短歌 まとめ 8~9月 (十二首)

【短歌】

 

トークノートなどにあげた短歌をテキストノートにまとめました(ひと言コメント付き)。今回は8ー9月分の十二首です。

 

こんな夜は
寅さんにまた
会いたくて
もう何度目か
あじさいの恋

(2015.8.18)

※たまに会いたくなるんですね、寅さんに。(映画を)観たくなるんじゃなくて、会いたくなる。で、会うとこれが「え、ここで!」という何気ない場面なのに泣いてしまう。たぶん、寅さんに会うとすごくほっとするのだと思います。で、「あじさいの恋」いいんですよ。何度も観てしまいます。

 

その一歩
わずか一歩に
風が抜け
つまさきのさき
夏がこごえる

(2015.8.21)

※あと一歩が届かず、わずかなその隙間に風が吹き抜ける思いがする。夏の盛りなのにこごえるような心もようにある。

 

人波に
砂浜で針
拾うよに
冷たく静かな
分岐点にて

(2015.8.23)

※分岐点というものについて考えていたんですね。人生は分岐の連続ですが、なかでも今後を左右するような重要な分岐点に立つとさまざまな判断要素を検証します。そんな気持ちを言葉にしてみました。

 

混ざり合い
馴染み合いつつ
色も香も
空も草木も
人も心も

(2015.8.27)

※まだ八月だというのに早い秋の訪れに、夏と秋が混ざりあう様子を、街に森に人に詠ってみました。

 

絹のよな
しめやかに雨
地に降りて
幾千億の
土曜を濡らす

(2015.8.29)

※遥かな昔から未来の彼方において、世界中のあらゆる土地を濡らし尽くすように、雨が静かに降っていました。

 

どれだけの
雨音聴いて
傘のなか
いつかの記憶
この夏の空

(2015.9.1)

※まあ、ほんとうに八月後半から九月にかけては雨が降り続けましたね。この間の傘のなかの出来事は雨空とともに記憶され、いつか思い返されるのだろうな、と思いました。

 

日常に
置き換えられた
特別が
街の風景
やわらかくする

(2015.9.4)

※特別により喚起される心持ちは良くも悪くも疲れますよね。そして、それに慣れた頃に目に写る景色はやわらかくなります。

 

消息は不明のままで道のうえ
右も左も西も東も

(2015.9.8)

※これは、あるひどく酔っ払った男の心持ちなんですね。なにが悲しくてこの男はそんなに酒を呑むのでしょう。さっぱり意味がわかりませんね。

 

日の暮れに
色彩欠けて
窓のそと
流れる景色
夜の海ににて

(2015.9.14)

※電車の窓から見る夕景の、影となった家々の屋根が、波打つ夜の海のように見えました。

 

未熟さに
秋晴れの空
願掛けて
アブラハムの樹
うまくやれると

※アブラハムの樹・・・雲の名称

(2015.9.20)

※伊勢神宮に詣でた帰り、帯状の雲が幾筋もまるで生き物のように西に向かっていました。天照大神に願を掛けてきた帰りだけに、この雲に叶えてもらえるような気がしたのです。

 

この街の
そらを見あげて
旅のそら
似て非なるもの
心の在りか

(2015.9.22)

※出張と旅行で一週間ほど名古屋~大阪を往き来して、旅先の空(雲や色)は日常のそれと違うものだなと、帰宅して見あげた空を眺めて思いました。


清廉な濃紺のなかざわめいて
月面に立つ夢くりかえす

(2015.9.28)

※静かに晴れた夜空に、強い光を放つ月だけがざわめいて、それを見ながら「月面に立つ」=「叶わぬ」夢を見ています。

 

 

さて、今回のまとめとコメント、いかがでしたでしょうか。今後の参考にご意見ご感想ひと言コメントなどいただけるとうれしいです。

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短歌 まとめ 7月(十一首)

ではまた、次のまとめの際に、お会いしましょう。

 

tamito

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