Tamin

いろいろ吐き出して折り合いをつけながら書いています。

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小説を連載します

今年、やっとこさ書いた小説『ディスタンス』を連載します。 というのも、30000字前後のため11回連載にしないと、読む方が疲れるから。 (誰も読んでないかもしれないけど、書いた以上は誰かに見せたい欲求が) 毎週一回(多分木曜日?)投稿します。 読書の傾向からいって、けっして軽くない(いや、むしろ重い) 連載している間にも、読書の感想やらも載せます。どうやって棲み分けするかが 今の課題です。 連載終わったら、その間に書きためて、またしよっと。 小説にはほんのちょっとの救い

    • ディスタンス#5【連載11−5】

      翌日の朝早く、スンギは松本から長野行きの列車に乗っていた。長野の駅に着くと駅の周りはこの前の空襲で何もない、本当に何もなかった。そこら中に焼け焦げた臭いがする。着の身着のままで誰かを探している声がする。松本とあまりに違う光景に呆然とした。スンギは立ち止らず黙って進んだ。長野から富山までの切符をなんとか手に入れると急いで列車に乗り込んだ。  富山に着くと長野より状況は酷かった。大きな空襲があったせいだ。二時間くらいのわずかな時間に180機近くの爆撃機が町中を掃射したらしい。駅

      • ディタンス#4【連載11−4】

         八月十三日、長野市内で早朝から五回の空襲があった。松本にも何回か爆撃機が通り過ぎていった。その都度空襲警報が発令され、スンギは近くの防空壕で息を潜めて通り過ぎるのを待った。長野市内から逃げてきた同胞の話では、駅や工場を中心にしつこく攻撃してきたらしい。大きな爆撃ではないものの、一日に五回となると、それなりにダメージは強かった。今まで運良く空襲には遭わなかったが、いつそれが自分たちに降りかかってくるか、何も誰もわからなかった。死はいつでも簡単にこちらに飛び越えてやってくること

        • ディスタンス#3【連載11−3】

          翌日も変わらずスンギは仕事をした。井戸端の伝播力は凄まじい。現場で働いている者は、もうスンギ達が松本へ行くことを知らないものはいなかった。何もかもが筒抜けだ。 「スンギ、お前達松本へ行くって本当か?」 「テヒョクか、うん、そうなった。兄貴がそう決めたからな」 「そうか。せっかく仲良くなれたのに。お前だけこっちに残るのはどうだ?俺と一緒に住めばいいじゃないか。そうしろよ」 「兄貴が決めたんだ、無理だよ」 「あーあ、そうだよな。難しいよな。オレ、松本へ遊びに行く。絶対行

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        小説を連載します

          ディスタンス #2【連載11−2】

           敦賀の駅は大邱に比べて都会で、釜山と比べても賑やかだった。今は戦時中なので皆防空頭巾をかぶっているが、スンギの田舎のように裸足で歩くものなど殆どいなかった。スンギは下関や京都は大きな都市だとわかっていたから、賑わいは当たり前だと思ったが、こんな田舎町でさえ、都会の釜山より賑わっているのが少し悔しい。楽しそうに話している兄嫁とテヒョクを見ながら、だんだん気が滅入った。向こうでできないことをしようと思ってきたんだ、勉強も金儲けもなんでもやってやる。若さと末っ子の我の強さがスンギ

          ディスタンス #2【連載11−2】

          ディスタンス #1【連載11】

           下関は大邱と空気までが違った。船でたった半日だというのにここは別世界だ。スンギは下船してもずっと地面が揺れているような気がして足下がおぼつかない。一旦立ち止まり大きく深呼吸をする。そして足を踏ん張ると、歩き出した。 「兄さん、朝鮮から来たんかん?腹すいったっちゃろ?うちはキムチだってあるちゃよ。食べていかん?」 薄汚れたモンペを履いた女が作り笑いをしてスンギに寄ってくる。今まで聞いたことない日本語だ。何をどう返事をするか考えあぐねて黙っていると、 「はー、なんね、わか

          ディスタンス #1【連載11】

          『象の旅』 ジョゼ・サラマーゴ

          何気なく紹介してもらった本を、ずるっと読み始めた時、思いも寄らない胸に響く本に出会う時があります。 そんな一冊がこの『象の旅』でした。 知人に村上春樹の『象の消滅』の話をしたあと、それならこの本はどう?と勧められたのがきっかけでした。 とにかく、リスペクトしている本読みの方から勧められると、ついポチッとして しまう癖があります。まぁ、大抵は外れないのだけど、あぁ自分の感性とは違うか もと思うものもたまには在るよねえ、それは。 この本は、最初えらく気持ちののらない本でした。

          『象の旅』 ジョゼ・サラマーゴ

          アイロン・たき火・石・箱・熊

          『神の子ども達はみな踊る』 村上春樹 (新潮社)   今更何をの村上春樹です、今回は。 ワタクシ、不定期な村上春樹の読書会に入っています。だいたい10名前後の中年を超えた男女が3時間1冊の本について話、その後は飲み会で4時間くらいまた話すとう大層奇特な会です。 つい先日はこの『神の子ども達はみな踊る』だったんだけど、随分昔に読んでいただけなので、ほとんど忘れており、二週間前に慌てて読み直しするという怠惰な参加者なのです。強者揃いなので、読書会の間は小さく小さくなってます(身体

          アイロン・たき火・石・箱・熊

          マイノリティってなんだろう?

