宅にお電話をした。
日傘のオーダーメイドのお客さまは、知人友人であることもあるが、多くはホームページからご注文を頂く面識のない方。
今回も、遠方であり、面識もなければ、電話でお話したこともない方だった。
お客さま:「状況としては、かくかくしかじかで…」
私:「このたびはご迷惑ご不便をおかけして、大変申し訳ございません。
お電話で今お聞きして、お困りの状況はわかりました。
ただ、やはり実物を見てみないと、修繕ができるかどうかの判断ができません。
もちろん、できる限りのことはさせて頂きます。
お手数ですが、こちらに送っていただけますか?」
お客さま:「わかりました。どのくらいお時間かかりますか?」
私:「1週間ほどお時間頂けましたら。到着しましたら、まずは状況をご説明し、解決策をご提案いたします。」
2:解決策を提示する
そのようなやり取りの後、数日後に、お客さまより当該日傘が届いた。
実際に見てみると、確かにパーツの止まりがゆるく、日常づかいに支障をきたす状態だった。
また、一部のパーツが破損しており、部品すべてを取り換えた方がいいと判断した。
制作したときは問題なかったように思ったけれど、経年変化で生地が伸びてしまったり、生地の重みで部材に負担がかかってしまっているようだった。
いずれにせよ、なんとかして問題を解決し、早急にお客さまの元にお返ししたい。
そう思って早速修繕できるかどうかのチェックを開始。
が、生地を外そうにも、頑丈に接着した先端の部材がなかなか外れず(元々外れてはならないものだから、かなり頑丈に取り付けていたので…)
もう、冷や汗タラタラ。
ペンチや軍手など使えそうなツールを総動員で、なんとか先端が外れた。
そして、少し小さめの傘の骨に付け替えてみると、パーツの止まりもピッタリになった。
外れていたパーツは、新しい傘の骨用のパーツにすべて付け換えた。
ここでようやく問題を解決できる見通しが立ったので、お客さまに状況説明と今後の対応についてのお電話をした。
3:改善は早急に行う
お電話の様子から、少しでも早くお使いになりたいことがわかったので、日傘の修繕は、最優先で対応した。
それから、生地から出ていた糸のほつれも綺麗にし、その日のうちに発送した。
心ばかりのお詫びのお品を一緒に入れて。
送り返したときよりも、綺麗になって戻ってきたら、きっとお客さまもうれしいはず。
お詫びのお品はマストではないが、済まなく思う気持ちが少しでも伝わったら、私もうれしいから。
4:謝るだけじゃなく感謝を伝える
発送した日傘、お客さまの元への無事到着したことを確認できた。
翌日の午前中、改めてお客さまにお電話をした。
今までのコミュニケーションが苦手な私だったら、メールだけで済ませられることはメールで済ましていた。
でも、最近は思う。
ちゃんと話すからこそ、お互いの心が通うんだ。
もちろん対面でリアルにお話できれば、それが1番いいけれど。
今は対面しづらい状況もあるし、距離的に難しいことも多い。
でも、会いにいけないなら、なおさら電話で誠心誠意話すべきでは?
口下手だからこそ、拙い言葉でも、心を伝える努力を怠ってはいけない。
数分の会話だったけれど、お客さまの声からは、安堵した様子が伝わってきた。
私からは、改めてこのたびの不具合のお詫びと、今回ご連絡くださったことへのお礼を述べた。
その時は気づかなかったけれど、実はお客さまからもう1通新しいメールが届いていた。
それを読んで、改めて気づきと成長の機会を与えてくれたお客さまに、心から感謝した。
日傘 届きました! 早速 修繕していただきありがとうございます。
恐る恐る差していましたがもう安心です。 思い切ってお話しさせてもらいよかったです。大事に使います!
母は 着物リメイクの日傘なんて想像もしていなくとってもうれしかったようです。傘を見つめるやさしい母の顔を見て私も幸せな気分になりました。 本当にありがとうございました。
着物リメイク
とても興味があり機会があればぜひ観せてもらいたいと思います。
益々暑くなります。お身体お気をつけください。
素晴らしいレターセットありがとうございました!
改めて考える。「良いクレーム」と「悪いクレーム」の分かれ道
そもそも「クレーム」って言い方自体、どうしてもマイナスのイメージがつきまとう。
「クレーマー」って言うと、因縁ばかりつける煙たい人ってイメージだし。
でも、クレームって要は「改善してほしいことを相手に伝える」ってことだよね。
そのクレームが、受け取った側にとって良いものか、それとも悪いものかは、その人の受け取り方でも変わってくる。
私が思う「良いクレーム」は、
クレームされることで、自分では気づかなかった直すべき点に気づかせてもらい、仕事上で成長する機会を与えてもらえるもの。だから、自分と相手の心が双方向、両方通行。そのクレームには「愛」がある。
一方「悪いクレーム」は、
クレームする側のマイナスの感情だけをぶつけられるもの。心が相手からのみの一方通行。そのクレームには「愛」がない。
私が今回頂いたクレームは、明らかに良いクレーム。
言いにくいことを言ってくださったことが、本当にありがたい。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
暮らしの中で遭遇する人と人との様々なトラブル。
角が立たないようにクレームを全然言わずに我慢しちゃう方もいると思うけど、私は結構言うべき時は言うタイプかもしれない。
でも、敢えて何も言わないこともある。
それは、相手を見放したとき。
もう縁を切りたい、今後関わる予定がないとか。
そもそも縁が薄い場合も、面倒なのでわざわざクレームしない。
クレームするのは、その人(そのお店)に良い方向に変わってほしいから。
こちらは不快に思っても、相手は案外ただ気づいていないこともあるから。
お金を返してほしい、というよりは、やはり改善してほしいと思うから、言いにくくても、テンションは上げずに、どういうことで自分が困ったのかを事実のみ、極力早めに伝える。
誰だって耳の痛い話は聞きたくないだろうけれど、言う方だってエネルギーを使うんだよね。
それがわかるから、クレームを言われたら、まずは何が起こったか事実関係を確認して、相手の話(何について困っているのか)に耳を傾けることが大事。
たとえ最初に、自分には非がないと思ったとしても。
クレームは無いに越したことないけれど、クレームは交通事故(もらい事故)じゃなくて、成長する機会を与えてもらえた、つまり「チャンス」だ。
ともあれ、今回は一件落着でホッとしている。
今日は仕事上あるあるなクレームについてお話してみた。
ここまで読んでくれてありがとう!
Tammy
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