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転職して3営業日目の平日、歓迎会を兼ねた懇親会を開いてもらった。
入社早々、社内での立ち回り力が試されるときがきた。
転職をした回数も、転職された方を迎え入れた回数もそれなりに重ねてきたので、新人がどういう見られ方をするのか、平均よりは詳しめに知っている。
一番の安全策は、目立たないこと。積極的に自己アピールをしすぎても、忍者を目指して息を殺すのも悪手だ。
そこで始終ニコニコしたまま、サラダを取り分けたり、お酒を運んだり(お酌はしなかった)、話にうんうん頷いていたら、顔が筋肉痛になりそうだ。
こんな時代にお酒を強要されるなんてことはないけれど、事前に聞かれた質問には「弱くて、あまり飲めないんです」と答えておいた。
でも本当は、飲み会では平均より大いに杯を重ねてきた私であった。

会社の飲み会は憂鬱だ。でも、自分はお酒が好きなんだろうと思っていた。美味しい感じる一瞬を過ぎると、飲めば飲むほど舌がバカになって、いくらでも入っていく気がした。そのうち感覚もバカになって何でもないことが楽しくなった。
最近になってやっとやっと気づいた。
飲むのが楽しいんじゃなくて、飲まないと楽しくない会だった。(そして風情のない飲み方だった。)

家ではめったにお酒は買わないし、欲しくもならない。誰かと飲みたいとも思わない。そんなことしなくても家の中には楽しいことがたくさん溢れている。時間がもったいないくらいだ。
どうして気付かなかったんだろう。

お酒で人と仲良くなってきたのも事実なのに、そんな人たちより、よそよそしくてお互いに秘密を残している関係の方が魅力的に思える。お酒もお喋りも、物足りないくらいが一番楽しい。


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