サラリーマン社長よりも同族企業が良い理由_シライ電子の事例で考える

アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズは、アップルを創業した後、会社から追放されました。

その後、業績不振に陥ったアップルはスティーブ・ジョブズに戻ってきてもらい、世界的な超大企業になったという話は有名ですね。

アップルの話から得られる教訓はたくさんありますが、誰がリーダーかということが組織にとって非常に重要であるというのがひとつの教訓です。

さて本題です。

同族企業と聞くとどのようなイメージでしょうか?

「社長が独裁的で閉鎖的な会社である」「社長が会社のお金を自由に使っている」「親から社長の座を譲り受けただけで2代目以降は無能な社長である」

このように何となく負のイメージで語られることが多いのではないかと思います。

実は日本の上場企業のうち53%が同族企業と言われています。非上場企業も含めると90%と言われています。

日本が世界第4位の経済力を持つ国であるにもかかわらず、同族企業が本当に負のイメージどおりであれば、これほど多くの同族企業が上場を維持していることはおかしいと感じますよね。

ということで同族企業のメリットを紹介したいと思います。

同族企業のメリット

同族企業には以下のようなメリットがあると言われています。

  • 意思決定が早い

  • リスクを取った経営判断ができる

  • 長期的な視野で経営判断ができる

これは大株主である一族(ファミリー)が社長や経営者に就任することで、「所有と経営が一致するから」と考えられます。

所有と経営が一致することで株主と経営者の目的が一致し、エージェンシー問題が解決されるからです。

エージェンシー問題についてはこちらの記事をご覧ください。

大株主というファミリーに支えられた経営者は、株主総会で解任される可能性が低いため、リスク回避的な行動を取る必要がなく、大胆で、かつ、迅速な経営判断ができます。

また、短期的な利益だけを求める株主もいますが、そういった株主に変に引っ張られることなく、会社を家族のように考え、将来に渡っての発展を願い、長期的な視野で経営を行うことができます。

更に、もし自分の代では成し遂げられそうにない長期的な大規模プロジェクトであっても、同じファミリーのなかから次世代の経営者を派遣することで、大規模プロジェクトを完遂することができると考えられ、このことからも長期的な視野で経営を行うことができます。

同族企業のデメリット

ではデメリットはないのかという点ですが、もちろん存在します。

  • ファミリーから派遣される経営者が優秀な人物ではない

  • 大株主であるファミリーの目的に納得がいかない

社内外に優秀な人物がいるにもかかわらず、創業家出身だからという理由だけで取締役に就任されては困りますよね。しかも役員報酬という決して安くはないお金を経営能力がない人物に支払うのは損でしかありません。

また、経営者に対してモニタリングする必要があるという話を前回しましたが、少数株主(プリンシパル)が大株主(エージェント)にモニタリングをお願いしていると考えると、実は大株主と少数株主の間にもエージェント問題が発生しています。残念ながらこれを回避する手段はあまりないと考えられます。

具体的な事例:シライ電子

私のnoteでおなじみのシライ電子です。

なぜ私がシライ電子の株を過去に購入したかというと、まさに同族企業だったからです。前社長の白井基治さんは創業者の孫ですので、創業家出身の社長ということですね。

同族企業のメリットは上述したとおりです。更に、基治さんの経歴を見ていただければ分かると思いますが、率直に申し上げて超優秀です。私も運動部出身で某国立大学に一浪して入学していますが、バリバリの運動部出身で現役東大合格というのは次元が違います。

そして実際に経営者として見事な成果も出しています。なんと2023年には創業以来過去最高の営業利益をたたき出しているのです!2020年に営業利益が赤字だった会社とは思えませんね。基治さんは2019年に入社され、2021年に取締役に就任していますので、立て直して最高益を出した優秀な経営者と言えるでしょう。具体的にはこちらのページをご覧ください。

以上のことから同族企業のデメリットとして記載した「創業家だから社長になった」という人物ではないことはお分かりになるかと思います。同族企業から若くて優秀な経営者が登場したということは、長らくシライ電子の社長でいてくれると思い、長期的に企業価値が向上する予感しかなかったので、私は株を購入しました。

しかし、不可解な突然の解任が起こってしまい、私は悲しいです。詳しくはこちらのnoteをご覧ください。

基治さんはスティーブ・ジョブズ

さて、冒頭のスティーブ・ジョブズに話を戻します。

アップルはスティーブ・ジョブズについていけないと言って追放したにもかかわらず、戻ってきてもらってようやく経営が立て直され、世界トップクラスの企業にまで成長しました。

シライ電子も基治さんについていけないといって追放しました。今後、業績が悪くなった場合、やっぱり戻ってきてとお願いするのでしょうか?

現時点でシライ電子の業績が悪くなっているという情報はキャッチしておりませんが、基治さんのホームページに掲載されている中国子会社の従業員の署名がとても気がかりです。かなり多くの従業員が基治さんの解任に反対していますので、今後、海外事業が傾いていくのではと思ってしまいます。

基治さんは今はまだ戦ってくれていますが、いつシライ電子を見切ってもおかしくない状況だと思います。正直、彼の年齢と、彼の能力を考えれば、ゼロから会社を起業してもすぐに大きな会社にできるように思います。シライ電子の株を全部売って、それを資金として会社を起業した方が彼にとって幸せなのかもしれないと思ったりします。

今後成長して真の大企業になっていくかどうか、シライ電子は今まさに岐路に立っていると思います。基治さんがいなければ赤字が増えて倒産していたかもしれません。少なくとも、基治さんが取締役に就任後に赤字が解消され、創業以来過去最高の営業利益を上げたという事実が存在します。この実績があるにもかかわらず、何度も言いますが解任なんておかしいのです。

チャンスの女神は前髪しかないのです。基治さんがシライ電子に情熱がある今しかチャンスはありません。シライ電子の従業員、株主、取引先にとって最善の選択は基治さんに帰ってきてもらうこと、ただそれだけです。シライ電子にとって、基治さんはスティーブ・ジョブズだと思います。

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