Do the right thing

 「さぁ、これを見てください」とかいう紹介ではないが、連日報道されているフランスの少年ギャング暴動の様を見て、おそらく誰でも考えるような、ここに至った背景を一通り思い浮かべ、ふと思い出した映画だ。

「集団」が引き起こす問題の殆どは、複数の要因から起こり、仮に背景や理由がわかっていても解決策がなく、仮に正しい解決策があったとしても、国とか地方というより大きな集団が、様々な個人的理由あるいは考え方の違いで、解決策を共有できないし実行できないという、ありふれた単純な事実にいたり、言い訳のように浮かんだのが

暑すぎると、人は誰でもおかしくなる」だった。それでこの映画を思い出したのだろう。

私がDo the right thingを見た時も、映画と同じでただやたらと暑い、つまりクソ暑い夏だった。正確に言うとクソ暑い夏の夜だ。

仕事前に借りた数本の映画を、休日の明け方、一人で一挙に消費するのが当時のルーチンワークだった。ワンルームのカーテン越しに見える闇が深いうちに、冷蔵庫に並んでいる缶ビールを次々と流し込んでいると、最初の映画がいつのまにか終わっている。

闇に青が混じっていき、アルコールでぼやけてきた頭で「何かまともなことを考えてる」つもりになってしまう夜と朝の境い目頃に、一番楽しみにしていた映画を見て、やがて3本目が始まり、青い夜に光が差し始めると、すでに浅い眠りについていたと思う。昼頃に電話がなり誰かを迎えに行き、「今日は何する?」「何しようか、、」といい、殆どの場合、重なる以外は何もせず、そして誰かは去り次の週が始まる。

ただそれだけが毎週続く、つまり規則的に正確に、でも少しずつ壊れていた日々のどこかで、缶ビールのつまみとして消費された、何本もの映画の中の一つだったはずだ。

当時務めていたお店は、私が好きだろうが嫌いだろうがブラックカルチャー系の情報がやたら入ってくるため、スパイク リーを、ポップカルチャーやファッションと同じ感覚で知り、彼の監督作品の一つをエンタメとして消費しただけに過ぎないし、BLMなんて言葉はまだ生まれてもいない。

それはどうしようもないほど見事なまでに完全な他人事だった。ただ、映画の宣伝文句だったか何か、「人は暑すぎるとおかしくなる」という、セリフはずっと覚えていて、今でもそう思う。そう、温暖化があろうがなかろうが、ずっと人類は真夏日だ、いつもどこか狂ってる













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