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「同行避難」と「同伴避難」と「同室避難」


<推奨されている同行避難>

災害があると、ペットを避難所に連れていけなかった(連れていかなかった)、という話がよく聞かれます。そのため結果的に飼い主さんが亡くなられた、という悲しいニュースもありました。

環境省ではペット同行避難を推奨しています。環境省の「人とペットの災害対策ガイドライン」の「なぜ、同行避難が必要なのか?」では、「ペットと同行避難をすることは、動物愛護の観点のみならず、飼い主である被災者の心のケアの観点からも重要である」としています。

東日本大震災では「放浪状態のままに放置されて野犬化した犬が住民に危害をもたらす恐れや、不妊処置や去勢がされないまま放浪状態となった犬や猫が繁殖し、在来の生態系や野生生物に影響を与えるなどの恐れが生じた」こともあったり、いったん避難したのに自宅に戻って津波巻き込まれたこともあったといいます。

こうしたことが問題となって、災害時にはペット同行避難が推奨されているんですね。「飼い主のため」だけではないわけです。ペットがいるから逃げない、といって家にいる方を「じゃあご勝手に」ともいかず、なんとかしなくては、といっている間に続く災害が起こることもあるわけですし。

ところで、「同行避難」のほかに「同伴避難」や「同室避難」なんて言葉もありますね。何が違うんでしょう。

<同行避難と同伴避難の違いって>

環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」では、同行避難は以下のように説明されていますね。

災害の発生時に、飼い主が飼養しているペットを同行し、指定緊急避難場所等まで避難すること。同行避難とは、ペットと共に移動を伴う避難行動をすることを指し、避難所等において飼い主がペットを同室で飼養管理することを意味するものではない。

環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」より

さて、「同伴避難」です。

内閣府の「避難所運営ガイドライン」では「ペットへの対応」のポイントとして「ペット同伴避難のルールづくりを検討」を挙げ、「事前にペット同伴避難のルール(同居可、同居はできないが飼育スペースあり、動物を連れての避難は不可等の別)を決めておくことが重要」と書いています。

避難所運営ガイドライン(令和4年4月改定)
https://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/pdf/2204hinanjo_guideline.pdf

ここで環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」に戻ると、同行避難と同伴避難の違いについては

「同行避難」が、ペットとともに安全な場所まで避難する行為(避難行動)を示す言葉であるのに対して、「同伴避難」は、被災者が避難所でペットを飼養管理すること(状態)を指す。

環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」より

と説明しています。つまり同行避難は「ペットと一緒に避難行動を起こすこと」で、同伴避難は「避難所でペットの世話をすること」だそうです。

イメージとしては、同行避難は発災直後に、ペットを置き去りにすることなくとにかく一緒に安全なところまで行く(それによって、あとでペットを迎えにいって二次災害に遭うようなことがないようにする)、ということで、同伴避難は、その後のペットとの生活の仕方についてですね。

また、「同行避難とは(略)避難所等において飼い主がペットを同室で飼養管理することを意味するものではない」、「同伴避難についても、指定避難所などで飼い主がペットを同室で飼養管理することを意味するものではな」いとも書いてあります。

つまり同伴避難は「人とペットの災害対策ガイドライン」によれば、「避難所で飼い主と同じ部屋でペットも暮らせる」こともあれば、「飼い主の居住スペースとは別のところにペット居住スペースがあって、ペットはそこに置かれ、飼い主はそこに行って世話をする」こともある、ということです。

<「同室避難」はわかりやすい>

「同室避難」という言葉もありますね。これはオフィシャルな定義は見当たらないのですが、飼い主とペットが同じスペースで生活できることを指していて、まさに避難所で飼い主が求めている暮らし方なのだと思います。

「同行避難」と「同室避難」は、なにを指しているのかわかりやすいです。

<同伴避難は同室避難なの?>

問題は「同伴避難」です。「人とペットの災害対策ガイドライン」では、必ずしも同室とは言っていませんね。ところが、「同伴避難」=「同室避難」としている記事が多く見受けられます。以下は一例です。

公益財団法人動物環境・福祉協会Evaの杉本彩さんが書かれた「能登半島地震に見たペット防災の現状 避難所に同伴できず起きた悲しい事故【杉本彩のEva通信】(2024年2月3日)」

では、「 「同伴避難」 とは、 避難所でも同じ空間で過ごすことができる避難を言う」となっています。
また、熊本地震のさいにご自身の動物病院を「ペット同伴避難所」として開放された竜之介動物病院の徳田竜之介先生がおっしゃるところの「同伴避難」も、ペットが一緒に避難生活を送れる場所を指していますね。

<混乱を生じさせないために>

こんなふうに、「同伴避難」の意味に違いが生じています。

これだと、「人とペットの災害対策ガイドライン」の同伴避難(必ずしも同室ではない)の定義で対策をしている自治体側と、「同伴避難」=「同室避難」だと考えて避難所にやってくる飼い主さんとの間で大きな齟齬が生まれてしまわないでしょうか。「ペットは別の場所に置いてと言われた」「同伴避難させてくれなかった」ということにもなってしまいます。受け入れ側が間違った対応をしているわけではないのに。

ですので、日本中のみんなが同じように考えられるよう、定義を統一したほうがいいと思うんです。

避難所で、ペットと同じスペースで避難生活を送ることは「同室避難」で統一したらいいのではないか、と思うのですが。「同伴避難」を「ペット同室避難」「ペット別室避難」に分ければ、わかりやすそうです。

ところがです。
環境省のチラシを見ていたら、同伴避難について「ペットと人が同じスペースで過ごすことなど」と説明しているじゃありませんか。

ペットを飼っている皆さまへ -災害時のペットとの同行避難について-

これだと、いくら「など」と書いてあっても「同伴避難はペットと人が同じスペースで過ごせることなのか」と思ってしまうのではないでしょうか。

ややこしいですね…

定義がわかりやすく統一されることを願います。

それに加えて、日本ではいつどこで災害が起こるかわからないですから、ペットを飼っていて同行避難するつもりでいる方は(※)、身近にある(いざというとき行くことになりそうな)避難所が同伴避難できる避難所なのか、同伴避難できるなら、それは「別室避難」なのか「同室避難」なのかを確かめておいたり、「同室避難」できる避難所がほしい、という要望を出したりすることも必要なのではないかな、とも思ったりします。

(※)同行避難できないペットを飼っている方たちも、いざというときどう行動するのか決めておきましょう! 脱走するとヤバいものを飼っている皆さんも脱走させないようにしてね!

ではまた。

能登半島地震で被災された皆さまが一日でも早く元の生活に戻れますようにと祈っています。

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