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【ためスモインタビューvol.9】富山はバンクーバーに似ているーーケイレン・キースさん

富山市の海辺にある町、岩瀬。ここに、カナダ出身のケイレン・キースさんと富山出身の麻里子さんが営む宿SHIROKUMA INNがあります。「B&B」(=Bed & Breakfast)と呼ばれる宿のスタイルで、宿泊と朝食を提供。日本でいう、民宿のようなアットホームな雰囲気が特徴です。

カナダのホテルで25年ほど勤めていたというケイレン・キースさんは、どのような経緯で富山へ移住し、宿を開業されたのでしょうか。お話を伺いました。

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◎富山はバンクーバーに似ている

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ーーケイレンさんは25年間もの間、カナダのホテルに勤めておられたんですよね。どのような経緯でホテル業に関わられたのですか。

ケイレンさん:僕はアメリカとの国境近くにあるカナダの都市・ウィンザー出身です。18歳の時に、育ててくれた母方の祖父母を相次いで亡くし、仕事を探していた時にウィンザーのシティホテルでの働き口を見つけたのが、ホテル業界へ身を置くようになったきっかけです。

ーーそんなご経験があったのですね。

ケイレンさん:ウィスラーのホステルに宿泊した麻里子に出会ったのは、45歳の時でした。後ろ姿を見てビビッときました(笑)。

ーー麻里子さんは、どのような経緯でカナダに?

麻里子さん:富山で一般企業に勤め、営業事務をやっていましたが、仕事を辞めてワーキングホリデーに行くことにしたんです。今なら休職してワーホリという選択肢があったかもしれませんが、当時はそんなことは許されませんでしたから、会社を退職して行きました。

ーーそしてケイレンさんと出会ったというわけですね。

ケイレンさん:2002年に結婚し、麻里子の両親にあいさつするために射水市を訪れたのが初めての富山でした。富山はバンクーバーっぽいんですよ。海と山を同時に見られる場所ってなかなかありません。町と自然が近いところがなんとなくバンクーバーを思わせます。

麻里子さん:富山県人は富山のことを田舎だと思っていますが、カナダ人からすると、富山は田舎のうちに入らないそうです。カナダの田舎は隣の家まで2~3キロあったりします。ケイレンは人の多すぎる場所が苦手なので、私がもし東京出身で、東京に住まなければいけないのだったら、日本には住めないと言っていました。

◎工夫がたっぷり詰まった古民家リノベーション

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▲しろくまインの外観

ーー富山へ移住されてからの暮らしについて教えてください。

ケイレンさん:最初は麻里子の出身地である射水市に住みました。英語の講師をしたり、小学校で英語の授業をしたり。

ーーその後、宿を開業されるにあたって岩瀬へ引っ越されたんですね。

ケイレンさん:もともと自分の宿を開きたくて、やるならBed&Breakfastと決めていました。日本にB&Bはあまりないですしね。

ーー岩瀬を選ばれた理由は?

ケイレンさん:Six sence(第六感)みたいなものです。立地、アクセス、魅力が揃っていました。当時は、開業する場所を探してなんの前情報もなく岩瀬を訪れたので、ライトレールが南北直通になること(*)も知らなくて。新幹線が開通することだけはわかっていたので、駅からのアクセスがいいところ、そして僕は海が好きなのでここを選びました。

(*)富山駅の南側を走っていた市内電車と、北側を走っていた「ライトレール」が2020年に直通になり、富山市内の交通の利便性が向上しました。

ーー岩瀬にはミシュランガイドに掲載される飲食店さんや、土蔵をリノベーションしたお店、クラフト作家さんたちのアトリエなどが立ち並ぶようになり、古き良き街並みを残しながらも岩瀬はどんどん新しくなっていますよね。

麻里子さん:ここで宿を開くと決めた時は、岩瀬でいろんなプロジェクトが動いていることは存じ上げなかったんですが、なんとなく「ここはもっと盛り上がっていくはずだ」と夫は感じていたようです。

ーー「SHIROKUMA INN」は古民家をリノベーションして開業されたんですよね。

ケイレンさん:二階建ての空き家を改装して作りました。DIYです。もともとあった部材や廃材などを活用しました。例えば和室を洋室に改装した客室のベッドはその部屋の畳を使って作りましたし、ウッドデッキの飾りは醤油の古い樽を解体して作り、風呂の浴槽カバーや台所のまな板には、改装中のパチンコ店から出た大理石の廃材を活用しました。

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▲ウッドデッキもある

ーーケイレンさんの工夫がたくさん詰まったお宿なんですね。ちなみに「SHIROKUMA」はどこから名付けられたんですか?

