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ザリガニって鳴くんだ

『ザリガニの鳴くところ』 ディーリア・オーエンズ 
             友廣純訳        (ハヤカワ文庫)

これも2021年本屋大賞翻訳小説部門第一位の本です。
ずぅーっと気になってました。でもね、きっと重い本だろうなというのはわかって
いて、そうすると、読後にブルーになってしまうだろうなと思ったら、買ったものの、本を手に取っては本棚に戻すという行為を、、多分10回は繰り返してたと思います。
どうしたものか、なんだか急に今日は読める気がする、と思う瞬間があってつい先日、手に取って読みました。

読後感としては、まあそうなるよねと感じることしきり。
物語はアメリカ、ノースカロライナの湿地で村の青年の死体が発見されたところから始まります。主人公は「湿地の少女」カイア。彼女は親兄弟に置いてきぼりにされ、湿地で一人で暮らしていました。
10才前後の少女が一人で湿地で暮らすって、本当にサバイバル。
彼女が知ってか知らずか、手を差し伸べてくれる希有な人も何人かはいるけれど、1960年代のアメリカ、とりわけこの地域では差別ー黒人や白人貧乏(ホワイト・ラッシュ)ーが酷かったのです。白人貧乏というのは白人の中で最下層にいる白人のことで、特に蔑まれていて、いないものとして扱われる。カイアは湿地に住むそんな白人貧乏の家に生まれました。

カイア自身も孤独に染まりすぎて、人の好意をうまく信じられない子でした。
だから素直になれない。
取りこぼしてしまった初恋と押し寄せる孤独に耐えきれず、手を伸ばしてしまった
青年は、やがて都合良くカイアを弄ぶ。あーあ、何故あの時にと思うような場面が
あるのですが、これもカイアのせいではないというか、タイミングというか。

そしてラスト。
う〜む。そうだよね。
もう少しこうだったら、もっとはやくこうだったら、と思うことはいくつかあるけれど、カイアはそれまで孤独に慣れすぎたよな、だから新たな孤独には耐えられなかったのだろうなと思って読了しました。
時代、境遇、タイミング・・・・・・
その中でカイアは自分の最善を探していたんだろうなと思いました。

ハッピーエンド7割、バッドエンド3割の心中です。
最後の最後まで気が抜けない、予想とはちょっと違う角度に着地したなぁ。

因みにこの本は、2022年、女優リース・ウイザースプーンのプロデュース、
オリヴィア・ニューマン監督で映画化されました。
原作に惚れ込んだテイラー・スイフトが主題歌を書いたのだとか。



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