「彼の見つめる先に」:プールの水面のように
プールサイドで日向ぼっこをする主人公レオナルドと、幼馴染であり親友のジョヴァンナの背中を上方から眺めるカットから、ものがたりははじまる。
そして作品全体がプールの水面のように、眩しくて青い世界観に包まれていた。
(※以下、ネタバレあり。)
ストーリーは、生まれながらにして盲目の男子高校生レオナルドが、転校生である男子高校生ガブリエルに恋をするというシンプルなもの。
盲目の青年にとって、ガブリエルと一緒に月食をみにいったり、部屋で好きな音楽を聴きながら勉強したりする瞬間は、何気ない日常だけれど、特別感があって、そのようすが素敵だった。
ただ、私の心に残ったのは、ガブリエルとの関係性よりも、レオナルドとジョヴァンナの友情のほうだった。
とくに、キャンプでの仲直りのシーンがよかった。「留学にいくとなると会えなくて寂しい」とレオナルドが言ったときの、ジョヴァンナの嬉しそうな表情がなんとも印象的で。レオナルドもガブリエルも、もちろん好きだけれど、大事な親友を奪われた喪失感や嫉妬心も抱くジョヴァンナ。そんな葛藤があったからこそ、嬉しかったのだろう。
ガブリエルやレオナルドにきちんと自分の思いを伝え、いざというときにレオナルドを守るジョヴァンナの真っ直ぐなところが好きだ。
もうひとつ伝えたいのは、親になる人には是非みてほしいということ。
障害を持つ子どもに対して心配しすぎてしまう母親と、"普通に”接してほしい思春期のレオナルドとのコミュニケーションは、盲目の青年に限らず、あらゆる親子関係に通じるところがあるだろう。
たとえ子どもが直接口に出さなくても、干渉の度が過ぎると、思春期の子どもは嫌がるものだと思う。子育て経験のない私が言うのも非常におこがましいけれど、お父さんお母さんの皆さまには、自らの子どもとの接し方を見つめ直すきっかけになるんじゃないかなと感じた。
ちなみに、監督自身も同性愛者とのこと。インタビュー記事のなかでは、両親が「ゲイではないか?」と切り出してくれたという話が。「こんなケースもあるのか……!」と感銘を受けました。
──自身の体験を投影した部分等は?
「僕もサンパウロで生まれ育ったから、自身の高校時代の生活なんかは自然に投影された部分はあると思う。それと、僕自身は両親に自分がゲイであることを中々カミング・アウト出来なかったんだけど、ある時、母の方から“そうなんじゃないか?(あなたはゲイなんじゃないか?)と切り出してくれたんだ。だから、作品中でも、はっきりとした言葉は使っていないけど、母親はレオナルドのセクシャリティに気付いていることを示す会話を描いているよ」
(「母親はレオナルドのセクシャリティに気付いていることを示す会話」には気づかなかった……;)
花を買って生活に彩りを…