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第二十三走目: 妖精と筋肉痛

2023/10/09
5.5km
22分

私は昔から誰かに何かをするときに私がやりましたというのがあまり得意ではない。
それによって気を遣わせてしまったり、感謝されるのが気恥ずかしいのだ。それによって相手が困惑している場合は名乗り出るが、「妖精か小人の仕業でじゃないか?」がベストである。

一昨日、氏神神社参りに行ったときに落ち葉が多いのが気になった。確か10/8が祭りだったはずである。オイオイ前々日なのに大丈夫か。
私は10/7はワクチン接種なので翌日の祭りには行けないであろう。ならば、ワクチン前に神社に行って妖精してこよう。思い立ったら吉日。私はワクチン接種日当日、早朝に掃除用具を持って神社に向かった。
積もって半分腐葉土化した落ち葉から階段を発掘したり、参道の落ち葉を掃くのは最適化するようで楽しい。最近筋肉がついてきたからか、2本持って行ったホウキのうち、1本を折ってしまうハプニングもあったがまあ良い。
問題は人に見つかってしまったことにある。

「音がしてるなと思ったんやけど、一人?」

やべ。どうみても神社関係の人である。
はい、最近結願しまして昨日お礼に伺ったら落ち葉があったんでお礼にをと思いまして、ええ。昔この神社でよく遊んでむにゃむにゃ。と答える。

「ところでどちらさん?」

妖精と言いかけたが、神社に妖精って居るの?こだまとか狸とかなら居そう。別の名前を名乗る?しかし神前で嘘は如何なものか。結局本名を名乗った。
妖精ではなくなった私は魔法が使えないので、ワクチン接種ギリギリの1時間半余りをせっせかと掃除した。神社全部は無理だった。本堂周辺もあれなら老人も歩きやすかろう。

しかし、ワクチンの翌日はとんでもない筋肉痛と戦う羽目になった。熱は微熱だし元気なのだが、痛すぎて寝返りが打てない。熱を測る、水を飲むのも激痛。トイレが1キロ先に思える。ランニングマシンとローイングマシンではどうやら腕と腰はどうにもならんらしい。ワクチン打ってない方の腕のほうが痛い。
熱は夕方には平熱になったが、一日中事あるごとに悲鳴をあげた。おまけにショートカット歩行をしようとしてワクチン後をぶつける。痛い!

そんなこんなでやっと今日復活。
まだうっすらと痛い感じがするが、気がつかないふりをする。アレだ。今日もゆっくりと戦法で行こう。どう考えても足首と膝よりどちらかというと腰に必要な気がするが気にせずいつも通り足首と膝に装着。

どんな速さでもいいから2.0km地点までは走りたい。しかし、ワークアウト開始後早速腰が痛い。できるだけ腰を揺らしたくないが、昨日筋肉痛で動けなくなったら情けなさから、いつもより腿をあげ、手もぶんぶん振る。トラックの一周が遅く感じる。

鏡の中の私の顔が明らかに引き攣っている。辛いとか嫌だとかじゃなく単に痛い。ラグビーのことについて考えるが、それでもいつものような闘志が出ない。暑いが汗が余り出ない。病み上がりでランニングはマズかったのかもしれないが、2.0kmと決めたのに止めるのは癪なので走る。
頭の中で小学校で習う「時速5.5kmで走るたかしくんが2.0kmに到達するのは何分後か?」を何度も計算する。22分よりちょい早いくらい?そんな続くの?たかしくん、私は辛いんだ。もうちょい短くならないだろうか?何度もたかしに問い合わせる。しまいに頭に弟のひろしくんまで登場させるが妄想のひろしがいつまでもたかしに追いつきそうにない。そもそも何故あの手の問題に出てくるのはたかしやひろしなんだ。たかしひろし兄弟はすぐ休憩するのも気に入らなかった。いっそ高橋(趣味ランニング)と広田(元国体選手)でいいじゃないか。これならサボりそうにないし、親近感も湧く。妄想の中では私はたかしひろし兄弟を怒鳴りつける。

ああ、腿上げを頑張りすぎた。痛い。私はなんの苦行をやっているんだ。残り7分は妄想で誤魔化せなくなってきた。引き攣っている口元をいっそアヒル口にしてみる。どう考えても悪巧みしている越後屋が鏡の中にいた。ぺこちゃんもしてみた。舌を噛み切りそうだった。「22分になったら走るのをやめよう」と口に出してみる。鏡の中の私が一瞬にやっとした。そこからはかけくそになって走り切った。

走った後いつもなら背中にだらだらと書いている汗が今日はほとんどない。体に熱がこもっている。これはやらかしたのかもしれない。まあ昨日の筋肉痛に比べたら微熱なんて大したことではない。
明日様子見ながら速さや距離を調整しよう。

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