          『その輝きを僕は知らない』   ブランドン・テイラー     関 麻衣子訳   早川書房 なかなかに重い。 『ザリガニの鳴くところ』も存分に重かったけど。この小説はもっと根が深い。 どうなっていくのだろうという喉にひっかかった、忌ま忌ましさが残る。 主人公はアラバマ出身の黒人で同性愛者で貧困層出身のウォレス。 アラバマの大学を卒業して、アメリカ中西部(おそらく著者テイラーの通った ウイスコン州立大学がモデル)の大学院にやってくる。 大学院では理系で初めての黒人学生だ。ウォ

          マイノリティってなんだろう?

          ザリガニって鳴くんだ

          『ザリガニの鳴くところ』 ディーリア・オーエンズ               友廣純訳        (ハヤカワ文庫) これも2021年本屋大賞翻訳小説部門第一位の本です。 ずぅーっと気になってました。でもね、きっと重い本だろうなというのはわかって いて、そうすると、読後にブルーになってしまうだろうなと思ったら、買ったものの、本を手に取っては本棚に戻すという行為を、、多分10回は繰り返してたと思います。 どうしたものか、なんだか急に今日は読める気がする、と思う瞬間があってつ

          ザリガニって鳴くんだ

          ミステリーって面白い

          『犯罪者』 『幻夏』 『天上の葦』    太田愛(KADOKAWA) あまり日本のミステリーは今まで読んでこなかった。 海外ミステリーは良く読んでいたんだけど、なんだか食指が動かずでした。 しかも警察ものだし。 私は人に何か面白い本ありました?と聞くのが好きなタチでして、今回も 飲みながら友人に聞いたわけです。 そーしたら、この作者、太田愛さんの本がとにかく面白いと。まずはこの3部作を 読んで見るべしといわれました。 太田さんはご存じテレビドラマ「相棒」の脚本家の一人です

          ミステリーって面白い

          不思議な世界へ

          『地球にちりばめられて』 『星に仄めかされて』 『太陽諸島』           多和田葉子(講談社) 前回『地球にちりばめられて』だけを紹介しました。 三部作やっと読了しました。 読後、ああこれは神話だーと思いました。 主人公の名前も「HIRUKO」、「SUSANOO」だったり したこともありますが、3冊目にいたっては洋上で失った国を探しに 行く話。国生みのようでした。 最初はケルアックの『オンザロード』のように移動しながら成長して 行く青春小説のようだ

          不思議な世界へ

          書評っぽいことも

          ほんとうに、ほんとうに時間が早いのです。この沈黙の間、いろいろやってはいたんですけどねぇ。思うように書くことは進まず考えてばかり。それで満足してしまって。いけないですよねぇ。だ・か・ら、読んだ本の感想とお勧めを書こうと心を改に思ったわけです。書評まではいかないw(でもこれも書評と言うのかな?) 人に本を勧めてもらうことも、勧めることも好きです。 1)『地球にちりばめられて』 多和田葉子(講談社文庫)    これ、三部作です。今二冊目の『星に仄めかされて』を読んでいます。  

          書評っぽいことも

          書く書く詐欺

          今年、30000字程度の小説を書いた。ノンフィクション7割、フィクション3割。 つまりは半分以上本当のことで、つなぎは想像。結構暗いです。 エッセイとも違うやつなんだなぁ。友人達に書きますっ!と宣言して書いたわけ。 友人少ないけどね。 友人達は皆優しい。書いたものは概ね高評価だったんだけど。世の中の評価は厳しく、公募に出しては見たものの、敢えなく敗退。まあそうよね。 で大学の文芸にいたときに(50歳を超えて入学しました。1個目は商学部だったんだもの)書いたエッセイを解いて小

          書く書く詐欺

          秋たけなわ

          ハードな日々を過ごしてた。と言ってもママ友一泊旅行。年に1度、息子のママ友4人と一泊旅行に行く。最初はランチ会だったけど、だんだん子供の手が離れてくると、泊まりにする?なんてことになりまして。子供達はとうに成人してすでに三十路。4人中一人結婚。(そこに孫が〜)女子ね、女子。残りは男子母、皆さん独身なんだなぁ。浮いた噂も聞かず、もしかして同性が好きなのか?だから言えないのか?母たちはそんなことあまり気にしていない。年老いて一人でいられる方が心配なのに。 なんて話題を飽きもせず

          秋たけなわ

          後悔・懺悔

          9月にコロナに罹患して、まるまる1ヶ月が抜け落ちてる。 その間に誕生日があった。毎年思うけど、誕生日周辺っていつも体調を崩しがち。 今年は一番ひどかった。何事も加齢で過ごされてしまうお年頃だけどね。 伸び伸びになっていたお誕生会(この年で恥ずかしい)と忘年会(メインはこちらか)が合体してよーするに飲み会となった。 自分が悪いのだけど、あまり夜出かけることがないので夜のみはテンションが上がる。 でもって2件目に行ったバーから帰宅してみると、おや携帯がない。 バックの中にない。

          後悔・懺悔