総務省の行政文書が示していること
今回、野党議員を経由しての告発で国民に公表された、総務省の行政文書は、放送法の解釈について、総務省の官僚が磯崎氏の要求通りに総務大臣に答弁させるまでの、業務を、実務にあたった官僚側の視点で記録している。
自分たちで行政文書の内容を精査するのが難しい理由は、業務にあたった
当人たちだけでなく、安倍氏、磯崎補佐官、高市総務大臣、及び高市側の官僚、という人物が登場していて、当然彼らが語った内容も書かれており、
しかも「公表されると、誰にもあまりプラスにならないことばかり」だからだ。それでも残しておいたのは、「総務省の官僚は、少しは抵抗しました」という、彼らの言い訳にすぎないのも、事実である。ただ一人、評価されるべきは、この書類を持ち出して、国民に公表してくれた官僚だろう。現段階では、せめてもの「罪滅ぼし」の意味しか持たないのだが。
業務の開始
H26 11 26
磯崎総理補佐官付から放送政策課に電話で連絡。内容は以下の通り。 ・ 放送法に規定する「政治的公平」について局長からレクしてほしい。 ・ コメンテーター全員が同じ主張の番組(TBS サンデーモーニング) は偏っているのではないかという問題意識を補佐官はお持ちで、「政治 的公平」の解釈や運用、違反事例を説明してほしい。
業務の終了
H27 5 12 :参・総務委員会 (自)藤川政人議員からの「政治的公平」に関する質問に対し、磯崎補佐 官と調整したものに基づいて、高市大臣が答弁。(事実)
磯崎総理補佐官は、この答弁終了後、自分の働きかけで解釈が変更されたことを誰かに誇示するように、ツイッターで勝利宣言とも取れる内容を書き込んでいる。
総務省官僚の、業務の開始から終了まで、何があったのかが詳細に書かれていて、高市氏がいくら、官僚の事前レクもなく、安倍氏のご意向も確認せず、藤川議員の質問に対する官僚からの答弁案を、自分で問題点を整理して、修正し答えたといったところで、結果的に、磯崎補佐官の言う通りに、高市氏は「あやつり人形のように」見事に答弁しているのである。
そして、当然安倍氏もこの答弁を好ましく思っていただろう。
実際のところ、高市氏の答弁より前から、官邸による様々な圧力は、政権に批判的な番組を作る放送局に十分すぎるほど掛け続けていたし、いよいよそれに、国会での関係閣僚答弁という、トドメを指したにすぎないと思う。なぜ、それが必要だったかは簡単だ。
ほとんどの一般国民(B層と呼ばれたことも有るが)は、忙しくて自分で行政のチェックなんかできるわけがない。ネットリテラシーも当然だが、ネットの政治に関する情報が、放送局が作る政治番組よりも正確に、公平に、事実をわかりやすく伝えている、なんていうのは、ほとんど幻想である。
調査するにも、検証するにも、それだけの知識を持つ人材と金がいるからだ。TVの政治番組ほど、まず政権がコントロールしたい番組はないだろう。
全ては安倍氏の宿願である、憲法の解釈変更>>最終的には憲法改正によって、欧米と同じ富国強兵を目指して日本を変えるという、安倍政権から現在に至る政治プロセスの一環である。
故安倍首相のご意向など、実際の所はわかりきっていたことだろう。
そして、見事な嗅覚で最高権力者にすり寄ることで地位をあげてきた、元小泉チルドレン、女仕事人であり、第一次安倍政権で初入閣でき、第二次安倍内閣で総務大臣にまで持ち上げてもらった、高市元総務大臣が、どちらを選ぶかも。
後ろ盾である安倍氏の目指す「美しい国日本」にとって都合の悪い民主主義の原則を、安倍氏や彼を神輿に担ぐ「創生日本」な、あるいは「日本会議」な人、あるいは、「統一教会及び、各右派系宗教団体の幹部」のご機嫌を損ねてまで、責任閣僚として守ろうとするわけなどなかったのだ。
それが見事に露呈されたのが、今回の行政文書というだけだろう。
高市氏が事前に知っていたか、安倍氏と連絡したかどうか、そんなものは確かに、本当のところどうでもいい。
どちらにしても、高市総務大臣の選択も、安倍総理の選択も決まっていて、これは放送法の解釈を変更することで、報道や政治番組での安倍政治への批判をさらに封じ込めるため、画策し実行されたプロセスの一例が、実務側からの記録として、国民の前に顕になっただけである。
文書の詳細で、政権と、政権に従った官僚が、内部同士で否定し合ったところで、誰が画策し、誰が実行したかは、全く変化しない。
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