麻里子さん:夫の見た目です。クマのような体つきと、髪も髭も白いので、しろくま。看板にはシロクマのマークが入っているので、見つけやすいと思います。

◎岩瀬は「ありのまま」を受け入れてくれた

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▲岩瀬の街並み ©︎とやま観光推進機構

ーーSHIROKUMA INNに宿泊された方とは、どんな風に関わっておられますか?

麻里子さん:連泊される方とは、時間があれば一緒に岩瀬の町を回ることがあります。近くには酒蔵や、チェコとスロバキア出身の二人がやっているKOBOブルワリーがあるので、一緒にお酒を飲んだりもします。

ーーケイレンさん、お酒、お強そうですね。よく飲まれるんですか?

ケイレンさん:Sometimes 。奢ってもらう時はガッツリ飲むよ(笑)。

ーー富山を訪れた人にどんな体験をしていただきたいですか?

ケイレンさん:富山の美しい自然や文化を体験していってほしい。みなさんがまだ知らない、まだ気付いていない魅力をたくさん発見していっていただければと思います。

ーー富山でオススメの場所を教えてください。

ケイレンさん:高岡市にある二上山ですね。山頂には「平和の鐘」があります。高岡市は銅器生産日本一ですが、その高岡銅器で作られた大きな鐘です。自由につける鐘としては国内最大級の大きさだそうです。

麻里子さん:私にとっては昔からある場所なので、当たり前に思っていましたが、考えてみればあんな大きな鐘をつける機会なんて他ではありませんよね。ケイレンは友達がきたら必ず連れて行きます。標高も比較的高くて、景色がしっかり見渡せ、癒されます。

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▲二上山からの景色 ©︎高岡市

ーー移住者として戸惑った経験はありますか?

ケイレンさん:当然のことですが言葉が違うし、見た目も違うからジロジロ見られることはありました。でも、戸惑った点はこれくらいかな。みんな慣れてしまえばもうジロジロ見られることはないし。

県内でもいくつかの場所に住みましたが、行くところ行くところよくしてもらいました。特に岩瀬は人口減少が進む地域なので、移住すると歓迎されました。

ーー岩瀬はどんな町ですか?

ケイレンさん:岩瀬のコミュニティは、未来に向けて変化と多様性を受け入れようとしているように思います。自分が受け入れられている、歓迎されていると感じることのできる場所です。

麻里子さん:岩瀬はお年寄りが多い町ですが、ケイレンに対して積極的に話しかけてくるのは若い人よりおじいちゃんおばあちゃんのほうが多いかも(笑)。英語しかわからないケイレンと富山弁のおばあちゃんたちでなぜか会話が成り立っているんですよね(笑)。

ーー移住した時に、気をつけていた点はありますか?

ケイレンさん:溶け込むために何か特別なことはしていません。自分を全く変えていなくて、このままの自分を受け入れてもらって、そのまま住んでいるので、苦労したという感覚はないですね。

ーー「SHIROKUMA INN」をどのような宿にしていきたいですか。

ケイレンさん:宿というのはその土地のコミュニティの「アンバサダー」のような存在。私たちの家を入り口に、我が家の朝ごはんを食べて、いい時間を過ごして、岩瀬を、富山を楽しんでもらえたら嬉しいです。

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移住する前に、移住者の声を直接聞きたい!という方は多いはず。
「SHIROKUMA INN」では、全く違う文化圏から移住し、富山を楽しんでいるキースさんが、皆さんを温かく迎えてくれます。

ためスモパートナーは、あなたの富山での滞在を全力でサポートします。

<今回ご紹介したためスモパートナー>
ケイレン・キースさん、麻里子さん
ケイレンさんはカナダ・ウィンザー出身。23歳のときに移住して以来、バンクーバーで過ごした時間の方が長いため、本人は「出身地はバンクーバー」と言っている。麻里子さんは富山県射水(いみず)市出身。ケイレンさんが勤めていたウィスラーのホステルにワーホリで麻里子さんが訪れたのがきっかけで出会い、結婚。カナダのバンクーバーによく似ている富山へ移住し、自分たちの宿を開業することを決意する。立地やアクセス、魅力的な街並みが気に入り、富山市岩瀬に「SHIROKUMA INN」を開業。北米や欧州を中心に普及する「B&B」と呼ばれるスタイルの宿で、客室と朝食を提供している。「シロクマ」は、キースさんのしろくまのような風貌から名付けられた。


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