コーポレートガバナンスが重要な理由_エージェンシー理論とシライ電子

コーポレートガバナンスとは、「株主による経営者に対する監督」を意味します。

経営者による会社組織の統制という意味はコーポレートガバナンスに含まれませんのでご注意ください。

株主による経営者に対する監督とは、具体的には、指名と報酬という人事権を株主が行使することを意味します。

株主による監督が適切に機能していれば、業績の悪い会社では、社長の報酬は低くすることができますし、今後業績の改善が見込まれなけば社長をクビにすることができます。

当たり前ではないか、と思うかもしれませんが、
日本の多くの会社では、取締役を誰にするか、その報酬をいくらにするかということを社長が決定しており、株主は指名と報酬に関与しづらいことが多く、経営者を監督できていない状態の方が多いです。

このような状態になる理由やその解決方法を説明するのが「エージェンシー理論」という経済学の考え方です。

エージェンシー理論とは

エージェンシー理論は、「プリンシパル=エージェンシー理論」とも呼ばれます。

経済社会では、経済主体(プリンシパル)が代理人(エージェント)に依頼して、代わりに行動してもらう状況が多く存在します。

このような状況では以下のようなことが発生します。
①プリンシパルとエージェントの目的が一致しないこと(目的の不一致)
②プリンシパルよりもエージェントの方が情報優位にあること(情報の非対称性)

これら2つの条件が揃うことで、エージェンシー問題が生じる可能性が高まります。

エージェンシー理論とは、エージェンシー問題が発生する状況を説明し、エージェンシー問題を解決をするための理論です。

エージェンシー問題とは

株式会社を例に考えます。
株式会社の場合、株主がプリンシパルであり、取締役がエージェントです。

株主は「企業価値を高めて欲しい」という目的を持っていますが、取締役は「自分の地位を維持したい」というように株主と異なる目的を持つ場合があります。(目的の不一致)

一方で、株主は、実際に会社においてどのような経営がなされているか十分な情報を得ることができず、取締役に対して十分な監督ができないことになります。(情報の非対称性)

このような場合、取締役は合理的な意思決定として、自分の目的を達成するための行動を優先し、結果として株主の目的が達成されないという問題が発生します。

この問題をエージェンシー問題といいます。

エージェンシー理論ではエージェンシー問題の解決方法として、「目的の不一致」「情報の非対称性」それぞれの解決方法が示されています。

「目的の不一致」解決方法:インセンティブ

目的の不一致を解消する方法はインセンティブです。

インセンティブとは「ある特定の人に期待する行動を行わせるための動機づけ」と考えてください。

目的の不一致を解消するために、エージェントがプリンシパルと同じ目的に向かって行動する動機を与えてあげればよいのです。

具体的には、取締役に対して業績連動型報酬を与えることが考えられます。
取締役は「企業価値の向上」によって報酬がアップするため、プリンシパルと同じ目的に向かって行動すると考えられます。

「情報の非対称性」解決方法:モニタリング

情報の非対称性を解決する方法はモニタリングです。

モニタリングとは、プリンシパルがエージェントを監視する仕組みを導入することを言います。

具体的には、経営情報の開示を充実させることや、社外取締役の活用が考えられます。
特に近年では後者の「社外取締役の活用」が企業に求められています。

社外取締役が取締役会の一員として票を持つことで、経営上の重要な意思決定(経営方針の決定や重要な業務執行)や指名・報酬に関して外部の意見が反映されやすいと言われています。

更に、指名委員会や報酬委員会という取締役の指名や報酬に関して取締役会に対して意見を述べる機関を設置する企業も増えており、社外取締役はこれらの委員会のメンバーとなって、経営方針に基づいた指名基準や報酬基準の制定にも関与することで、モニタリングを強化している事例も見受けられます

実際、日本のコーポレートガバナンス・コードでも原則4ー8や原則4-10それらに付随する補充原則において、社外取締役の活用や委員会の設置が求められています。

https://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/tvdivq0000008jdy-att/nlsgeu000005lnul.pdf

シライ電子について

さて、またもや登場しましたシライ電子です。
私が追いかけ続けているこの企業ですが、エージェンシー理論に基づいて私は白井基治さんに戻ってきて欲しいと願い続けています。

所有と経営が分離している以上、株式会社には制度としてエージェンシー問題が本質的に内在します。

したがって、コーポレートガバナンスの観点からは、
株式投資をする際には、エージェントである取締役が株主とは異なる目的を持っているのではないかとまず疑うべきです。
そして、モニタリングが適切に機能する会社であるかどうかをチェックします。

詳しい話は次回以降のnoteで書きたいと思いますが、
簡単に言うと、以下の2つが基治さん推しの理由です。

①企業価値を向上させると言っていた基治さんを解職したということは「企業価値を向上させる」という目的をやめた、あるいはその目的は最重要ではなくなったと考えられ、目的の不一致が発生している状況と考えられます。
②解職の理由にあった「監査等委員会の監査範囲の制約」という点、社外取締役の構成比率を下げている点、創業者という特定の株主を取締役に戻した点などから、モニタリングが機能していない、あるいはモニタリング機能が低下していると考えられ、情報の非対称性が強まっていると考えられます。

このような考えの結果、現経営陣では不安だと判断したので、白井基治さんに戻ってきて欲しいと考えています。

ちなみに、まだ第一四半期以降の決算発表はされていませんが、社長が変わって業績が好調なことをアピールするために会社の資産を売却したりするかもしれません。

今後の決算発表では、仮に業績が好調だったとしても、一時的なものか、持続的なものかをきちんと見極めていきたいと思います。

まとめ

エージェンシー理論に基づいたコーポレートガバナンスの考え方についてシライ電子の事例も交えながら解説しました。

コーポレートガバナンスについてはエージェンシー理論だけでは足りない部分も多々ありますが、まずは原則的な考え方を知っておくことで思考の軸ができて、より深い洞察ができるようになると考えています。

これからも様々なビジネスのテーマについて読者の皆様と一緒に勉強ができればと思っております。

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読んでいただきありがとうございます。

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