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幼少期にあった本当にかっこよかった出来事

幼少期の印象的な断片的記憶を辿ると、その人が何を大切にして生きているかがわかる、と思う。

かくいう私の最初の断片的な思い出は、幼稚園の時に誰かに助けてもらった記憶だ。

私の幼稚園は結構厳しく、給食を全て食べ切るまで廊下で寝る時間になろうと、歯磨きの時間になろうと、お絵描きの時間になろうと居残りさせられていた。今だったら叩かれそう。

その日も私の嫌いな焼き魚が出ていて、私は居残り給食をさせられていた。

最初は私以外にも2、3人いたのだが、みんな頑張って食べきり、ついに私一人になってしまった。もう、泣きながらちょびちょびとでも食べ進めるしかない。

そうやって1、2時間経ったのだろうか。一人の同級生が私に近づいてきた。そして「先生がいないうちにこっそり給食室に戻してあげる」と囁いてきた。

そんな悪いことをしてもいいのか、先生に万が一見つかったらどうするのか、と私は何秒間か逡巡しその提案にすぐに頷くことができなかったのだが、その間にその子は私の手元にあった焼き魚の入った器を手に取り、たたたーっと給食室まで走って行った。

結局、先生にその場面を目撃されることはなく、そんな出来事があった数十分後に帰ってきた保育園の先生に、全部食べたと嘘をついてその日は保釈された。

今でもその時のことをふと思い出して、その子が誰だったのか必死に思い出そうとするのだが、全く思い出せない。でも、その出来事がかっこよすぎて、嬉しすぎて、でも誰かに直接いうのは憚られて、5cm四方の小さい紙にその子の名前を書いて、家の机の下に敷いている段ボール紙片の下に挟ませていた。でも、それももうない(と思う。実家にまだ残っていたらびっくりする)。

あー、あれ誰だったんだろう。今同じようなことされても惚れちゃう気がする。私の同級生で記憶のある人は名乗り出てください。

永遠に記憶が消失されてしまうくらいならば、誰かに共有しておけばよかった。

いろんな記憶の断片の話じゃなくなってしまったが、少なくともこのエピソード一個で言えることは、私は私の我慢を見透かした強引な優しさに弱いということだ。


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