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第二十一走目:エスパーパイセンとランニングのRPA

2023/10/05
5.0km
36分

とうとう秋が来てしまった。
私のようなランニング多難者でも「ランニングに最適な季節が来た」ということは理解できる。

そして、やっと治った。もう大丈夫。整った。すべての問題が解決した。
飯はうまいし、寝れるし、夢見の君が動いている様子もない。意味不明なストレスも、生活難も脱した。心配事がないわけではないが、お膳立てされたように全てが整った。とにかく言いたいことは「善は急げ、急いで走れ」ということである。

一昨日、ハイパーな先輩との会話との流れで「サポーター買ったのに走れてないんですよ」と言ったら「ああ、(noteの更新)見てますよ」と言われた。ひぃぃ。過去に妄想した、<走らない子へのお仕置きとして繰り出された踵落としで体を割られたのち、肉屋に売られ、歯のない家族のすき焼きになる図>がその言葉で蘇る。走らねば。猛スピードで。ダッシュで。しかし、先輩はこう続ける。
「久しぶりに走るときはゆっくり走らないとだめですからね」
ハイパーというよりもはやエスパーである。思わず「あわわわ、明日、いや、明後日は必ず走ります。ゆっくりと、ゆっくりとね!」と答えた。
「天は二物を与えず」というが、天の人よ、明朗で強靭な上に聡明でエスパーとか与えすぎである。もうちょっとバランスを考えてもらわないと困る。じゃないと一物も持ってない人が慌てるじゃないか。ワシにも二物くらいくれ。

本日の夕飯は焼肉であった。
つまりは、カロリー摂取と同時に、今日走らなかった場合の未来の私の姿を堪能してきたわけである。私はハラミハラミと言いながらサポーターをはめこんだ。踵サポーターが相変わらずシンデレラフィットして気分がいい。膝のサポーターを着けて走るのは今回初めて。んんん?左膝がなんかしっくりこない。一応それっぽく装着できたのでそのまま走る。

「ゆっくりと」とは言ったものの、独学でランニングをしているためどのくらいの速度で走ればいいかわからない。多分5kmくらい?
私の使っているランニングマシンはアプリと連動しているのだが、いつもの7kmプログラムを使うわけにはいかないので、初めて「クイックスタート」なる機能を使ってみた。どうやらリアルタイムで同じ機種でランニングしている人が見えるらしく、400mのトラックの上を点がいくつもぐるぐるしている。ライバルのような仲間のような連帯感。一位は既に9km走っていた。コイツに勝つのはさすがに私には無理だ。10位が4km。うーん。じゃあせめて3kmくらいは走ろう。

サポーターをつけているおかげか、よろけを気にせずに走ることができる。足の負荷も問題ない。おかげで今回は背筋や腕の振りを意識することができる。とりあえず、キーホルダーを床にトントンしているように、背筋をぐーんと伸ばして走ってみる。別に走ることを意識しなくても勝手に足が動く。サポーターという名の自動マシンを手に入れた私の頭の中で「ランニングのRPAやー」と彦摩呂が叫ぶ。おいおい、妄想も好調か。そこは普通でいいのに。または逆にガッチガチに足裏と膝を使って走るのも試す。何が一番適切か図るのにちょうどいい。こんなことならランニング始める時に一番にサポーターを買うべきだった。

そう思っている間にどんどんと順位をあげていく。2km走ったところで12番。時々「○○が入社」と表示されている。どうやら、トラックを走り始めた人が「入社」と表示されるらしい。翻訳が下手くそすぎる。
その場限りの仲間たち。入社おめでとう同志よ。私は今日は5kmの速さで3kmになったら退社します。なぜって、ハラミになるのは御免だからね。

途中から左膝のサポーターが下にズレて来ているのを感じる。ルーズソックスみたいになったらどうしようと不安になる。がっと踏み込んで直そうと試みたが転倒しかけた。しかたがない諦めよう。いつもみたいに無茶な走り方をしないからか、目標を決めていないとすぐに止めるかどこまでも走ってしまいそうだ。鏡の中の私の顔にいつものような闘志がなく、なんというか「スン」としている。これでいいのかと思うが、それなりに汗は出る。しょっぱくはない。むしろ心地よい。あれ?もしかしてハイ来ちゃった?と思うが、別段楽しいわけではない。「RPAやー!」である。

そんなこんなで36分走った。いつもより長く走っているのに、カロリー消費が少ない。しかし良いスタートと思おう。

終わった瞬間にエスパー先輩からラインギフトが届いていた。
ひええ。どんだけエスパーなんだよと思っていたら、そういえば今日は私の誕生日だった。今年こそは頑張ります。

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