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「タクシー運転手 約束は海を越えて」:命懸けのミッション

ひさしぶりに号泣した。

世界中でいまもなお理不尽に殺されている人々のことを考えて苦しくなった。

過去の歴史ではなく、こんな殺戮を目の前にしている人がいまこの瞬間もいる。ただただひたすらに悲しい。許しがたい。

血だらけで包帯につつまれた人が自分の家族だとわかったとき、心が張り裂けるような、受け入れ難い現実をどうしたらよいのだろうか。

こんな思いをしなければならない人がたくさんいる世界って、なんて悲しいんだろう。

そんなことを考えた。そして、文字どおり命懸けで、自分たちの意思を貫くために権力に抗う若者たちがあまりにも無残に散ってゆく姿に涙がとまらなかった。

1980年5月に韓国でおこり、多数の死傷者を出した光州事件を世界に伝えたドイツ人記者と、彼を事件の現場まで送り届けたタクシー運転手の実話をベースに描き、韓国で1200万人を動員する大ヒットを記録したヒューマンドラマ。「義兄弟」「高地戦」のチャン・フン監督がメガホンをとり、主人公となるタクシー運転手マンソプ役を名優ソン・ガンホ、ドイツ人記者ピーター役を「戦場のピアニスト」のトーマス・クレッチマンが演じた。1980年5月、民主化を求める大規模な学生・民衆デモが起こり、光州では市民を暴徒とみなした軍が厳戒態勢を敷いていた。「通行禁止時間までに光州に行ったら大金を支払う」というドイツ人記者ピーターを乗せ、光州を目指すことになったソウルのタクシー運転手マンソプは、約束のタクシー代を受け取りたい一心で機転を利かせて検問を切り抜け、時間ギリギリにピーターを光州まで送り届けることに成功する。留守番をさせている11歳の娘が気になるため、危険な光州から早く立ち去りたいマンソプだったが、ピーターはデモに参加している大学生のジェシクや、現地のタクシー運転手ファンらの助けを借り、取材を続けていく。

映画の前半はシングルファザーのタクシー運転手の人柄を描くユーモア溢れるストーリー。後半が民主化デモの悲惨さ、タクシー運転手の心の葛藤を描くストーリーだ。

音楽も絶妙。まさに笑いあり涙ありの映画だった。

ジャーナリズム、世界の片隅で認識されずに暴力を受ける人々、民主化運動の犠牲、家族への愛について考えさせられる名作品だった。

花を買って生活に彩りを…