読書日記 ①
李 琴峰
『五つ数えれば三日月が』
片思いが叶わない、というか叶えない事を選んだ百合小説。 2つの国や文化や言語をまたいだ物語ではあるけれど、読んでいる内にそのことは些細な添え物みたいに思えてくる。
いい意味でありふれた恋物語というのが読後の印象かな。
金原 ひとみ
『マザーズ』
読み終えた後、ああ、金原 ひとみさんの書いた小説だったなあという感じがすごくする長編。 悪酔い一歩手前のいい感じに落ちてく陶酔感があるから、この人の小説は止められない。
母親たちの、というよりも、あるとき母になった女たちの物語というべきなのかな。 重たくて読み応えがあった。
木村 映里
『医療の外れで』
看護師をしている方が書いた、医療・福祉にまつわる自伝的エッセイ。 私自身も福祉関係の仕事をしていた(もしくはいる)から、何だか妙にリアルに感じられた。
痛さ厳しさ、それに歪みなんかを分かっててももう一度、もう一度って携わりたくなってしまう中毒性があるのが医療・福祉業界なのかも知れない。
パトリック・モディアノ
『さびしい宝石』
不思議な夢を見させられてる、そんな気分がしてくる物語。 主人公の都合でいきなり回想シーンの始まることがしょっちゅうあるし、さらに舞台が多分50~100年くらい前のパリなもんだから妙な浮遊感がしてくる。
本当に、物語の中にも出てくる「夢遊病」という表現がぴったり。 なんだか癖になりそうな文体の作家さんだと思った。
李 琴峰
『肉を脱ぐ』
「一皮むける」の究極型みたいな話。 皮肉も込みで肉体がテーマなんだろう。
実体があるから愛おしいし煩わしい。 手放したくなっても結局欲しくなるのはまた別の実体だ。 ネット社会やLGBTQ問題を引き合いに出して、そういう人間の厄介な性(さが)を書きたかったのかな。 そんな気がした。
市川 沙央
『ハンチバック』
過激な描写もあるにはあったけど一気に読めた。 物語に独特なスピード感があるお陰なんだと思う。
障害についての表現を読みながらいちいち頷けたのは、私自身がこの主人公程ではないにしろ同じ重度身体障害者のくくりに入れられてる人間だからか。 ともかく、身障者の生活や情念を書いた物語としてよく出来ていた。
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